魔闘剣紀 7

証明

ファーリア王「そのものか?」

ク・セェ「はい、そうです!」

ここは、ファーリア城の玉座の間。
そこにある椅子にファーリア王が座っており、
その後ろには、歴代のファーリア王の自画像が飾られていた。

ヲレワは、ク・セェが王に報告に行っている間に、
シャ・メンから、現ファーリア王が第92代目であることと、
この国の王は、もっとも国民に人気がある、
闘姿の中から選ばれることを、教えてもらっていた。

シャ・メンの話によると、今もっと人気があるのはク・セェだが、
ク・セェは、まだ闘姿として果たしたいことがあるとの理由で、
国王に即位していない、とのこと。

今ヲレワの前には、ク・セェ、シャ・メン、ホ・ウカが立っており、
その向かいに、ファーリア王が座っており、
ヲレワたちを挟むように、ファーリア兵たちが集まっていた。

集まった兵たちは皆、両膝をついて立って、頭を少し下げ、
腕時計で時間を確認する時のポーズを右手でやっている感じである。
左手は、宙ぶらりんのものもいれば、後ろに回しているものと、
様々である、これは王への、忠誠や敬礼や気をつけるの姿勢である。

ク・セェ「このものについて分かっていることは、」
    「先ほど申し上げた通りであるます。」

ファーリア王「ふむ、なるほど…さてどうしたものか…」

しばらく、沈黙が流れた後、

ク・セェ「恐れながら、申し上げます!」

そういうと、ク・セェは集まった兵たちと同じポーズを取り、

ク・セェ「すべての始まりは、私の勘違いから始まりました!」
    「このものに刑を科すのであれば、まず私に!」

ク・セェの発言に周りのものが驚いていると、

ホ・ウカ「いいえ、それこそ勘違いなのです!ファーリア王」

ク・セェに続いて、ホ・ウカも同じポーズを取りながら、

ホ・ウカ「ク・セェがどう勘違いしたとしても、」
    「このものを始末することは、私には出来ました!」
    「つまり、私に責任があるのです!」

ク・セェに続き、ホ・ウカも、二人の闘姿の発言に周りはざわつき始める。

シャ・メン「違うでしょぉ~」
     「何もかもが違う!」

そう言いながら、シャ・メンも二人と同じポーズを取る

シャ・メン「そもそも、ク・セェが勘違いしていたことは」
     「ここに来る前から分かっていたことです!」
     「それを知った上でファーリア城に連れていくことを
      決めたのは、私です!」
     「つまり、二人が何を言おうと、全て私に責任があるのです!」

ク・セェ、ホ・ウカ、シャ・メンの発言に、ついに周りは沈黙する。

ヲレワは、その状態に唖然として、
三人の方に目を向けると、三人とも笑っていた。
その様子を見てファーリア王は、フッ、と笑い、
そして、大きな声を出して笑い、そして、

ファーリア王「よかろう!三人の闘姿に免じて、そのものを不問とする!」

うおおおおおおおおおおおお!!!??

玉座の周りは、驚きと、歓喜の言葉に溢れた!

ファーリア風兵「あのヲレワというもの、
        ク・セェ殿にあそこまで言わせるとは…」

ファーリア水兵「それだけじゃない!ホ・ウカ殿やシャ・メン殿まで…」
       「ただものではないな!」

ファーリア鉄兵「確かにそれもそうだか、俺はやはりク・セェ殿が、
        あそこまで言い切るとこに凄さを感じるな!」

ファーリア水兵「確かにその通りだ!さすが次期ファーリア王に
        選ばれる闘姿であるよな!」

ファーリア風兵「ああ!ホントにそうだな!」

いつの間にか、周りはヲレワを歓迎する雰囲気となっており、
集まった兵たちから、

ヲレワ!ク・セェ!ヲレワ!ク・セェ!ヲレワ!ク・セェ!

シャ・メン!ホ・ウカ!シャ・メン!ホ・ウカ!シャ・メン!ホ・ウカ!

という掛け声が続いた。

ファーリア王「ただし!!」

ファーリア王の言葉に辺りは静まりかえる。

ファーリア王「条件がある。」

ク・セェ「はっ!何なりと。」

そう言うと、ク・セェはあのポーズを取った、
それとほぼ同時に、ヲレワ以外は、ク・セェに続いた。

ヲレワはこの状況に、俺もやった方がいいかなと思い、
見よう見まねでポーズを取った。
しかし、腕が左右逆のポーズになっていた。

ファーリア王「このもの、いや、ヲレワに闘気を習得させるのだ!」

ク・セェ「!?闘気を!?」

王の発言に、今度は兵だけでなく、闘姿の三人も驚きが隠せていなかった。

それもそのはず、今現在知られている常識として、

闘気は、ファーリアのものしか会得できないと思われていたからである。

闘気だけでなく、魔記もマジットのものしか、剣技もロジードのものしか
会得できないと思われていた。

しかし、実は魔記、闘気、剣技を会得するには、
そのぞれの土地で修練を積まなければ会得できないのでは?
という、仮説が出てきたのである。

つまり、いくらファーリア領内で、魔記や剣技の修練を積んでも、
魔記も剣技も会得できない、ということである。

魔記、闘気、剣技の修練法は、それぞれの国に知れ渡っている。
なので、そのぞれの国の、魔示、闘姿、剣使に
他の国の修練を行って、技を会得しようとしたが、それは叶わなかった。
これらのことがあったので、生まれた土地で、
会得できるものが決まる、と長い間思われていた。

しかし、約六年前、第67代目ファーリア王が記した日記が見つかった。
その日記の保存状態は悪く、ほとんどが朽ち果てていたが、
その中に、ファーリア出身でないものが、闘気を会得したという、
記述が見つかった。

真偽の確かめようはなかったが、歴代の王が意図せずに
このような内容を残すだろうか?

もしこれが本当であるならば、剣使が闘気を、魔示が闘気を得ることに、
そうなれば、三カ国のバランスが崩れ、最悪の事態を招くかもしれない。

そう考えた、第92代目ファーリア王は、
剣使、魔示の滞在は最大三日とし、
入国には必ず事前に伝えるように各国に伝え、
ファーリア出身でないものは、この令状の発令後三ヶ月いないに
出身国に帰ること、期限を過ぎたものは強制送還した。
(費用はファーリア持ち)
この時、ヲレワ一家もロジードへ帰っていった。

この仮説を知っているものは、
ファーリアでは、王と四人の闘姿だけである。

周りが騒いでいる中、ファーリア王とク・セェは黙って見つめ合い、

ク・セェ「仰せの通りに!」

と答え、王はそれを聞いて少し笑い

ファーリア王「では、頼むぞ!ク・セェ!」

と答えて、玉座の椅子に戻っていった。

それを最後まで見届けずに、

ク・セェ「イクゾー!ヲレワ!俺についてこい!」
    「シャ・メン!ホ・ウカ!ここは任せたぞ!」

シャ・メン&ホ・ウカ「あ、ああ」

二人は戸惑いながら返事をした。

それを聞くと、ク・セェは歩き出した。
ヲレワはその後に続いた。

玉座を後にする前に、ク・セェはファーリア兵に話しかける。

ク・セェ「シャミは今どこにいる?」

ファーリア風兵「はっ!ク・シャミ殿はク・セェ殿たちが戻った後」
       「ファーリア山に向かったとのことです!」

ク・セェ「ファーリア山か…ちょうどいいな。」
    「わかった、ありがとう!」

ファーリア風兵「いえ!とんでもありません!」

ク・セェ「よし!ではヲレワ、ファーリア山に向かうぞ!」

ヲレワ「ファーリア山?」

ク・セェ「そうだ!標高9041mの島で一番高い山だ!」
    「そこに俺の妹のシャミがいる!」

ヲレワ「俺に妹を紹介したいのはわかったが、
    闘気のことはいいのか?」

ク・セェ「はっはっは!案ずるな!俺の妹は風の闘姿だ!」

ヲレワ「!?」

ク・セェ「ヲレワ、ここに来るまでに、お前の剣技は見せてもらった。」
    「気づいているだろうが、ほぼ間違いなく風の剣使だと思う。」
    「そして、おそらく闘気も風である可能性が高いと考えた。」
    「だから、妹を紹介するついでに、風の闘気を会得する
     手助けを頼もうと思ってな!」

ヲレワ「闘気はついでかい!!」
   「…闘気ついては、ここにくるまでに話を聞いているから
    どれだけ大変か、それはわかっているつもりだ!」

ク・セェ「はっはっは!案外、心配性だなヲレワは!大丈夫だ!」
    「それに考えるのはシャミに会ってからでも遅くはない!」

ヲレワ「…まあ、そうだな、ク・セェが言うなら信じてみるか!」

ク・セェ「そのイキだ!ヲレワ!」

二人はそのままの足で、ファーリア城を後にし、
ファーリア山、山頂に向かった。

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