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Mr.Children楽曲紹介③シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌

Mr.ChildrenのシングルCDの売上トップ5というと

1位:Tomorrow never knows
2位:名もなき詩
3位:innocent world
4位:シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌
5位:【es】~Theme of es~

となる訳なんですが、恐らく曲の知名度で行けば今回紹介する「シーソーゲーム〜勇敢な恋の歌」は売上1位の「Tomorrow never knows」にも負けてない気がします。

当時の彼らにしては珍しく、明るく少しバカっぽくポップに「愛だ!恋だ!!」と歌っていて、またシングル曲で「変声機みたいな吐息でイかせて野獣と化して」っていうフレーズが入る辺り90年代前半という時代を感じさせる楽曲です。

ライブでもカラオケでも盛り上がる事必至なアップテンポナンバーで知名度も申し分ない曲ですが、実はMr.Childrenのライブではあまり披露されていない事はご存知でしょうか?

1995年の夏に開催されるスタジアムツアーに向けてライブで盛り上がる曲として制作されましたが、その後1997年の活動休止直前のアリーナツアーの一部公演で披露されて以降は2007年の15周年ツアーまで10年もの間、日の目を見なくなります。ap bank fesでBank Bandがスキマスイッチと一緒に演奏してますが、これは除く。

その後ライブ定番曲になったかというとそうでもなくて2012年のap bank fes内でのミスチルのステージ(当時は20周年)、2017年の25周年ツアーとap bank fes、2022年の30周年ツアーとこれだけです。何とセトリに入った数は6回だけ。ライブツアーに限れば4回だけです。

因みに次のシングルに当たる「名もなき詩」はライブツアーだけでカウントしても10回以上披露されていますので、その差は歴然です。

そもそも何故10年もの間演奏されなかったのか?

桜井さんは15周年の時にステージで「歌詞が意味不明で歌うのが恥ずかしい」と語っていたようですが、僕個人的には、その期間でやっていたライブにそぐわなかった事と、桜井さんのライブに対するモチベーションが低かった事が関係しているんじゃないかと思っています。

90年代後半以降のMr.Childrenのライブというと、自分たちが表現したい事を表現するライブという感じで盛り上がる事は2の次という感じがしています。

それが象徴的に現れているのがベストアルバムをリリースしたタイミングで開催された「POPSAURUS 2001」。

ベストアルバムを引っ提げての集大成ツアーなので、盛り上がる人気曲はドカドカとやってくれそうな物ですが、序盤の3曲は「花」「I'll be」「ラララ」と渋めのバラードが続いて6曲目にしてやっとアップテンポな「星になれたら」、という感じ。

中盤になってくれば「ニシエヒガシエ」や「光の射す方へ」といったライブ定番曲も出てきますが、これも盛り上げるというより彼らの歴史を紐解いていく演出の流れによるものって感じです。

まあ、このツアーはそれこそが魅力なんですけどね。

アルバム「深海」や「BOLERO」以降のツアーは基本アルバムのその世界観を表現する為のライブで、桜井さん自身も結構尖っていて曲にもそれが現れていた頃なので、いわゆるおバカナンバーである「シーソーゲーム」は当時の雰囲気と全く合わないと思うんです。

今でこそ、ファンへの感謝を包み隠さず伝えるようになり、心の底からライブを楽しんでいる事が伝わってくる桜井さんですが、昔は尖っていてファンなんかすぐ離れていくと思っていたし売れた事への苦悩から「ライブが好きじゃなかった」と語っています。

「シーソーゲーム」はある種ファンとの掛け合い、コミュニケーションが一番の醍醐味とも言える曲です。でも、そんな好きじゃないライブで更に大事に思ってもないファンとのやり取りなんてやりたくなかったんじゃないかな?

でも、そこから年数が経って、桜井さんの病気による活動休止だったり、ap bankの活動だったり、子どもの成長だったり色んな経験を経て心境の変化がありました。

確かアルバム「HOME」ぐらいの時だったと思いましたが、「HEY!HEY!HEY!」に出演した時に桜井さんが「音楽をやるのが楽しくなってきた」と語っていたんですよね。

色々吹っ切れたのか、その近い時期の15周年ツアーで名曲盛り沢山のライブをやって、歌詞が恥ずかしいながらも「シーソーゲーム」を久しぶりに演奏して無理なく盛り上がって、喜んでる観客の姿を見て、よりライブというものを意識するようになりました。

それ以降のライブは、もちろんアルバムの世界観は壊さないようにしつつですが観客に楽しんでもらう事をより大事にするようになったんじゃないかな?と感じます。

「エソラ」や「fanfare」のようなライブのど真ん中を目掛けて投げたような曲が生まれたのも、こういった心境の変化からくるものでしょう。
「GIFT」で「今君に贈るよ。気にいるかなあ?受け取ってよ」と言う歌詞がありますが、まさに心境を代弁した言葉じゃないかなと。
アルバム「BOLERO」で「ファックする豚だ!」と叫んでいた頃とはえらい違いですよね。

とはいえ今でも「シーソーゲーム」はアルバムツアーのセトリに入ることは基本無いです。やっぱりコンセプトがあるライブには向かないのかなと。
ただ、アニバーサリーツアーのようなここぞという時には選ばれているので、個人的にはたまにしかやらないからこその特別感が感じられて良いなと思うんですよね。

頻発はしないとはいえ「シーソーゲーム」をライブでやれるようになった、音楽やライブを心から楽しめるようになった桜井さんを始めとするMr.Childrenのメンバー達。

彼らの半世紀への道はまだ始まったばかりです。


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