魔闘剣紀 12

揃う

シュウイチ「と、言うわけなんだイー・マネ!あの本を見せくれ!」

イー・マネ「…やはりそうか…ならば、ロジードにも…ぶつぶつ…」

イー・マネはシュウイチに話を聞いた後も、
一人でぶつぶつとしゃべっていた。

ここは、マジットの城内である。
マジット城にはどんなものでも自由に出入りができる。
なぜそれが出来るのか?それは魔巻がそれを可能にしている。

城の中には、邪、悪、殺という魔巻が等間隔で貼ってある。
もし、マジットに悪意を持ったものが、ここに入ろうとすると、
それらの魔巻が、城への侵入を許さないからである。
なので、これらの魔巻はマジット領内の要所、要所に貼ってある。

イー・マネは、一通りぶつぶつ言い終わったあと、しばらく黙って、

イー・マネ「いいだろ!書庫に案内しよう、全員僕について。」

ヲレワ&ク・セェ「!?」

シュウイチ「いいっっやっっあたぁあああーーー!!!」
     「さすがイー・マネ!話がわっかるぅー!!」

ク・セェ「ほ、ホントにいいのか!?マジット王の許可などは??」

イー・マネ「うーん、そうだね、確かに普段なら、
      王に謁見してからの話だけど、今、王は不在なんだ。」

ヲレワ&ク・セェ「!?なんだってー!?」

イー・マネ「そして、三人の魔示もいないから、今城のことはすべて
      僕の判断で決めているんだ。」
     「あ、一応言っておくけど、
      間違いなく王もこの判断を下すよ、僕にはわかる。」

ヲレワ「さ、三人の魔示も不在!?そんなことまで話していいのか?」

それぞれの国は、選ばれた四人の、魔示、闘姿、剣使がいる。

それぞれの国で、選定方法が違う。

マジットは年に数回、魔示の力と知力を試される。
その成績の上位の中から、四人の魔示が選ばれる。

ファーリアは兵からの人気と、その実力が認められたものたちが、
お互いの闘気のみで戦い、その戦いの勝ち負けではなく、
戦ったもの同士が認め合ったものが、四人の闘姿になる。

ロジードは星帰の泉から選ばれる。
泉がどういう基準で選んでいるのかは不明だが、
一つだけわかっていることは、選ばれたものの
剣(道具)が泉に映し出される、と言うことだけである。

イー・マネ「…フッ、君たちはマジット…
      いや、このイー・マネのことを知らないようだな…」

ヲレワとク・セェはそりゃそうだろ、と思った瞬間、
突然、イー・マネがカンチョーのポーズを取った!

ヲレワ「!?あれは、カンチョー!?」

ク・セェ「…いや、確かにあれはカンチョーだが魔記を描いている!」

ヲレワ「なんだって!?」

シュウイチ「…」

突然の出来事で、二人が驚いて見ていると、ク・セェの予想通りに
イー・マネは水を描いた!
すると、どこからともなく水が集まり、それは、ヲレワの後方に向かって、
まるで、消防の放水の如く、すごいスピードで飛んでいった。

欺魔「ケ、ケツがぁあーーーーーーーー!?」

水が飛んで行った方向から、断末魔が聞こえてきた。

ヲレワ「!?今の声は?…それに、なんて力なんだ…」

ク・セェ「これが、イー・マネの力なのか?」

イー・マネ「無駄だ欺魔!たとえ魔巻を防ぐ魔記を使ったとしても、
      この僕を誤魔化すことはできない!」
     「さっさと帰って仲間に伝えておけ!」
     「このイー・マネの魔記は必ず相手のケツに命中するとな!」
     「…それとも、まだ受け足りなかったかな?」
     「そうだな…今度は火にしようかな?」

欺魔「火、ひぃー!それだけはご勘弁を!」

こちらからは、声しか聞こえなかったが、欺魔は逃げたようだった。
しばらくすると、マジット術師が三人ほどやってきた。
イー・マネは首を欺魔が逃げた方に振った。
それにマジット術師は頷いて、欺魔の後を追った。

シュウイチ「よっ!さすがイー・マネ!」

イー・マネ「なーに!それほどでもあるさ!」

シュウイチ&イー・マネ「はっはっは!」

イー・マネ「…ん?どうしたんだ、二人とも?」

ヲレワ「…カンチョーだ…」

イー・マネ「え!?」

ク・セェ「あ、ああ!間違いなくカンチョーだ!」

イー・マネ「カン…チョー?」

ヲレワ「ああ!そうさ!あんなにすごいカンチョーを
    俺は見たことがない!いや、あれこそが真のカンチョーなんだ!」

ク・セェ「その通りだヲレワ!まさに、カンチョーは
     イー・マネのためにあったのだ!!」

ヲレワ「!!そうだイー・マネ!これからお前のことを尊敬の意を込めて
    カン・チョーと呼ぶことにするよ!」

ク・セェ「!それはいい!いや、それしかない、ぜひそう呼ばしてくれ!」

イー・マネ「…え?」

そう言うと、二人はカンチョー、カンチョーと連呼し始める。
そしていつの間にか、シュウイチも混ざっていた。

イー・マネ「…カン・チョー…だと?」

カンチョーの連呼をやめない三人。

イー・マネ「…照れるじゃないか!」

ヲレワ&ク・セェ&シュウイチ「YEAH!パチパチ!」

こうして四人の絆は深まった。

イー・マネ「これが、この国ある読めない本だ。」

ク・セェ「これがそうか…ファーリアのものとも違うようだが?」

ヲレワ「シュウイチ、どうだ?何かわかるか?」

シュウイチ「えー、ちょっと待ってく…!?」

そう言いながら、ファーリアの本を取り出して、調べようとしたら、
マジットの本と、ファーリアの本が一つになった!

イー・マネ「!?これは!?」

ク・セェ「ほ、本が一つに!?」

ヲレワ「一体どうなっているんだ!?」

四人はこの事態に驚いていたが、
シュウイチが本を手に取り、本をめくりだす。
三人はそれを、ただただ見守っていた。

ク・セェ「…何かわかったか?」

シュウイチ「…いや、残念ながら…今のところ読めるところは…ん?」

そう言いながら、ページをめくっていたシュウイチの手が止まった。

ヲレワ「どうした?何かあったのか?」

シュウイチ「…ああ!このページ、全てじゃないけど読めるところが!」

イー・マネ「!!そこにはなんて書いてあるんだ!?」

そこに記されていたのは、

闘気+魔記
闘魔記(とうまき)

魔記+剣技
魔剣技(まけんぎ)

この技の正式名称は魔剣技だが、
イー・マネが初めて使った時に、
魔道技(まどうぎ)と名付けたので、
四人も魔道技と呼ぶことになる。

剣技+闘気
剣闘気

ク・セェ「…闘魔記、魔剣技、剣闘気?」

イー・マネ「聞いたことがないな…それに、
      それぞれのキを合わせて使うって?そんな無茶な!」

ヲレワ「…確かにそうかもしれないが、もしこれを会得できれば…」

イー・マネ「本気かヲレワ!?一つのキを覚えるのに、
      どれだけの修練が必要なのか、知らないわけじゃないだろ?」

ク・セェ「…まあ、そうだな、だがしかし!今はこの本の内容が、
     一部わかっただけでも、よしとしようじゃないか!」

シュウイチ「!!そうだよ!それにまだ全て読めないということは、
      ロジードにも同じ本があるってことじゃないかな?」

イー・マネ「…確かに、そうだな…よし、とりあえず推察はここまでにして
      これまでに分かったことを、マジット王に報告しよう!」
     「マジット王は早ければ、今日中までには戻られるだろう。」

ヲレワ「ああ、そうだな、そうしよう!」

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