ある日、木こりの男が泉のそばで木を切っていると、不意に鉄の斧を泉に落としてしまった。
 すると、泉から美しい金髪の女神が現れた。男は呆気にとられた。
「あなたが落とした斧はこの金の斧ですか?」
「いいや、違う」
「それでは、この銀の斧ですか?」
「それも違う」
 女神はにっこりと笑って言った。
「あなたは正直者です、すべて差し上げましょう」
 女神は木こりの男に金、銀、鉄の斧を渡し、泉に戻っていった。
 男は家にすべて持ち帰った。待っているのは、最近、シワの増えた妻。
 まじまじとその姿を見ながら、男は言った。
「森にある、泉へ行こう」
「何をしに行くんです」
 妻を強引に泉の前に案内すると、木こりの男は勢いよく妻を突き落とす。
 すると、泉から美しい金髪の女神が現れた。
「あなたが落とした奥様は、この若く美しい奥様ですか?」
「いいや、違う」
「それでは、この若い奥様ですか?」
「それも違う」
 女神はにっこりと笑って言った。
「あなたは正直者です、すべて差し上げましょう」
 女神は三人の妻を男に引き渡した。その日は、皆に料理をつくらせたり、酒のお酌をさせたりと、至れり尽くせり。早めに眠ってしまった。
 若く美しい妻が言った。
「正直、こんな中年なんて嫌だわ」
 それに、若い妻が続いた。
「私も。なんだかとても偉そうだし、気に障る」
「さて、どうしたものですかね」
 シワの増えた妻は寝息をたてる男を見て、ため息をつく。

 翌朝。木こりの男は手押し車の上で揺られていた。抵抗も虚しく、三人の妻の協力によって、泉に落とされた。すると、女神がでてくる。
「あなたが落としたのは、、、」
 その結果、若く美しい妻は若く美しい男と、若い妻は若い男と何処かへ去っていった。木こりの男は、シワの増えた妻と帰る他なかった。

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