蛮脳見聞録

 架空のカルトゲーム。2000年代初頭、PS2でひっそり発売。独特かつ尖り過ぎた内容で一部界隈をざわつかせ、2chでも度々スレッドがたつ。メーカーはインディペンデント系で、このソフトをリリースして1年経たずに倒産している。
 ジャンルとしてはRPGで、時代設定は2099年。舞台は北海道の最果ての地、架空の街「黒円市街」。かつては人間とロボット、アンドロイドが共存するスマートシティだった。オフィスビルやタワーマンション、遊園地、ショッピングモール、レトロな歓楽街。開発当初は人に溢れ、繁栄していたが80年代初頭にアンドロイドの生産、販売、所持が禁止されると街の経済を支えていたアンドロイド生産工場が撤退。基幹産業を失った町は、急速に寂れていき、近隣の自治体との合併が決定している。
 主人公は街の北部、海がほどちかい巨大団地群に住んでいる高校生三年生、須藤リク、男。シェンムーのように街を自由に周る。寒々として剣呑な雰囲気が漂っていて、分子の一つ一つに不穏さを帯びている。壊れて人を襲うロボット、違法なアンドロイドの集団、目的不明の捜査官、ジャンク品を押し売りする眼帯の男、そして街と同じ名のメタバース。
 親友の失踪から物語は始まり、須藤リクを操作して、行く手を邪魔する敵(ロボット、アンドロイド、サイボーグなど)を排除し街の謎に迫っていく。
独特なのは主人公がレベルを上げるほどに病み、狂っていくことである。はじまってすぐに強制イベントで右腕を失い、サイボーグ化したころから自分が別の自分へと変貌することへの不安に苦しむ。
 強くなればなるほどに、自我が壊れていくと感じ、誤魔化すためにアンドロイドなどを残酷な方法で殺す「必殺技」を習得していく。
 話を進めていくと、メタバース内に親友の人格データが存在することが判明する。後にリアル世界で親友の肉体は死体として発見される。しかし、メタバース内では会うことが出来、クリアに向けてアドバイスやアイテムを貰う。その、肉体から解放された様子を見て妙な嫉妬をする須藤リク。
 疑似オープンワールドになっていて、メインの他に豊富なサブクエストが用意されているが、そのどれもがどこか歪んでいて陰鬱。進めれば進めるほど、主人公が壊れていく展開はプレイヤーになんとも言えない不快さを与える一方、バトル自体は爽快感がある。このアンバランスさが魅力であり、怖さでもある。

 書けばキリがない上、グダグダしてきたのでこの辺にしておこう。私はこういった、不気味で陰鬱なSFの世界観が好き。しかし、世間のほとんどの人間には見向きもされないだろう。やや憂鬱だが、今晩はマグロの切り落とし。気持ちを切り替えて、白米とともに頬張って、消化したうえ排せつしようと思う。

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