魔闘剣紀 6

始まり

ヲレワ「うっ…うん?」

ク・セェ「!目が覚めたか?」

ヲレワは誰だ?と思いながら、相手に目を向ける。

ク・セェ「お前はロジードのものだろ、なぜ俺のことを知っている?」

ヲレワはク・セェの顔を見た時、気を失う前のことを思い出す。
この思い出すとは、記憶喪失の状態で目覚めてから、
ク・セェのまとう肥溜めの臭さで気を失うまでのことである。

ヲレワ「…ここは?」

ヲレワが目を覚ますと、起き上がった状態で辺りを見渡した。
ここは林の中、辺りを一通り見渡した後、
自分の体を見たり、動かしたりしながら、

ヲレワ「ここはどこだ…というより俺は誰だ?」
   「…ダメだ、何も思い出せない。」

一体何がどうなっているんだと思いながら、
後ろの方に目を向けると、剣が刺さっていた。

ヲレワは特に警戒することもなく、
剣を手に取り、地面から引き抜いた。
すると、夜石が白く光った。

ヲレワはその光に戸惑ったが、
それ以上に、この剣が自分の一部と感じたことに驚いた。
その時、ヲレワは確信(勘違い)した。

ヲレワ「…これは間違いない、俺は異世界転生したんだ!!!」
   「そうに違いない!俺は別の世界からやって来たんだ!」
   「だから記憶がないんだ!そうに違いない!」

ヲレワは駆け出した!そして、平野に出る。
そこには、見たこともない景色、建物、動物などが目に映り、
ヲレワは心躍らしていた。

するとそこに、

ク・セェ「そこのもの止まれえ!!」

ヲレワ「!?」

ヲレワは叫び声のする方を見ると、
何かを体にまといながら、自分の方に向かってくるのがわかった。

何だあれは、と思っていると、偶然にもク・セェの方から、
ヲレワに向かって風が流れた、

その瞬間

ヲレワ「うお!?くっせぇえええー!?」

ク・セェ「!?何!!?」

ヲレワはあまりの臭さに耐え切れず、その場に倒れこんだ。

ク・セェは足を緩やかに止めていったが、
他の二人はヲレワを挟むように近づいた。

シャ・メン「なんだこいつ?急に倒れやがったぞ?」

シャ・メン、土をまとう闘姿である。

ホ・ウカ「そんなことはどうでもいい、ク・セェ!こいつをどうする?」
    「ここで始末するか?」

ホ・ウカ、火をまとう闘姿である。

ク・セェ「いや、待ってくれ!こいつは俺の名を叫んでいた。」
    「詳しく話を聞きたいから、ファーリア城に連れて行こう。」

シャ・メン「確かにそうだな!」

ホ・ウカ「ああ!お前がいうなら、そうしよう!」

ク・セェ「ありがとう!二人とも!」

かくして、ヲレワはク・セェたちが移動手段に使っていた
馬車に担ぎ込まれ、現在にいたる。

ちなみに、馬を操っているのはシャ・メン、
馬車の中にいるのが、ク・セェ、ヲレワ、
馬車の後ろで追手がこないか見張っているのがホ・ウカである。

ヲレワは目が覚めるまでのことを、
思い出しながら考えていて黙っていると、

ク・セェにお前の名前は?と聞かれた。

ヲレワは、俺は…えー、と歯切れが悪く話していると、

ク・セェ「!!もしやと思っていたが…」
    「やはりヲレワか!久しぶりだな!」
    「まさかこんな形で再開するとはな!!」

ヲレワがキョトンとしていると、ク・セェが語りだした。

十年ほど前は、三カ国は対立こそ解消はされていなかったが、
民間レベルでは今より交流があり、引っ越しすることも可能だったので、
ヲレワ一家は一時的にファーリアに住んでいた。
その時に、ヲレワとク・セェは出会っていた。

その時の話を、懐かしみながら話終えたク・セェに、
ヲレワは、自分が記憶喪失で名前もわからないことを打ち明ける。
そして、自分が目覚めてから、ク・セェと出会うまでの話、
そして、肥溜めのあまりの臭さに叫んだのが、
たまたま、ク・セェになったことも話した。

ク・セェ「…なぜそこまで話した?」
    「すべて話したことで、今お前は危険な状態にあるぞ。」

ヲレワ「俺もバカじゃない、そんなこと分かっている。」
   「でも、ここで話を合わせたところで、俺には記憶がない。」
   「この世界の常識すら分からないのだから、いずれボロが出る。」
   「そうなった時に、何を言ってもどうにもならないと思ったからだ」

ク・セェ「…なるほどな、フッ、しかしまあ。」

ヲレワ「?何がおかしい?」

ク・セェ「いや、何、たまたま、叫んだ言葉を俺の名と勘違いしたことが
     恥ずかしくなってきてな!」

ヲレワ「…プッ、確かに(笑)」

二人はこらえきれず、大笑いする。
その様に、馬車の外にいる二人も笑っていた。

そして、城に着く間、三人で見張りと馬を操る者を交代で回しながら、
検問所を超え、城下町を過ぎ、ファーリア城門をくぐり、
ついにヲレワは、ファーリア城にやってきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?