魔闘剣紀 10

悪闘の撃退に成功したヲレワたち。
しかし、悪闘たちによって破壊された、畑、街、城、
そして、命。

大切なものが数多く奪われた。

そんな中、ファーリアを立て直すために、
生き残った者たちが、頑張っていた。
もちろん、ヲレワや四人の闘姿も、彼らはかなりの傷を負っていたが、
出来る範囲で、復旧作業を手伝っていた。

事件から、一週間ほどが過ぎた頃、
ファーリア王は、ヲレワと四人の闘姿を玉座に呼んだ。

ファーリア王「すまないな、この忙しい時に。」

ク・セェ「いえ、とんでもありません、それで、話というのは?」

ファーリア王「うむ、…知っての通り悪闘の狙いは、闘継の間であった。」
      「それは奴らの行動、発言からも明らかであった、…しかし」

ク・セェ「…それだけではなかったと?」

ヲレワ「!?それはどういうことだク・セェ!?」

ファーリア王「…やはり、闘姿のものは気づいておったか。」

ヲレワ「???」

ヲレワはキョロキョロと、四人の闘姿の顔見た。
すると、ファーリア王は玉座の椅子から本を取り出した。

ヲレワ「?この本は?…なんて書いてあるんだ、ク・セェ?」

ク・セェ「やはり、お前も読めないか…」

ヲレワ「?も?」

ク・シャミ「そう、この本は、誰も読むことが出来ないんだよ。」

ヲレワ「な、なんだって!?」

シャ・メン「そうだ!それにどこを探しても、この本に使われている
      文字や、規則性を見つけることも叶わなかった本だ。」

ホ・ウカ「簡単にいうと、謎だけがある本だ。」
    「だからこの本が重要なものかわからない。」
    「謎があるから重要とは限らないからな!」

ファーリア王「とは言っても、重要なものかもしれないとのことで、
       調査は進めていなかったが、保管はしていたのだ。」

ヲレワ「なるほど…」

ク・セェ「…ファーリア王、なぜ、悪闘の狙いは本だと思ったのですか?」
    「今の話からではわかりません。」

ファーリア王「ふむ…実は悪闘のが襲撃してくる前に、
       とある噂話を聞いたものがおってな。」
      「そのものの話によると、マジットには
       誰も読むことができない本があると言う。」
      「しかも、その本の文字、規則性は、
       どこを探しても見つからなかったと言う。」

ヲレワ「それはまさか!」

ファーリア王「おそらく、ファーリアと同じものであると思う。」

ク・セェ「しかし!単なる噂話ではないでしょうか?」

ファーリア王「もちろん、私もそう思った。」
      「しかし、こんな偶然があるだろうか?」

シャ・メン「確かにそうかもしれませんが…」

ファーリア王「それに、話はこれで終わりではない。」
      「実はこの噂話をしていたものが、
       悪闘襲撃前に行方不明になっていたのだ!」

ヲレワ&四人の闘姿「!?」

ホ・ウカ「なっていた…ということは…」

ファーリア王「察しがいいな、そう数日前に見つかったのだ、その男が。」
      「…しかし、残虐な拷問を受け見るも無残な姿で発見された」

ク・シャミ「…ひどい…」

ファーリア王「そうだな…しかし、なぜこの男は拷問を受けたのだろう?」
      「単なる噂話をしていただけでなぜこのような目に?」
      「これが、悪闘の狙いが本であったと確信させたのだ!」

ク・セェ「つまり、マジットにも同じ本があると?」

ファーリア王「ふむ、しかしそれだけではない。
       おそらく、ロジードにもあるのだろう。」
      「そして、それを奴らは知っていると言うことだ!」

シャ・メン「しかし、この本を集めて一体何をするつもりなんだ?」

ファーリア王「そこまでは分からないが、これを阻止するべきだと思う。」
      「そこで、話と言うのは、ヲレワ!ク・セェ!」

ヲレワ&ク・セェ「はっ!」

ファーリア王「お前たちは、この本を持って、マジットに向かい、
       マジットにある本を探しにいくのだ!」

ヲレワ&ク・セェ「!?」

ホ・ウカ「!?ファーリア王、それは…」

ク・シャミ「ええ!?いーな!いーな!」

シャ・メン「…王が決めたことなら。」

ヲレワとク・セェはお互い黙って見つめ合っていると

ファーリア王「案ずるな、お前たちならできる。」
      「今回、悪闘を撃退できたのは、二人の活躍が大きかった!」
      「それに、二人ならば任せられると心から思っている。」
      「どうか、頼みを聞いてもらえないだろうか?」

ヲレワとク・セェは敬礼のポーズを取り、

ヲレワ&ク・セェ「仰せの通りに!」

と答えた。
この時、ヲレワのポーズは完璧に決まった。

ファーリア王「では、任せたぞ二人とも!詳しい話はまた後日に。」

ヲレワ&ク・セェ「はっ!!」

その夜…

ク・セェ「こんな夜遅くに、二人だけで話たいとは…一体どうしたんだ?」

ヲレワ「…来てくれたか、ク・セェ、ありがとう。」

ク・セェ「どうしたんだ?改まったりして?」

ヲレワ「…どうしてもお前だけには、話しておきたいことがあってな…」

ク・セェ「…」

ヲレワ「…前に、悪闘たちは、いつの間にか闘気が使えるようになったが、
    その原因は、本人にもわからない、とのことだったよな?」

ク・セェ「ああ、その通りだ、それがどうかしたのか?」

ヲレワ「…俺は、その原因を知っている。」

ク・セェ「!?何を言っているだヲレワ!?」

ヲレワ「解導者だ。」

ク・セェ「…解導者?」

ヲレワ「そうだ…俺はその解導者の力で、闘気を得たんだ。」

ク・セェ「なんだって?」

ヲレワはあの日、二人が去った後から、二人に起こされるまでの間に
何があったのかをク・セェに話した。

ク・セェ「…どうしてこの話を俺に?」

ヲレワ「…どうしてだろうな…わからない。」
   「でも、そうしなければと思ったんだ。」

ク・セェ「フッ、そうか、よし!話はわかった!じゃあ、帰るか!」

ヲレワ「…え!?」

ク・セェ「ん?まだ話はあるのか?」

ヲレワ「い、いや、そんなことは…」

ク・セェ「じゃあいいじゃないか、ここに長居していても仕方ないだろ?」
    「それに明日も朝から復旧作業だ、早く休もう!」

ヲレワ「いや、確かにそうだけど、さっきの話を聞いて何もないのか?」

ク・セェ「解導者についてか?確かに脅威であるが、それについては
     そこまで問題視してはいないな。」

ヲレワ「…え?ど、どうして?」

ク・セェ「それは結局のところ、力を使うものにすべてが委ねられている、
     ということだからだ!」

ヲレワ「?」

ク・セェ「俺の力を例に挙げるとわかりやすいと思う。」
    「俺の肥溜めの力を使えば、痩せた田畑でも、
     すぐに作物を育てられる畑にできる。」

    「しかし、もし、肥溜めを作物に過剰に与え続けたらどうなる?」
    「作物は栄養の取り過ぎで腐り果てるだろう。」

    「それをもし、この島全体で行えば…
     この島は飢えに苦しむことになるだろう。」

    「つまり力とは、使うものによって、
     善にも悪にもなるということだ!」

    「しかし、気を付けなくてはいけないのは、力を使うものが、
     善意で使ったとしても、必ず結果が善になるとは限らない、
     ということ忘れてはならないことだ!」

    「もちろん、逆もまた然りである。
     まあこれは、なかなか理解はされないだろうがな。」

ヲレワ「…」

ク・セェ「まあ、つまり何が言いたいかと言うと、
     たとえ解導者が力を与えていたとしても、
     その力をどう使うかは本人次第だから、
     俺は解導者に対しては、そういったものがいる
     と言うくらいにしか、今は思わない、と言うことだ!」

ヲレワ「しかし…」

ク・セェ「それになヲレワ、お前が証明したじゃないか、それを!」

ヲレワ「え…」

ク・セェ「俺は誰よりも近くで見ていたから、
     誰よりも理解していると自負している!」

    「お前が、このファーリアのため戦っていたことを!」
    「そして、その闘気を俺たちの仲間や、
     国民を守るために使っていたことを、誰よりも知っている!」

    「だから、俺はお前を信じると決めたんだ!」
    「解導者という得体の知れないものから、闘気を得た?」
    「それがどうかしたのか?何が問題なんだ?」

ヲレワ「…ク・セェ…」

ク・セェ「何度でも言うぞヲレワ!俺はお前を信じる!
     それは自分自身で決めたことなんだ!」

ヲレワ「…ああ!ありがとうク・セェ!」

ク・セェ「よし!それじゃあ早く帰って寝よう!」

ヲレワ「そうだな!そうしよう!」

そう言って二人は、ファーリア城に戻っていった。

解導者「…良い友を持ったな、ヲレワ。」

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