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EX2 女神

〇〇:「お疲れさまでーす」
山下:「あー!〇〇来た!」

そろそろ夜のてっぺんも越えるんじゃないか。
そんな時合の居酒屋大部屋個室。
ちょこっとSHOWROOMの打ち上げするから来なよ!とお誘いを受け、送迎終了後、車を会社に戻してノコノコとやって来た次第。

〇〇:「山さん、装い素敵〜」
山下:「でしょ〜、どうどう?」

全身を見せびらかすようにくるくる。

山下:「さっきSHOWROOMで着たやつ。可愛いからそのまま着てきちゃった」
〇〇:「あー、見たかった…」
山下:「今見れてるからいいじゃん笑 とりあえず座んなよ。あ、何飲む?ビール?」
〇〇:「あぁ、はい、すみません」

テキパキと席に案内され、スマホで注文を飛ばしてもらい、アイドルに何をさせてるんだと我に返る。

〇〇:「山さん、自分でやりますんでお気遣いなく」
山下:「あんだぁ〜?アタシの酒が飲めないってか〜?」
〇〇:「べらんめぇだなぁ」 

今日日アルハラで怒られそうなセリフだ。

山下:「はい、かんぱ〜い」
〇〇:「はい、お疲れさまです」

ジョッキをカチリ。

山下:「で、どう? 可愛くない?」

服やリボン、髪型などふりふりとアピール。

〇〇:「めっちゃ可愛いです。ここまでガーリーなの珍しい気しますね」
山下:「そうなの。スタイリストさんにお願いしたんだ〜」 

こうして見ると本当に髪伸びたなぁと実感。そういうのもやっぱ似合っちゃうんだな。

山下:「どう? 惚れ直した?」

ぐぃっと座り位置をこちらに近づけて、ニコニコと笑う。
〇〇:「ムム…」

距離が近い。
こういう時するべき返答は…。
①素直に はい、惚れ直しました
②冷静に いや、何言ってるんですか!
③大胆に いえ、常に惚れっぱなしなんで
うーん…、いつも気圧されてばかりだし、たまにはこちらから押してみるか。

〇〇:「いえ、常に惚れっぱなしなんで!」 
山下:「うん、知ってる」
〇〇:「ギギギ…」

慣れないことするもんじゃないなって。
恥ずかしすぎて変な声がでてしまった。

山下:「好き?」
〇〇:「え、あぁ、はい…。いや、その形容動詞、どこにかかってます?主語は!?」
山下:「必死すぎ笑 私でも服でもどっちが主語でも好きでいいじゃん笑」
〇〇:「いや、なんか、負けた気分になりそうで…」
山下:「負けちゃえば?」 
〇〇:「…いや、負けちゃ駄目でしょ」
山下:「…なんで?」
〇〇:「…なんでって」

いや、この状況での負けって、もうそういうことじゃない?

梅澤「はいはい、失礼しますよ」

ぐぃっと俺達の間をかき分け着席。

山下:「あー!梅が私と〇〇の仲を引き裂こうとするー!」
梅澤:「はいはい、酔いが回る前にさっさと挨拶回り済ませちゃいな。どうせまだ終わってないんでしょ」
山下:「は〜い」

スタイリストさんや、SHOWROOMスタッフ陣の席へと挨拶に向かう山さんを送り出し、改めて。

〇〇:「梅さんもお疲れさまです」
梅澤:「はい、お疲れさま」

カチリ。

梅澤:「〇〇もさぁ、そろそろ山のあしらい方覚えないと命がいくつあっても足んないよ」
〇〇:「え、山さんいつの間にか魅了した相手を呪い殺すタイプの呪霊になってる?」
梅澤:「それは言い過ぎ」
〇〇:「いや、言い出したの梅さんですし」

俺を言い出しっぺみたいにするのやめて。

梅澤:「もう山もアイドル卒業なんだから、いい加減慣れないと。やめてよ? 卒業後に運営スタッフと云々〜みたいな報道見たくないからね?」
〇〇:「流石に飛躍しすぎなのでは…?」
与田:「そうそう、梅ちゃんはちょっと心配し過ぎ」
〇〇:「あ、だっちょさんお疲れさまです」
与田:「お疲れ〜」

カチリ。

梅澤:「そうかなぁ〜?」
与田:「美月が〇〇にちょっかいかけるのは、思春期の弟いじる姉みたいなもんでしょ」
〇〇:「だっちょさん…俺もうアラサーなんすけど…」

もうそろそろお兄さんとおじさんの狭間に立とうとしてるんですけど。

梅澤:「う〜ん。そう言われればそうなような…」
〇〇:「それには納得しないでほしい…」
久保:「お疲れ〜。間に合った〜」
〇〇:「あ、久保氏。ご無沙汰です」
久保:「おっ、結構久々〜」
〇〇:「というかよくこのメンツ集まれましたね」

久保氏のオーダーを飛ばしつつ、豪華な顔ぶれに驚く。

梅澤:「まぁ、この時間だしね。山も含めて、集まれる機会も残り少ないだろうし。流石に3期生全員は無理だったけど。〇〇も急に誘ったらしいけど大丈夫だった?」
〇〇:「俺は来たいから来ただけなので。3期大集合は乃木中の企画に期待ですね」
久保:「本当に最近〇〇、乃木中の収録いないよね」
〇〇:「そうなんですよね〜。なんか五百城が騒がせたみたいで」
与田:「あれ全部まるっとカットになったって聞いて笑っちゃった笑」
〇〇:「知らない間にスベらされてた…」
久保:「近況報告を受けた感じでこっちは楽しかったけど、まぁ身内ノリだよね笑 梅は結構〇〇と会う機会あったんだっけ?」
梅澤:「そうだね。最近だと46分TVとか…」
〇〇:「もう、配信されたんですっけ。TikTokのランダムダンスっぽい企画もそん時に撮ってるんで…」
梅澤:「あー、そうそう。その時に会ってる」
与田:「直近も直近じゃん。3期だと一番会ってるんじゃない?」
梅澤:「なに〜、その顔」

まぁたしかに謎に悪い顔。

久保:「かっきーがこないだ、すごく久しぶりに〇〇さんと会いました!って喜んでたから、梅はかなり会ってる方なんじゃない?」
〇〇:「カッキとか結構久々でしたからね〜。梅さんはやっぱメンバー内で1番運営近い人なんで機会は多いかもしれないです」
梅澤:「〇〇は配信系のに結構来てるイメージかな。さくとは結構会ってるんじゃない?」
〇〇:「そうですね、4期生だとサクが一番会ってると思います。も〜見るたびお姉さんになってて…泣きそう」 

去年からとにかく成長著しい。
アザラシか!

与田:「出た、全自動さく褒めマシーン」
久保:「なにそれ笑」
梅澤:「そんなに変わるほど会うスパン開いてないでしょ笑」
〇〇:「いやぁ〜、三日会わざれば刮目してみよっていうじゃないですか…。それこそTikTokの撮影の時、小川に対してもうお姉ちゃんで…」
梅澤:「ちょっと〜、私もいたんですけど」
〇〇:「梅さんは小川に対してはもう、おかぁちゃん過ぎる…」
梅澤:「ちょっと!しれっとイジってる!」
与田久保:「笑」
山下:「あー!いつの間にかハーレムになってる!」
言い方よ。
〇〇:「おかえんさい」
山下:「ただいま!と言いたいけど行くよ!」
〇〇:「えっ、なに」
山下:「写真集見たことない奴がいます!って言ったら連れてこいって」
〇〇:「なんで言っちゃうかなこの人は!」


〜〜〜〜〜〜〜〜


与田:「嵐の様に去っていった」
久保:「ホントに山に頭上がんないね、〇〇」
梅澤:「大丈夫かな…」
与田:「おかぁちゃんが出て…痛っ、梅がぶった!暴力反対!」
梅澤:「うるさい」
久保:「圧が笑 梅、〇〇に対しては心配症だよね」
梅澤:「そうかなぁ…?」
与田:「前はなんかあると梅さん梅さん言ってのが、5期生につくようになって減ったから寂しいんでしょ」
梅澤:「そんなことないですぅ〜」
久保:「まぁ、〇〇も後輩みたいなトコあったからね、自立して嬉しいような寂しいようなってのがあるんじゃない?」
梅澤:「自分だって初期の頃は乃木坂のこと教えてくださいって頼まれて、嬉しそうに語ってたじゃん」
久保:「そりゃ好きなもののこと語ってくださいって言われて、それを一生懸命聞いてもらえるのは誰だって嬉しいでしょ笑」
与田:「あれだけ尊敬してます感出されると、悪い気はしないよね」
梅澤久保:「それね笑」
久保:「けど〇〇としては一番の尊敬は飛鳥さんなんじゃない?」
梅澤与田「……」
久保「え、何その反応」
梅澤「ここで飛鳥さんの名前出すのはさぁ、和菓子と洋菓子どっちが好き?って聞かれてステーキって答えるようなもんじゃん」
与田:「そうそう、トラとライオンどっちが強い?って聞かれてゴジラっていうようなもん」
久保:「何その例え笑」
山下:「何の話〜?」
梅澤:「山だけ帰ってきた」
久保:「〇〇は飛鳥さんリスペクトだよねって」
山下:「あ〜…ね。それはそう」
与田:「そこは納得なんだ」
山下:「そりゃそうでしょ。散々目で追って、でもこの人には敵わないなぁみたいな目してさぁ。それこそテレビの向こう側の別世界の人見るみたいな。羨望の眼差しってやつだよあれは。それでそのまま卒業しちゃうんだもん、そんな憧れ、消えっこないじゃん」
梅澤:「へぇ、珍しく真面目」
山下:「別にいいも〜ん。〇〇に憧れられたり、目標にされたりしたいわけじゃないし〜」
久保:「じゃあどう見られたいの?」
山下:「……ナイショ♡ そろそろ助けに行ってあげるかぁ〜」
梅澤:「…ホントに大丈夫だと思う?」
与田:「…大丈夫…だと思う」
梅澤:「自信無くなってんじゃん」


〜〜〜〜〜〜〜


久保:「そういえば、〇〇が飛鳥さんリスペクトのきっかけって何かあるのかな」
帰りのタクシーでふと久保が呟いた。
梅澤:「さくがお世話になったっていうのも大きいみたいだけど、そもそもスタンスに憧れてるんだってさ」
久保:「スタンス?」
梅澤:「人との距離感をはかるのが、飛鳥さんはうまいんだって。
ほら飛鳥さんって、こっちが飛鳥さん飛鳥さん!って行くとちょっと突き放した感じで接するじゃん?けど、そっとしておくといつの間にかスッと近くにいるっていうか」
久保:「ツンデレと言うか、猫っぽいと言うか」
梅澤:「そうそう。それは相手のことをよく見てて、この子はこれくらいの距離感の方が積極的に接しやすいかな。とか、この子は自分からぐいぐい来れないから、これぐらい寄り添ってあげたほうがいいかなとか。察知してあげてるから出来る行動だと思うんですよねって」
久保:「へぇ〜そんなこと考えながら飛鳥さんのこと見てたんだ」
梅澤:「でも飛鳥さんが相手のことをよく見て、どういうふうに接してほしいかを考えてるって言うのはちょっと納得なんだよね」
久保:「というと?」
梅澤:「この前ハマスカのイベントに出させてもらった時に、どっちの回答が齋藤飛鳥でしょうみたいなクイズをやったんだけど、
この回答をした意図は?って聞かれて、”これは齋藤飛鳥っぽいってみんな思うだろうなって”答えててさ」
久保:「おぉ、まさにファンのこうしてほしいに答えたわけだ」
梅澤:「“そこで私っぽいかな、じゃなくて齋藤飛鳥っぽいかなって言う所が最高に齋藤飛鳥って感じでカッコいいですよね”だってさ」
久保:「齋藤飛鳥評論家かな?笑」
梅澤:「笑 5期生との接し方、色々考えてるみたいだからね。4期とは近すぎたかなとか悩んでるときもあったし。ひとりひとりに合った接し方とか、距離感が持てたらなって言う意味で尊敬とか、憧れなんじゃないかな」
久保:「5期生名字呼び徹底してるのはそのへんが理由か〜」
梅澤:「間違ってるとは思わないんだけどね。番組とかではメンバー同士のトークでも名字かフルネーム呼びがいいし、そのへんのお手本としても。
けど、そこまで名字呼び徹底しなくても…とも思う。普段の会話とかはそれこそあだ名や名前でもいいと思うけど…。うーん」
久保:「…梅もホントキャプテンらしくなったね」
梅澤:「だといいけど笑 山も飛鳥さん好きだし、共感する部分もあんのかもね」
久保:「なるほどねぇ…」 


女神(ポルカドットスティングレイ)   END…

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