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【詩】宵

服に纏わりついたお酒の匂い 
お会計終わりの店先で
まだまだ絶えない立ち話
酔の冷めない友人らが覗かせる
まだ知らなかった新しい一面

それは雨の夜だった
待ち合わせた居酒屋に着くなり
思い思いの乾杯、グラスの音。
何だって出来るさ、と卒業後の未来の話から
どこへ住もうか、と憧れの国を口々に。
恋人話も別れ話も様々に。
時計が一周した頃、また同じ話に戻る

ただひたすらに夢とうつつの狭間
この光景が少し面倒で けれどもどこか新鮮。
それはまるでドラマのワンシーンの
エキストラになれたよう

そういえばいつの間に
二十数年の時が流れたのだろう
かつて見たお酒のコマーシャル
あの頃の「大人」への過度な憧れは
今少しずつ現実味を帯び始めた

何でもない事で笑った。
時間なんて気にも留めずに。

終電が近づく。
立ち話の続きはいつになるだろう。

誰もいない駅のホーム。
街灯の射す道に人通りは無い。

最寄りのふた駅手前。
車内アナウンスだけが大きく響く車内で
ひとり静かに日をまたいだ

宵。

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