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ChatGPTとゼミをする|陰翳礼讃を共に読む


はじめに


世の中に生成AIが普及し始めて、どのように使っていくべきか多くの人が議論している。まだまだ黎明期ということもあり、その方針は一つに定まっていない。

自分も2月ごろからChatGPTに課金をし始めて可能性を模索しているところである。

その中で1つの可能性として見えてきたのが、本を一緒に読み、議論を交わすことである。いわゆるゼミのようなものの使いかたができないものかなと考えたのである。

ゼミをするには、ChatGPTに本を読んでもらわなければならない。著作権の問題が叫ばれている中、購入した本をPDF化して読みこませるのは気が引けたので、著作権フリーになっている青空文庫のものから題材を選ぶことにした。

青空文庫の中に、自分が大好きな本である谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』があったため、これをテーマにゼミを行うことにしてみた。

GPTに本を読ませる

まずやることとしては、ChatGPTに本を読んでもらわなければならない。青空文庫からZIPファイルをダウンロードして、ChatGPTにアップロードした。

アップロードを行うと、読み込むことはできるようだが、全文表示には対応していないようだった。そこで、全文の内容を理解してほしいというプロンプトにしたところ、これは上手くいったようである。

GPTに先生になってもらう

次に行ったのは、ゼミの先生としてこの会話をリードしてもらうことである。課題を出し、自分が答えを考える、その答えをGPTに評価してもらう。ざっとこの流れができればゼミとして成り立つのではないかと考えた。

また、GPTは「内容を理解している」と答えたものの、どこまで理解しているか怪しかったため、まずは内容の要約をさせて理解度を確かめた。

このプロンプトに対して得られた回答が下記の通りである。

要約についても、課題についても、本の内容をもとに作成しているようだったので、この課題について回答をすることにしてみた。『陰翳礼讃』を片手に、1,2,3の回答を行うのは結構大変だった。誰に言われるでもなく、自分で求めて課題に当たっているので、手を抜くのも抜かないのも自分次第である。頑張ってなんとか回答をひねり出した。


こうして振り返ってみると、もっと書きようはあったのではないかとも思えてくるが、一旦全て埋めたということでよしとしたい。

GPTに評価してもらう

回答を書いたら、フィードバックが欲しい。
最初のプロンプトで評価をしてほしいと書いてあるので、回答を書きこむとそれぞれに対しての評価が出てくる。やる気アップのために、「最初に褒めて」として、それから批判的思考で更問いをしてとプロンプトした。

この回答を見てみると、より自分の回答についての評価があってもよいのではないかと思った。「褒めて」と言っているので、いい評価として書いてもらっているが、より批判的思考に立たせて評価してもらってもよいのではないかと思った。深堀りという点で、更問いを出してもらったが、より最初の問題に焦点を当てるというプロンプトも考えられたかもしれない。

一旦は、この更なる問いについて考えてみたいと思った。

この回答は自分の中でも自信があった。デジタルの中での陰翳をどのように見出すのかという問いについては、頭を悩ましたが逆転の発想というか、エモい映像表現をしたい思うアーティストがこのようなことをしているなと思い上記のような回答を作った。

GPTにまとめてもらう

おおよそ議論も尽くされてきたと感じたところで、これまでの議論をまとめてもらった。

### ゼミレポート:「陰翳礼讃」における美の探求とその現代社会への適用

#### 1. 序章
本ゼミでは、谷崎潤一郎の著作「陰翳礼讃」を中心に、日本の伝統的な美意識とその現代社会への適用について議論を行った。このレポートでは、その議論の内容をまとめ、陰翳が持つ文化的・美学的意義、およびその現代への影響について探求する。

#### 2. 「陰翳礼讃」の要約
谷崎の「陰翳礼讃」は、日本の伝統的な美意識、特に陰翳(影の美)を賞賛する内容である。谷崎は、西洋化が進む中で失われつつある日本独自の美を再評価しようとした。彼は、日本家屋の暗さや、影を通じて見える美しさが、日本文化の繊細さを表していると論じる。

#### 3. 議論の内容
##### 3.1. 陰翳の文化的・美学的意義
生徒は、谷崎が陰翳を通じて日本の美意識を捉えようとした理由として、西洋化の進行に対する危機感を指摘した。陰翳は、物事を控えめに、しかし深く美しく見せる日本文化の象徴であり、古来からの日本文化を保護し、継承する意図があったと考察された。

##### 3.2. 西洋の美意識との違い
西洋文化と日本文化の美意識の違いについて、生徒は西洋文化が光を尊ぶのに対し、日本文化では陰翳に美を見出している点を指摘した。現代においても、この違いは継続しており、特にリラックスする空間においては、陰や暗さを大事にする考えが見られるとした。

##### 3.3. 現代社会への適用
生徒は、現代の建築やデザインにおいて、陰翳の美学を取り入れる方法として、ライティングの工夫を提案した。古い技術やスタイルの再評価を通じて、陰翳を再発見することが、現代技術の進展とのバランスを取る一つの方法であると論じた。

#### 4. デジタル技術と「陰翳」の関係
新しいデジタル技術が鮮明な映像を生み出す一方で、その明るさに対する反動として、陰翳を求める動きがあることが指摘された。特に、古いビデオカメラを使用することで、ノスタルジーや懐かしさを感じさせる映像作品が生まれている。これは、過去の技術を通じて現代の「陰翳」を探求する試みとして評価された。

#### 5. 結論
「陰翳礼讃」の探求は、単に過去の美意識の再評価に留まらず、現代社会と技術の中で新たな価値を見出すことにも繋がる。デジタル時代においても、人々は陰翳に美を見出し、それを通じて文化的アイデンティティや感情の深みを探求している。このゼミを通じて、谷崎潤一郎の見解が現代にも十分に適用可能であることが明らかになった。

このレポートは、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を基に、その美学的価値と現代社会への適用についての議論をまとめたものである。生徒の深い洞察と教授の指導の下、有意義な議論が展開された。

あとからの振り返り用として作っておくのは悪くないかもしれない。ただ、それ以上でもそれ以下でもない文章だなという印象を受けた。

GPTにも回答してもらう

自分が答えてばっかりなのもあれなので、先生(GPT)にも回答してもらうことにした。自分の回答に引っ張られるのも嫌だったので、「これまでの議論は忘れて先生なりの回答をしてください」とプロンプトした。

なんとも当たり障りのない回答ではある。GPTぽいというかそれらしいことがそれらしく書いてある言うような感じの印象を受けた。

自分が批判する形としてより更問いを行うという方法もあるのではないかと感じた。

さいごに

GPTとゼミをやってきた感想。

第一は結構疲れた。ゼミの運営と課題に答えるという2つを同時にやっているので、これまで経験していたゼミの2倍の労力がかかっている。何かの課題が与えられてそれに答えるというのは久しぶりだったというのもあるかもしれない。だからこそ能動的に自分で考えて答えを作るというのは、知的好奇心が刺激されて非常に楽しかった。

第二は、GPTによって気軽に思考する機会を得ることができることに感動した。こうしたゼミは大学の授業なり、社会人サークルの集まりなりでなければ実践ができない。時間もお金もかかる。これであれば、気軽にチャレンジができる。自分の好きな本から始められる。精度や思考時間はもちろん自分に寄ってしまうので、適切な指導が受けたければ時間とお金をかけるしかないかもしれないが、もっと気楽にできるものがあってもよいと思う。まさにそれがこのGPTでできるなと感じた。

第三に、もっと工夫の余地はあるなと感じた。回答をもらった後の評価のされ方だったり、先生の回答から自分が質問することだってできるはずで、より深く実践するというやり方もあるなと感じた。

生成AI以前は、こうしたコンピュータと議論するというのは難しかった。しかし、GPT始め、さまざまな生成AIモデルが誕生する中、自分がどうそれに向き合っていくのかというのが非常に問われていると感じた。ゼミというのは一つの手段であってよりAIと楽しく暮らしていくためには、頭をひねり続ける必要があるようだ。

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