『日曜日の夜と学芸会』
20240616
小学生の頃から日曜日の夜は嫌いだった。
休みが終わり、また平日がくる。
学校がいやだったのではなく、「明日は学校に行く日」というその事実を目の前に突き付けられることが、とにかく嫌だった。
そんな当時の僕が、学校に早くいきたいと思うそんな時期があった。
それは、学芸会の練習期間だ。
学芸会は二年に一度行われ、学年全員で一つの劇をやる行事である。
一人一役与えられて何かしらのセリフがあり、高学年になると照明など裏方の仕事も自分たちでやっていたと記憶している。
学芸会の練習は、非日常だった。
そもそも自分が何かしらの役になるという劇中の瞬間は非日常の象徴であり、さらにそれを増幅させたのが、先生が作ってくれた小道具であり、自分たちで用意した衣装であり、ひな壇で衣装を着て歌を歌うことであり、かっこいいBGMが流れることであり、体育館のステージの袖の暗闇であり、その暗闇で同じ幕に出る友達とコソコソ話したりすることだった。
同じような一週間を繰り返す日々から抜け出して、劇の練習をすることでそれが授業の代わりになる。僕にとって、座って静かに受ける授業よりも何倍も楽しかった。
おかしら4、王様1、暴走族6
僕が演じたどの役も今でも鮮明に覚えている。
台本という言葉を知ったのも学芸会が最初だったかもしれない。
学芸会を通して友達の今まで知らなかった一面が垣間見えたりもした。
今でも、何かステージを見に行った時、開演前のBGMが大きくなり客席全体が徐々に暗転し始めるあの瞬間、僕は静かに興奮している。
たとえそれが日曜日の夜だったとしても。
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