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■基礎から学ぶ内がえし捻挫

スポーツ現場では多くの選手が受傷経験のある足関節内がえし捻挫(一般的に言われる捻挫)。

パーソナルトレーナーとして活動していても、一般の方で過去に内がえし捻挫の既往があり、不安定性や可動域制限など多くの機能障害が残存している方をお見掛けします。

この機能障害が改善されていないことで、繰り返しの捻挫につながったり、足関節や足部への痛み、足が疲れやすいなどといった様々な傷害や日常への悪影響につながる恐れがあります。

よく「足首がやわらかいんです!」や「癖だから捻挫はしょうがないんです」といった声も聞こえますが、これは機能障害によるものであり、改善しなければならないものです。

ではリハビリなどを通して機能を取り戻すためには、どのようなアプローチをしていくべきなのか。

そのためには、内がえし捻挫について知る必要があります。
皆さんは内がえし捻挫についてどれだけのことを知っていますか?

パーソナルでは外傷を見る機会はなかなかありませんが、知っておいて損はなし。
理解していれば、その後のアプローチもスムーズに進むと思います!

今回は皆さんで内がえし捻挫について学んでいきましょう!

〇なぜ内がえし捻挫はよく起きる?

捻挫にも大きく内がえし捻挫と外がえし捻挫に分類されますが、圧倒的に内がえし捻挫が多いとされています。

たまたまなのか。
いえいえ。ちゃんと解剖学的に発生しやすい理由があります。

〇原因
1.外果は内果より遠位に位置する。
2.内果が外果より前方に位置する。
3.距骨幅は前方が広く後方が狭い
4.底屈・内がえし筋が優位。

内がえし捻挫は「底屈」・「内転」・「回外」の複合動作によって発生すると考えられています。
皆さんも、「背屈位」と「底屈位」で内反をしてみましょう。
底屈位では内反がしやすいかと思いますが、背屈位では内反がやりにくいですよね。

これは距骨幅の関係で、距骨の幅が狭い(小さい)面が脛腓間と接する底屈位だと関節面にゆとりができ、距骨の広い(大きい)面が脛腓間と接する背屈位だとしっかり固定され内反をするゆとりがなくなります。
ということは、底屈位の方が捻挫をしやすいということにつながります。

こういった解剖学的要因から足関節・足部が内がえし位をとりやすく、ある出来事をきっかけに内がえし捻挫が発生してしまうのです。

〇受傷機転

皆さんも、どのような受傷シーンで発症するのか考えてみましょう。

よく目にする受傷シーンと言えば
・ジャンプの着地時に相手の脚を踏む。
・地面の凸凹や段差に足をとられる。
・物に乗ってしまう。
・切り返しやストップ動作による受傷(スポーツ活動)。

パーソナルトレーニングで発症することはほぼないと思いますが、もし起きるとしたら
床にある何かしらの器具や道具を踏んでしまう。
ことでしょうか。
ジムで働くものとして、不用意に物を床に置かないようにすることも、お客様のケガを防止する一つの安全管理につながるかと思います!

〇損傷箇所

内がえし捻挫による損傷箇所は、主に外側靭帯が代表的です。

〇外側靭帯
・前距腓靭帯
・踵腓靭帯
・後距腓靭帯

これらで構成される外側靭帯のうち、「前距腓靭帯」・「踵腓靭帯」の2カ所の損傷が代表的とされています。
これらの靭帯が部分損傷なのか、完全断裂なのかで重症度を分類していきます。

〇重症度
Ⅰ度:前距腓靭帯の部分断裂
Ⅱ度:前距腓靭帯の断裂
Ⅲ度:前距腓靭帯・踵腓靭帯の断裂
   後距腓靭帯にも断裂がおよぶこともある。
※スポーツ協会公認アスレティックトレーナー旧専門科目テキスト③参照  

上記のように重症度は分類されていますが、受傷機転によって損傷箇所が変わることもあります。
内がえし捻挫は「底屈」・「内転」・「回外」で損傷すると考えられていますが、「背屈」・「内転」・「回外」で受傷することもまれにあります(つま先部分で物や足を踏んだ状態での捻挫など)。

このようなシチュエーションでは前距腓靭帯ではなく、後距腓靭帯が損傷する可能性が高まりますので、受傷シーンを確認したうえで評価することも大切ですね

もちろん靭帯だけではなく、骨折や腓骨筋群への伸張ストレスによる損傷、内側部の圧挫による痛みなど、靭帯に限らず他の組織にも合併症として何らかの症状が出現する可能性があるので注意してください。

〇症状

受傷後は外果を中心とした腫脹・発赤・熱感・疼痛・機能障害が出現します。
RICE処置に関しては最近いろんな話がありますが、まずはRICE処置による応急処置で問題はないかと思います。
特に圧迫は重要視していきたいところですね。

靭帯損傷の有無を確認していく方法として
・前方引き出しテスト
・内反ストレステスト

の2種類が代表的です。

特に前方引き出しテストにおいては、距骨が前方に移動するのを感じ取れます。
方法は多くの方がyou tubeに投稿しているので、ぜひそちらをご覧ください。笑

関節の不安定性を正確に評価するには、X線ストレステストといって、上記2種のストレステストをしながらX線を撮影する方法になります。

この方法はX線検査が必要になるので、現場ではもちろん、トレーナーでは実施することができないので、こんな方法もあったなーと頭の片隅にでも入れておいてください(笑)

〇後遺症が発生してしまう原因は?

では、内がえし捻挫がなぜその後の機能障害につながるのでしょうか。

捻挫がきっかけで発生しやすい機能障害の中でも、今回は特に大きな影響を与える2つについて考えていきたいと思います。

①靭帯損傷による関節の不安定性

最も損傷しやすいと考えられる前距腓靭帯。
この靭帯の役割は距骨の過度な前方移動・内旋を防ぐことにあります。

捻挫により前距腓靭帯が損傷してしまうことで、距骨の動きを制動できず、距腿関節の動きに影響を与えてしまいます。

距腿関節の動きを考えると
背屈:距骨が脛腓間を滑り込むように後方に移動する。
底屈:距骨が脛腓間を滑り出るように前方に移動する。

前距腓靭帯が損傷をすると、距骨の過度な前方移動が出現してしまうため、背屈時には距骨の後方移動が妨げられてしまう可能性が出てきます。

これが結果的に背屈制限足関節前方部分の詰まりにつながるわけですね。

重度の捻挫による靭帯損傷では、再建手術をしない限り前方不安定性は改善できないと考えられています。
ただ、前方不安定性があるからといって再建手術をする一般の方はいないのではないでしょうか。

そのため不安定性が残存してしまい冒頭のような「足首がやわらかいんです!」や「癖だから捻挫はしょうがないんです」といった言葉を耳にするわけですね!

➁受傷後の不適切な歩き方

捻挫したことがある方は、ぜひ思い出してみてください。
受傷後、松葉杖は使いましたか?

きっと多くの方が「捻挫で松葉杖なんて大げさな」って思うことでしょう。

でも、患部の負担を減らすことはもちろん、足部の二次的機能障害を引き起こさないためにも、可能であれば使いたい道具なんです!

捻挫した人はこんな歩き方をしてるところ見たことありませんか?
患側をガニ股にして歩く。

捻挫をしてしまうと痛みや腫脹により、底背屈の可動域が低下してしまいます。
そのため真っすぐ足部を前に向けて歩くことができず、このような歩き方になってしまいます。

この歩き方では、足部の内側部に過度な荷重が強いられることになります。
その結果、捻挫の症状が改善しても内側縦アーチ低下や足関節の背屈制限、膝や股関節にも悪影響を与えることにつながるかもしれません。

リハビリをせずそのまま日常生活やスポーツへの復帰をすることで、捻挫はもちろん、他の障害にもつながる可能性が考えられます。

〇まとめ

いかがでしたでしょうか。
内がえし捻挫について、少しでも理解を深めることができたでしょうか。

今回一番覚えておいてもらいたいことは、捻挫をした時にまず病院に行く(勧める)ことです!

軽視されがちですが、しっかりX線を骨に異常がないか確認し、診断を得てから今後のことを考えることが大切になります。

パーソナルトレーナーの世界では、あまり傷害に対する評価をする機会がありませんが、お客様から相談されたときはしっかり病院に行くことを勧めてほしいと思います。

後にこの機能障害に対するアプローチ方法や簡単なリハビリ内容も書いていきたいと思います!

読んでいただき、ありがとうございました!

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