言えなかった「魔法のコトバ」
本当は知ってた。卒業式のあと、廊下でずっと待っていてくれたこと。卒アルにメッセージ書くのと連絡先交換しようとしてくれてたのと、私が「伝えたい」ことがあるの知ってたから待っていたのを。
だけど、「釣り合わない」と思ったから私は行けなかった。彼のところへ。
「好き」
の、たった一言が言えなかった。
朝、早く学校に行って二人で自習していた。約束してる訳じゃない。でも、なんとなくそれが「当たり前」で特別な時間で。
ドキドキしちゃうからイヤホンして音楽聴きながら勉強している私にずっと話しかけてきて、「聞いてない!ぷん!」って勝手に怒って。
体育が終わると暑いって言って、勝手に冷房16℃にして「◯時に起こしてー。」って寝ちゃう。起こしても起きなくて、「何で起こしてくれなかったんだよ!」って怒って。
けれど、肝心なときはすごく頼もしくて。
クラスの男子から「お前には無理だろ!」って馬鹿にされてたAO入試。あと一歩で落ちたとき、先生とみんなの前で、「コイツ、ずっと頑張ってました。めっちゃ頑張ってました。なのに…。」って言ってくれた。
くだらない喧嘩ばっかりしてたけど、私が顔は笑ってても、心が泣いてるのとかすぐ気づいてくれる。
だから好きだった。
でも、こんな大して頭も良くない、見た目もかわいくもない。こんな私と、頭がよくて、変な行動ばっかりだけどすごくイケメンな彼とは「釣り合わない。」彼が馬鹿にされちゃう。
そう思って、自分の気持ちに蓋をしていた。
トータル、8年間。片思いした。
その間、一回だけすれ違ってちょっと話して、あとは会うことはなかった。
運命の人じゃなかった。そう言い聞かせた。
そのあと、私は別の人と結婚した。
ただ、つい最近、連絡を取らざるを得ない困った状況が生まれた。
出ないだろうと思った電話に出て、最善の方法を教えてくれた。
「困ったらまた連絡しろよ。」
また、笑ってるのに心が泣いてるの見抜かれていた。
あのとき、「好き」が言えてたら、ちょっとは違う未来があったのかな。
もし、釣り合わないとか似合わないとかそんなこと考えてる人がいたら、絶対に「好き」は伝えることをおすすめする。魔法のコトバだから。
赤い糸か、違う色の糸かわからないけれど、ちゃんと「縁」で結ばれるから。
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