見出し画像

イベントレポート「慶應義塾に農学部を創る!」

令和5年10月23日、横浜ランドマークタワーで開催された「2040クエスト」にて農水三田会トークセッション「慶應義塾に農学部を創る!」を実施しました。
基礎素養としての農の知識を体得する、政策を実際作る人材を育てる、農家後継者を起業の次の形で育て農家を格好いいものにしていく。これからに相応しい慶應義塾の農学について、形、内容、目的、さまざまな会話のスタート地点となった1時間でした。

登壇者

大津愛梨氏
O2Farm共同代表。熊本県南阿蘇村にて「ランドスケープ農業」としての米づくりに携わる。農業、地域文化、エネルギー等の分野で、NPO法人等の組織設立・運営を含め多種の活動を行う。農水三田会代表。

宮治勇輔氏
株式会社みやじ豚代表取締役。神奈川県藤沢市にて希少ブランド豚「みやじ豚」の生産・加工・販売に携わり、品質を追求する。農業後継者支援、バーベキュー文化の価値創造を先導する。農水三田会副代表。

神成淳司氏
慶應義塾大学環境情報学部教授、政策・メディア研究科委員。博士(工学)。農業、情報政策、コンピュータサイエンス(産業応用)を主な研究分野とし、官・学ともに活躍する。

河村仁氏
水産庁漁政課長。水産庁(農林水産省外庁)内の法律、予算、人事、組織定員要求、国会対応等を取りまとめる。農林水産省をはじめ行政、民間企業、地方自治体にて農林水産業・食品産業分野の発展を推進してきた。

星野尉治氏(司会)
一般社団法人域産学協創機構代表理事、慶應義塾大学SFC研究所上席所員。地域活性化、マーケティング、高等学校の総合学習支援、ICT活用、起業関連など分野は多岐に及ぶ。農水三田会創設メンバー。

農水三田会設立趣意

日本の農・食には多くの課題があり、同時に可能性に満ちています。慶應義塾は食の分野でも未来先導の使命を果たすべきですが、現在「農学部」はなく、研究が分散しています。学際的かつ先端的に、食のサステナビリティを担う未来志向の農学部を慶應に創設するべく、2021年に農水三田会が設立されました。

セッション概要

オープニング
慶應という大学のミッションとして、机上の空論ではない課題解決を第一次産業の分野でも実践する必要がある。

学生が農学と出会うには 
神成氏
「学問のすゝめ」の「農たらば大農となれ」とは「やるなら大いにやれ」という意味である。慶應の農学にはこれまでにない新しい形が求められる。
また、必修授業だと教養として学生の身につかず、実際の場があってこそ学びが成立する。

宮治氏
生業としての農業には厳しい現実がある。一方、学生がバーベキューの手伝いをきっかけに農業のアルバイトを始めるなど、農家のイベントから農業に興味をもってもらうことがある。

大津氏
興味をもって「もらう」状態から進んで、当然に学生が農業に関心を持つようになることを望む。
大学を出ても米作りのことを何も知らないことは問題で、必修でみんなが学ぶ機会は必要だ。実地は人数に制約があるが、農業に携わる人が大学に行って話すだけでも違いはあり、大学で農業と接点がないまま卒業しないようにしたい。

農業のイメージ
神成氏
ヨーロッパに行くと、農業が”かっこいい”ものという感覚がある。日本では農家が将来の可能性を感じられていないような、自分の子どもに継がせたがらない現象がある。農業の大規模化はやってきたけれど、もっとバリエーションが必要。

宮治氏
日本にも農業やっていて”かっこいい”人はたくさんいるが、接点は少ない。「農家=メーカー」という性質があり、大規模化はやはり合理的で、小規模ブランドは大変なところがある。色々な方法が認められる環境がないと新しく人は入ってこない。

新しい学部をつくる
神成氏
問題をつぶしていくやり方だけでは未来を創ることはできない。学部ではなく大学院で新しい時代を提示するための学びを進めるという方法も考えられる。

河村氏
農・食はすべてのことに関わり、既存の農学部で対応しきれないこともある。慶應では学際的に取り組み他の農学部を刺激して欲しい。政策の観点では、問題発見・課題解決は今の時代も必要で、ただ課題が変わっている。
慶應でやる理由として、自己を確立した上で協力し合う独立自尊の姿勢が、国際社会の中の日本としての基盤に繋がる。

大津氏
官学の視座の違いがあることからも、改めて学部という場はいるのではないかと思った。その時代で解決すべきことを学ぶのが大学であり、今農・食の学びが必要だ。

会場からの声
学部は人を農業に向かわせる場となり、研究とはまた違う意味を持つ。

学びの形
大津氏
コロナ禍で学生を受け入れた際、オンライン授業を受けながら農作業をしたことが授業の理解を助けたという。休学せずに1学期間など農業の現場に行く仕組みがあると良い。
これまでの学問を見つつ、私学の、慶應の尖りを大切にしたい。農について知れるように、慶應の農学部に行きたいと思われるように。

神成氏
今慶應にあるリソースで講座を組み合わせ、足りない部分を加える形で学ぶ環境を作れないか。
オンラインだとトータルの学びの質は低下することに注意すべき。一部の学部のクウォーター制にはフィールドに出やすいという利点がある。

河村氏
SFCで座学、議論、体験が一連になった授業があるのは優れた点。
建築コースのように農業コースを作るのが難しい一因は、農学を学んだ後のゴールが見えづらいことにある。

宮治氏
起業では社会課題の解決が難しい、政策レベルが必要なところがある。新しいことを考えて、希望を持って農業をやっていきたい。
農業現場の学び方は色々で、キャンパス選んで近い場所に行ってもいいし、夏休みに単位つきで実施してもいい。今回は慶應に農業の学び場をつくる可能性という収穫があった。

クロージング
農水三田会として、慶應と農学の可能性を広げ、”かっこよさ”に繋げていきたい。

イベントを終えて

登壇者、スタッフ、ご来場の皆様、関わっていただいた全ての方にこの場を借りて御礼申し上げます。
この度の議論、新年会等でさらに発展させていく予定です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

アーカイブ

記事には書ききれなかった活発な討議の模様はこちらからお聞きください。https://www.dropbox.com/scl/fi/lax8p94zuii4qlnbmm5fg/.m4a?rlkey=yw091mdxr963gomr15zpkaqjx&dl=0

「2040クエスト」についてはこちらをご覧ください。
https://2040quest.sub.jp/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?