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Cul-de-sac の住人3 イザベルとふくろう


私はイザベル。お散歩大好き。
パパが言うには私はこの体として生まれてきて5か月が経っんだって。

この前の日曜日、パパとお散歩に行ったら知らないおばさんがパパに挨拶してきたの。
パパは私をそのおばさんに紹介して、”イザベル”っていう名前だよって教えてあげたの。そのおばさん、『男の子?女の子?』って聞いてきたんだけど、イザベルっていうお姫様みたいな名前を聞いて男の子って聞いてくるって、どういう神経してるのかしら? びっくりしちゃった。
でね、驚いたついでに言うとね、このおばさん、私のお隣に住んでいる人で、ママが監禁されているとか勝手に心配していたみたい。
ママはね、時々イライラすることもあるみたいだし、パパとちょっと喧嘩したりするけど、喧嘩するたびに壁に耳をつけてパパとママの話を聞いていたんだって。気持ち悪くない?
変なおばさんだよね。喧嘩くらいするじゃない。大きなお世話ってもんよ。

それにしても妄想が貧弱すぎて笑っちゃったわ。



ボクはどうやら人気者らしい。
ただ高い枝に止まっているだけなのに、たびたびボクを指さしてコソコソ話す人たちがいるんだ。
あ、また来た。犬の散歩のご夫婦が、すれ違うおばさんに、『あそこにフクロウがいるのよ』ってわざわざ教えてボクを指さした。そのおばさん、キョロキョロしてたけどようやくボクを見つけて、なんかとても喜んでた。フクロウという生き物を一度も見たことがないんだって。
望遠鏡も持ってなくて、どうせ輪郭しか見えてないくせに、そんなに喜べるってどういうことなんだ?
自慢じゃないけど、ボクはおばさんの顔、しっかり見えるよ。興味がないから見ないけどね(笑)。
そのおばさん、家に帰って旦那さんに『裏の森にフクロウがいるんだよ』って浮かれて話をしてたけど、ボクってそんなに特別なのかい?
ボクは特別扱いされても嬉しくないし、ここの住む鹿さんや蛇さんや、カエルさん、コヨーテさん、お花やコケさん、虫さん、たーくさん、ここに住んでるよ。ボクが止まっているこの木だって、そこのおばさんよりずっと先輩だし。ボクに限らずここに住むものたちは、そこのおばさんよりもずーっと色んなことを感じとって生きているってこと知らないのかな。人間って大事なことが全くわかってないみたい。表面的なことで一喜一憂してさ。

あ、また老夫婦がやってきた。ボクだけを特別扱いしないでほしいな。今度は望遠鏡を持ってきた。長く居座りそうだな。落ち着かないよ。僕は見世物じゃないんだ。寝たふりをしてやり過ごそう。

隣のおばさんは、ヨークシャーテリアのイザベルを撫でながら、しょーもない妄想がイザベルにばれてる気がして恥ずかしくなったんだって。


隣のおばさんより
イザベルよ、ありがとう。私を正気に戻してくれて。。。
ふくろうさんよ、君をぼんやりとしか見ることは出来なかったけど、丸いフォルムに心奪われてしまったの。ときめいてしまったの。そして次は望遠鏡持っていこうと心に決めてしまったの。浅はかでごめん。


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