見出し画像

After4 Sunshine Girl

賀喜「…ねぇ」
〇〇「ん?どしたん?」

収録の合間、遥香が傍にやってきた。

賀喜「有休の消化ってまだ出来る?」 
〇〇「うん」 
賀喜「…今度美月さんと卒業前旅行の企画が配信中であるんだけど…」
〇〇「うん」
賀喜「…良かったら、一緒に来てくれないかな」
〇〇「……」

落ち着かない様子で視線を彷徨わせる遥香。

〇〇「いいの?」

俺が混ざって。
二人じゃなくて。
残り少ない時間だけど。

賀喜「寂しい思い出にしたくない。笑って、ちゃんとお見送りするための心構えがしたい…」 

きっと俺を呼ぶことも、遥香なりの準備の一環なんだろう。なら、返す言葉は一つしかない。

〇〇「そういうことなら喜んで。スケジュール、調整するよ」
遥香「…ありがとう」

その笑顔ためなら、それくらいはお安い御用。


〜〜〜〜〜〜


〇〇「着きましたよ〜」
山下「お〜!」

計3台の車で機材、スタッフ、やまさんに遥香を乗せ、本日のメイン撮影地に到着。

撮影スタッフ「ここから、少し歩きまーす!」

機材や荷物を受け取ったスタッフから、駐車場を抜けて軽い山道を登る。

〇〇「さぁ、俺達も行きますか」

俺も食材やドリンクの入ったクーラーボックスを手に、2人へ声を掛ける。

山下「なにか持とうか?」
〇〇「何を仰る。これくらいは余裕ですよ。日焼け止めと虫除け、しっかりしてくださいね」
山下「お、これは塗ってくれる展開?」
〇〇「遥香〜」
賀喜「任せてください」

左右の手でそれぞれ、日焼け止めと虫除けをフリフリしながら遥香が車から出てくる。

山下「対策してきてるな〜?」
〇〇「流石にね笑」
賀喜「準備は万端にしてきました笑」

大人しく自分で日焼け止めを塗り直す山さんを遥香と一緒に笑って見守る。

卒業を間近に控えた山さんのため、色々と提案された卒業企画。
つい先日収録された乃木中の、ヒット祈願の空中ブランコへの挑戦や、ティッシュ配り。今回の遥香との旅行企画もそういったものの一環。じわじわと、確かにその時が近づいている実感が湧いてくる。
けど、今日という日は悲しむより楽しもう。
そういった積み重ねが、きっと心の準備になると信じて。

山下「よし、準備オッケー」
賀喜「行きましょう!」
〇〇「足元気をつけてくださいね〜」

駐車場から出ると舗装こそされてはいるが、山道を歩くことになる。事前にわかっていることなので、各々それなりの服装と靴で臨んではいるが、注意するに越したことはない。

山下「なんか別のヒット祈願が始まった気分になる…」
〇〇「別に富士山上るんじゃないんですから笑」
賀喜「疲れたら言ってください!手伝います!」
山下「え、おんぶしてくれる?」
賀喜「…おんぶはちょっと」
〇〇「どんな修行なんすか」
山下「〇〇ならしてくれるって信じてる」
〇〇「そんな信頼はいらないです」

しばらく登っていくと道の片側が山から川へと変化していく。

山下「急に春めいて暖かくなって来たから、登ってたら暑いかと思ってた」
〇〇「川の近くは涼しいですからね。寒くはないですか? パーカーありますよ」
山下「大丈夫、ちょうどいいぐらい」
〇〇「遥香も大丈夫?」

川を覗き込む遥香の背中に問いかける。

賀喜「大丈夫!」

笑顔でそう言うと、川岸から離れてこちらに戻ってくる。

賀喜「魚とかいそう」
〇〇「いると思うよ。このへんだと名物だし」
賀喜「そうなんだ!」

少し心配していたけど、今の所楽しめているみたいで安心する。山さんの卒業が決まってから、どうしてもへこんだ遥香を見る事が多かったし、泣いてる所もチラホラ見かけていたから。

山「…雨?」

顔に触れた水気を手で拭いながら、山さんが呟く。

賀喜「なんか音がする」
〇〇「目的地だよ」

木々が覆いかぶさるような山道が途切れ、一気に視界が広がる。

山下「…滝だー!」
賀喜「すごーい!」



眼前に広がる滝に近寄る2人。

賀喜「本当に雨みたいです」
山下「でしょー?」

滝から降り注ぐ水が、川に落ちるまでに流され、こちらに霧雨のように降り注ぐ。

〇〇「はいはい、あんま濡れるとアレなんで離れますよ〜。目的地はあっち」

滝から続く川の少し下流。
バーベキュー場で、既に到着したスタッフ陣が着々と撮影拠点を構築している。

山下「…あとで急に滝行とか始まんないよね?」
賀喜「えっ…」
〇〇「これ乃木中じゃないから笑」


〜〜〜〜〜〜


山下「はい、みなさんこんにちは。乃木坂46の山下美月でーす」
賀喜「賀喜遥香でーす」
山下「今日はなんと!卒業前の思い出づくり、バーベキューをしにやってきました〜」
賀喜「わ〜」

導入の撮影が始まった。
2人の声を聞きつつ、炭火を起こす。
今日の仕事はバーベキューのサポート役。
撮影がつつがなく進行するよう、2人が楽しめるようにお手伝いをする。

山下「本当ならまずは火をつける所なんですが、すでにスタッフさんにやってもらってまーす笑」
賀喜「ありがとうございま〜す笑」

ちらりとこちらに視線を送る2人に少し笑ってしまう。

山下「なので、まずはフルーツをカットして、サングリアを作りまーす」
賀喜「サングリア…」
山下「ワインにフルーツ入れたやつ、らしい」
賀喜「らしい笑」 

絶賛火起こし中のバーベキューコンロの直ぐ側、
まな板と包丁、果物を用意した作業用スペースに2人がやってくる。

山下「このドリンクサーバーに切ったフルーツと、氷、ワイン、グレープフルーツジュースを入れるだけ」
賀喜「結構お手軽に出来るんですね」
山下「ねー」

早速フルーツをカットしてサーバーへ放り込んでいく。

山下「これは映えだね〜」

透明なガラスサーバーにカラフルな果物が詰められていく。

山下「1個食べちゃお」

カットしたキウイをそのままパクリ。

賀喜「いいな〜」
山下「はい、あ〜ん」
賀喜「やった〜」

実にアイドルらしい絵が展開する中、炭火を起こし終えたので次の準備に取りかかる。
カットを終えたまな板と包丁を回収して洗浄。 

山下「じゃあ氷も入れたのでワインとグレープフルーツジュースを入れまーす」
賀喜「お〜」

それぞれワインとグレープフルーツジュースを手に、サーバーへと注いでいく。

山下「オシャレ〜」
賀喜「バーベキューでこういうの出来るんですね〜」
山下「ね〜。これで後は少し待つだけ!」
賀喜「楽しみ!」

洗浄を終えたまな板と包丁を再度セット。
野菜が色々と乗ったバットも添える。

山下「さぁ、サングリアを待つ間にバーベキューの準備をしましょ〜」

〜〜〜〜〜〜

山下「いや〜、大成功だねかっきー!」
賀喜「はい!めっちゃ美味しいです」

網に載せられたカラフルな野菜や、ジューシーなお肉達を食べながら、前半の収録終了が近づく。

山下「ではここからは撮影を頑張ってくれているスタッフさんに達にもおすそ分けでーす!」

カットがかかり、この後はしばらくインサート撮りなどが入るので、スタッフ陣も交代でバーベキューを楽しむ。

賀喜「…ずっと作業してくれてるけど大丈夫?」

いつの間にか直ぐ側に遥香が来ていて、こちらを覗き込んでくる。

〇〇「全然平気、むしろ楽しい笑」
賀喜「そっか笑」

そう言って笑うと、ふと視線を山さんに送る。

賀喜「美月さんも楽しそうで良かった」
〇〇「めいっぱい楽しんでもらわないとね」
賀喜「うん…」

スタッフ陣にお肉や野菜を配る山さんはニコニコと笑っていて。もう直卒業してしまうなんてこと、忘れてしまいそうになる。
それが良いことなのか、悪いことなのかは、今の俺にはわからないけれど。

賀喜「あのさ…」
〇〇「ん?」
賀喜「急なんだけど、…ちゃんとご両親と話せた?」

本当に急だけど、そういう時はずっと気になっていた事を話す時なんだろうと思う。
つい先日、和とだっちょさんと神戸に行く機会があった。神戸は俺の地元。せっかくだからと、東京に出てから帰ってなかった実家を訪れることになり、遥香には事前にそういう企画が立っていることだけは伝えていた。

〇〇「話したよ。本当はもっと早く帰って、直接話せばよかったんだけどね」

そのための踏ん切りが、いつまでもつけれずにいた。けど今回、和とだっちょさんが行こうと言ってくれたから、ようやく決心ができた。
いつまでも避けていないで、会えるうちに会っておこうって。実際会ってみればなんてことはない。懐かしい日々が返ってくるだけだ。

〇〇「ありがとね。心配してくれて」
賀喜「…よかったね」

本当に嬉しそうにしてくれるもんだから、

〇〇「遥香がそう思ってくれるだけで、帰った価値があるよ」

俺もそんなことを口にしてしまう。

遥香「なにそれ笑」
〇〇「…なんだろうね笑」
遥香「…私も会ってみたいな。〇〇のご両親」 
〇〇「喜ぶと思う。母はI see…大好きだし、父はこの間帰った時ジャンピングジョーカー、ギターで弾いてたし笑」
賀喜「え〜!嬉しい!」
〇〇「そりゃよかった。…さぁ、こっちも出来上がり」

バーベキュー開始から別で焼いて、アルミホイルに包んでおいたお肉を取り出し、カットしていく。

賀喜「凄いお肉」
〇〇「こうやって切り出したら、はい、ラムチョップ」

ラムラックを丸ごと焼いてからカットして、見栄えを派手にした。お皿に盛って物撮りを済ませたら、遥香にも手渡す。

〇〇「山さんとわけわけして。食べたらスタッフさんにも配ってくれる?」
賀喜「はーい!」

ニコニコと笑う姿が本当によく似合う。
すぐ山さんとワイワイとお肉を分け合う姿を確認したら、残りの分もどんどん切り出す。

1日でも、1時間でも、1秒でもいい。
彼女達が笑顔でいられる瞬間が増えればいいな。
そう思う。

いつだって、辛い時、苦しい時は突然やってくる。
そういう時に、それを受け止められるくらいの余裕は持っていたい。その余裕はきっと日々の楽しい思い出からも生まれるものだと思う。
今が辛くても、苦しくても、その瞬間思い出せば乗り越えられる。だからこそ日々に楽しさを、喜びを見出していて欲しい。

そのためのお手伝いなら、喜んでやらせてもらう。

山下「〇〇!ラム美味しいじゃん!」
〇〇「お、よかった」 

ラムチョップ片手に山さんがやってくる。

山下「いや〜、相変わらず料理好きだね〜」
〇〇「俺が皆さんに貢献出来るのは運転か料理ぐらいですからね〜」
山下「いやいや、そんなことないでしょ笑」
〇〇「もし他にもあれば嬉しいですけどね笑」
山下「自信持ちなよ。少なくとも私とかっきーは〇〇がいて、今日をより楽しめてるよ」

スタッフさんにラムチョップを配る遥香をみつめながら、素敵な笑顔で。

山下「ありがとう。来てくれて」
〇〇「どういたしまして」

ありがたい言葉。

山下「それでさー、ずっと気になってたんだけど」
〇〇「なんです?」
山下「〇〇ってかっきーのこと好きなの?」

飲んでいたサングリアを思わず吹き出す。

〇〇「ゴホゴホッ」
山下「びっくりした」
〇〇「ゴホッ…。びっくりはこっちのセリフですよ」
山下「あれ〜、違った?」
〇〇「なんです急に…」
山下「いや〜、〇〇はかっきー見る時は他の子とはちょっと違う気がして」
〇〇「…自覚ないのでわかりかねます」

この感覚はうまく言葉に出来るか自信がない。

〇〇「俺、アイドルが輝いてる時、キラキラって表現使うんですけど」
山下「うん、使ってるね」
〇〇「それ、元々は遥香を見て思ったことなんですよね」

そのまま伝えてみよう。

〇〇「なんというか、あの子はいつも照らされてるような気がするんです。スポットライトっていうか
、陽の光に。キラキラした陽射しを浴びて、キラキラと輝いてる。だから遥香を見てると眩しいというか。あぁ、素敵だなぁって思うんですよ」
山下「ふ〜ん…」
〇〇「答えになってるかわかんないですけど」
山下「…なってはないかな笑」
〇〇「ですよね笑」
山下「じゃあ別にいいってことだよね」
〇〇「なにがです?」
山下「気、使わなくてもいいってことだよね?」

山さんは切り出されたラムチョップを手に取ると、こちらの口元に持ってくる。

山下「はい、あーん」
〇〇「…どういう展開?」
山下「まぁまぁ…」

断る理由も無いっちゃ無いし、断りきれる自信もないので、大人しく頂いておくことにする。

〇〇「ありがとうございまふ」
山下「どういたしまして笑」

我ながらいい出来だと思うけど、照れくささや恥ずかしさが上回ってしまう。

山下「どうよ、理想のアイドル様のあーんは?」

そういうの自分でサラッと言ってしまえる所も、本当に尊敬する。

〇〇「……我ながらいい出来だなって」
山下「それは間違いない笑」

油断すると、ポロリと本音がこぼれてしまいそうになる。それは今言うことではないし、俺の口から出るべき言葉でもない。

賀喜「何イチャイチャしてるんですか…」
〇〇「びっくりした!」

いつの間にか俺達の背後に空っぽになったお皿を持って、遥香が立っていた。

山下「見つかった!逃げろ〜!」
賀喜「美月さん!」

ラムチョップの乗った皿を取って、山さんはスタコラサッサとでも言うように離れていった。

賀喜「もう〜…」

怒りの矛先を失ったのか、遥香はこちらを睨む。

賀喜「……」

何も言わないのが逆に怖い。

賀喜「〇〇さんはさ、美月さんと仲いいよね」
〇〇「…え、なに急に」
賀喜「…お互いに、お互いじゃないとしないやり取りしてる」
〇〇「…いや、誰彼構わずあの対応はダメでしょ」
賀喜「…じゃあ〇〇さんにはいいの?」
〇〇「え…、うーん」

そういえば深く考えたことなかったかもしれない。

〇〇「…よ、よくはない?」
賀喜「……」

目が『でもしてるじゃん』と訴えかけてくる。

賀喜「別に責めたいわけじゃないよ。でも美月さんが卒業したらどうするの?」
〇〇「どうって…」
賀喜「卒業したら〇〇さんは傍にいないんだよ?そういうやりとりをしてくれる相手がいなくなっちゃうんだよ?」
〇〇「…俺がいないって」

俺に対して、山さんがいなくなるって言うなら分かる。けど、山さんに対して俺がいなくなるって…。

賀喜「〇〇さんは自覚がないよ。自分が誰かにとっての支えになってるって自覚が」
〇〇「……」

わかってるつもりだった。
いや、飛鳥ちゃんに教えてもらって、わかったつもりになってた。
けど、まさか、あの山下美月が?
あの天才的なアイドル様が?

賀喜「表現の仕方は皆と違っても、美月さんも〇〇さんに甘えてるんだよ」

心の何処かで、甘やかされてるんだと思ってた。
気を使って、かまってくれているんだと。
わーわー持て囃してくる後輩を、少しばかり可愛がってやるか、くらいの。
そんなところだと思っていた。

賀喜「人には自覚を持てっていうくせに」
〇〇「…め、面目ない」

ちょっと衝撃すぎて、うまく話せない。
そんなこと、俺1人では到底考え至らない。

〇〇「ありがとう遥香、言われなきゃ、とてもじゃないけど気付けないことだった」 
賀喜「…もう」

少しばかり呆れたようにため息をつく遥香。

賀喜「お説教したらお腹空いちゃった」
〇〇「まだあるよ」 

まな板の上に、お皿に乗せ損なったラムチョップ。
遥香はチラリとそれを見ると、

賀喜「ん」

口を開ける。

つい今しがたやってもらった所を見られたもんだから、断りづらい。しかし、してもらう以上にしてあげるのは照れくさい。

〇〇「…はい」

なんというか、ただ口にいれるだけならまだしも、こう骨付きのお肉を噛みちぎらせるって、こう、なんか、こう、なんだ。

〇〇「…なんか良くない気がする」
賀喜「…自分だってやってもらってたじゃん」

よく見ると遥香もかなり照れくさそうで。
お互い照れてなにやってんだ。思春期か。

〇〇「やる方もやられる方も恥ずかしいということがわかった」
賀喜「凄い今更…」
〇〇「しょうがないでしよ、したこともされたこともないんだからさ」
賀喜「あ…、そうなんだ」

なんでちょっと嬉しそうなんや。

〇〇「…あのさ、最近の遥香見てるとさ」
賀喜「なに?」

何故か、急に恥ずかしくなってしまい、被っていたキャップで顔を隠す。 

賀喜「なに笑」 
〇〇「いやー、そのさ」

少しだけ遥香近づいて、小声で話す。

〇〇「…彼女感すごない?」
遥香「っ…!?」

びっくりしたのか、パッと距離を取ってこちらを見る遥香はみるみる赤くなって、

賀喜「…もう!」

バシバシと俺を叩きながら、怒る遥香。 
なんかそういう所もそれっぽい感じがする。
ただ、もしかしたらなんか言い方が良くなかったというか、彼女感って言葉はこういう時に使うのは違ったかもしれない。というか本人に言うことではなかった?

山下「なーにイチャイチャしてんの笑」
〇〇「びっくりした!」

いつの間にか俺達のすぐ傍に来ていた山さんに声を掛けられ驚く。なんかデジャビュ。

〇〇「あー、はいはい。すっかり食べ終わったので片付けしましょうねー!」
山下「わざとらしいなー笑」

なんかこう、自分自身でも分かるくらい今日はから回ってる気がする。どうしちゃったかな。


〜〜〜〜〜〜

大好きな人達に囲まれて、
この瞬間にしか出来ないこと、
感じられないことがあるし。
会いたいな。そう思える人達がいることに心から感謝してる。

ずっとこのままがいいな。
ずっとワクワク、ドキドキしてたいな。

けど、それは出来ないって、わかってる。
ううん、最近わかった。
少し前まで、こんな日々が続いてくんだって無意識に思ってた。一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒に悩んでって。そうやって行くんだって。
けど、変化していくから。
ずっと同じままではいられないから。
変わらなきゃ。受け入れていかなきゃ。
メソメソしてたら、呆れられちゃう。

私達は大丈夫。
貴女は貴女の道を思う存分進んでください。
そう言って送り出したい。

貴女の魅力に惹かれて、
貴女の姿に憧れて、
貴女の背中を追いかけて、
貴女と同じ場所に立って、
貴女の努力に勇気づけられて、
貴女というアイドルを目標にして、
貴女のようにはなれないなって実感して。
私はここまでやって来た。

貴方が自分の個性で補えばいいって言ってくれたから、
貴方がキラキラ光るアイドルだねって言ってくれたから、
貴方が俺も皆も君の努力を見ているよって言ってくれたから、
貴方が一緒に泣いたり笑ったりすることを同期だからねって言ってくれたから、
貴方が隣で一緒に走ってくれることが心強かったから、
貴方がそうやってそこにいてくれたから、
貴方の優しさに惹かれたから、
私は今もここにいる。

乃木坂は大好きな場所。
大好きな人達がいる場所。
それでも、やっぱり。
この2人には、特別な感情が湧いてくる。

貴方とは離れ離れになったわけじゃない。
少しだけ、関係性が変わっただけ。
それでも、やっぱり寂しさがあった。
どうして? そんな言葉が浮かんだ。

貴女はもうすぐここから居なくなってしまう。
少しだけ、怖いなって思うけど。
それでも、立ち止まるわけにはいかない。
どうして? 貴女に後悔してほしくないから。

それが私に出来る恩返しだって、
貴方が教えてくれたから。

でももしかしたら、
あなたは強がってるんじゃないかってそう思う。

弱さを見せることは、弱いことじゃない。
自分と向き合って、何かを解決するための強さだから。そう言う貴方が思い浮かぶ。
最近素直に弱い所も見せれるようになったって、貴女も言ってた。

もしそうなら今日くらいは、
そんな2人に私が出来ることをしてあげたい。

心配ばかりかけてる私だけど、ちゃんと前に進んでいるから。そう伝えたい。


Sunshine Girl(Moumoon)  END…


-------

ライナーノーツ
今回はMoumoonのSunshine Girlをテーマに山さんとかっきーの卒業旅行前編をお届け。
ラブソングが多いので、使いたい曲結構多い。
そんな陽気に当てられて、珍しくイチャ度高めな気がする。(当社比)

今も書きながら後編の落とし所を模索中。

誰の視点で書くか…。
山下美月という人は、いい意味でテキトーな語りによる、その内面の読めなさぶりも魅力かなと感じることが多いので、本編中は敢えて本人の視点で話を書くことをしなかったのですが、うーん…。

後編は宿泊先での夕飯〜お月見を書きます。
楽曲の予想がつく人もいそうですね。
書きながら流れを作る、行き当たりばったりによろしければお付き合いください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?