あの世から、はたしてあげたい約束がある
死ぬのが怖いと
子どものころ、誰もが一度は思うものらしい。
ワタシは宗教2世だったので、善行を積んで死ねば天国に行けると言われてきたものだから、幸か不幸か死ぬのを怖がったことがない。
あれはににくんが5歳くらいのころ
いきなりぐずぐずと泣き出したものだから、何事かと思ったら
死ぬのが怖いという。
ついにこんなことを言うようになったかと少々狼狽しつつ
イヤー死んだら魂になってね、天国に行けるから大丈夫だよーと
返事した自分がいる。
本当にそうなのかは死んでみないとわからないが
怖がる5歳児に対し、死んだらそれでおしまいなのさと言うのもはばかられた。
天国っていいところ?
いやーたぶんいいところらしいよ(適当)
晴れてて暖かくて
ママの好きなハワイみたいだね
今も昔もハワイに憧れていて行きたいきたいとワタシが言っているのを常日頃聞いていた彼はそう言った。
ににくんにとってハワイ=楽園とインプットされているのだろう。
これで一件落着と家事にもどろうとしたとたん彼はまたべそべそと泣き出した。
自分の適当さを見抜かれたかとドキドキしながら、どうしたと聞くと
死んだら、天国への行き方がわからなかったらどうしよう?
ひとりだと迷子になって行けないかもしれない
とのたまうではないか。
あーいやーそうねえ‥
予想だにしなかった答えにうろたえたワタシはとっさに
ママが迎えに来てあげるよ
と言ってしまったのだ。
ママのほうが先に天国に行くからさ、ににくんが死んだら
ほーら迎えにきましたよーって
それで一緒に天国の入り口まで連れて行ってあげるから大丈夫大丈夫
なんとも適当で、確証のない約束であるのに
ああよかったとににくんは安心して笑顔になったのだが、ワタシはその時からその約束が忘れられない。
彼も大人になったら、ワタシの適当な嘘だとわかってしまうだろうか。
それともきれいに忘れてしまうだろうか。
それでもワタシはこんなママでも迎えに来て欲しいと願ってくれたことが嬉しかった。
いつも余裕がなく、慌てたりイライラしたり、時にヒスを撒き散らしてしまっていたワタシを見捨てずに好いてくれている子どもたちよ。
母の愛は無償というが、子どもたちのほうがよっぽど無償だと思う。
もし魂というものがあるのなら、そして可能であるならばワタシはににくんがおじいちゃんになって死ぬ時に
ひょこひょこと迎えに行こうと思う。
そして
あれーママなんでいるの?
と聞かれたら
迎えに行くって約束したじゃん!と胸をはって答えるのだ。
晴れていて暖かいであろう、天国へ。
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