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線路草【センログサ】

通勤で使う駅の線路と線路の間、石ころだらけの場所に生えている草がある。私の並ぶ列からは何の植物かはわからないが、大葉のような感じに見える。春からこの路線を使い始めたのだが、気付いたらもう元気よくお日様を浴びていた。
一本だけなのに、その草のある所はとても明るい。緑が輝いて見えるのだ。草は、土があるのが視認できないくらい石ばかりの場所に生えているのに、どこ吹く風で一本天を見上げている。毎朝目にするわずかな緑に、私は励まされていた。

夏になり猛暑の日が続いている中、私が懸念していた事態が起こっている。容赦のない太陽の下であの草はしなびていたのだ。私はハンカチで汗を拭きながら、遠目で様子を伺っている。
駅員は水をあげないのだろうか、あげないだろう。あげに行こうにも線路を渡らねばならないし、あんなところで育てるメリットが何一つないのだから。しかし、私の他にもきっとあの草の生き様に見惚れている人もいるのではないか。あの草を見て、今日もがんばろうかと思えた人もいるのだと信じたい。

雨は一向に降らない。なので、私はあの草のために雨を願う。

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