脱衣麻雀の思い出

 タイトルでもうおわかりかと思いますけど、麻雀論とか戦術論みたいな話は一切出てきません。そういった事を期待している方は、まあもう読んでいないとは思いますが、こんなものを読まずに有意義な記事の閲覧に人生を費やしてほしいと願っています。

 そんな胡散臭い挨拶から始まった今回は、見ての通り脱衣麻雀の思い出です。こんな話をする者の常として、自分がゲームセンターで脱衣麻雀をプレイするようになったのは中学生の頃だったはずです。不道徳ですね。当時の自分は麻雀のルールを「大体」把握した頃で、実際に遊んでみたいとウズウズしつつ、しかし周囲に麻雀の出来る友人がいない、そもそも友人自体が少ない、などの理由でウズウズ以外に出来る事がなかったのです。ウズウズ。
 人間相手が無理ならコンピュータ相手になるのは当然の話。といっても携帯ゲーム機は持っていないし、スマホなんて影も形もなかった時代。もちろん家庭用ゲームには麻雀ゲームが存在していましたが、麻雀を大人のやる遊びだと思っていた当時の自分は、親の見ている場所で麻雀をするなんて考えも及ばない事だったため、当然の帰結としてゲームセンターの脱衣麻雀に向かったのでした。ここまでが導入パート。

 当時中学からの帰り道に小さなゲームセンターがありました。小さくてボロいそこは、ゲームセンターというよりもむしろ胡散臭い謎の小屋。そのゲームセンターの片隅に脱衣麻雀の筐体はありました。学校帰りの中学生くらいしか寄り付かないような小屋の片隅に。
 当時は格闘ゲームの人気が高く、イマイチはっきりしない記憶ではみんな格闘ゲームに興じていたという事になってます。実際は知らん。少なくとも脱衣麻雀の台はいつも寂しく佇んでいました。きっと多感な中学生、脱衣麻雀に興じている姿を友人に見られたくない心理も作用していたのでしょう。いやあ、友人が少なくてよかったよかった!
 さて、まっとうな麻雀ソフトでしか遊んだことのない方はご存じないかもしれませんが、脱衣麻雀にはイカサマアイテムが多数存在しています。配牌から任意の牌を交換できたり、流局の際にラストチャンスを得たり、特定の役を作るのに有利な配牌が来たり。
 中でも便利に使っていたのが、リーチをかけた時に一発でアガリ牌を引けるリーチ棒。これさえあればリーチ後のイライラドキドキに悩まされることもありません。ビシャーン、バリバリバリバリ!雷みたいなカットインが入るのもステキ!これさえあればリーチすなわち勝ち確で、気分だけはもう麻雀上級者です。
 ところが、です。ところがここにとんでもない罠が待ち受けていたのです。などと言っているうちに、どうやら当時の自分が聴牌したようです。リーチ、いきます。

ビシャーン!!!バリバリバリバリ!!!

何なのこの爆音!みんなびっくりしてこっち見てるんですけど!?どうやらこの台、電源投入後最初の一回なのか一定時間以上放置された後かはわかりませんが、イカサマリーチ棒を使うと小屋中に響き渡るような爆音を轟かせるという、いたいけな中学生の羞恥心を全力で攻撃してくる仕様になっていたのです。そして先ほども言ったように、この脱衣麻雀は自分以外にプレイしている人を見かける事がほとんどない不人気ぶり。必然的にこの爆音リーチを轟かせるのは、ほとんど毎回自分の役割となっていたのです。

ビシャーン!!!バリバリバリバリ!!!

こっそり遊んでいるハズの脱衣麻雀で、毎回のように周囲の視線を集めていた日々でした。ひょっとしたら、当時あの店にいた人たちから「いつも脱衣麻雀やってるヤツ」と認識されていたかもしれませんね……なんだそれめっちゃ恥ずかしい。いや、当時も恥ずかしいと思ってたけど。

 最初に一番お気に入りのネタ(しかし面白いとは限らない)を持ってきてしまったので、あとはもう残りカスみたいな話しかありませんが、せっかくなので続けようと思います。
 いくつくらいの頃かハッキリしませんが、当時よく行っていた店でできた知人ら数名とゲームセンターに行き、脱衣麻雀で対戦やコンピュータ戦をしたり、あるいは格ゲーや音ゲーなどをしていた時代がありました。そこにあったのは、対戦ホットギミックシリーズの台だったと思います。
 恐らく対戦プレイで自分が勝った後だったと思いますが、そのため知人が隣で観ていたはずです。どうでもいい事ですが、知り合いに見られながら脱衣麻雀をするのはなんとなく居心地がよくありませんね。などと考えていたかは不明ですが、牌を切った直後に

「ロン!当た~り~~!」

 はい残念でした。前述した謎の居心地の悪さもありますし、さっさと席を立って帰りましょう。立ち上がり、ひょっとしたら一歩か二歩ほど進んだところでしょうか。
「まだ!まだだよ!」
 後ろから知人に呼び止められました。なんだかよくわかりませんが、見れば確かにゲームは続いています。何故だ?

「ドン!当た~リ~~チ!」

 本当のセリフは、どうやらこんな感じだったようです。そうです、振り込んでしまったと思ったのは、単なるコンピュータのリーチ宣言だったのです。
「なんだよ紛らわしい!」
 若干の気恥ずかしさを誤魔化しながら、再度着席します。

「ツモ!」

 コンピュータ爆速のアガリで着席した意味が微塵も存在しない!一瞬座り直しただけ!なんとも割り切れない気持ちでゲームセンターを後にしたのでした。

 最後に自分の体験談ではないネタをひとつ。二十歳前後によく利用していたゲームセンターは、小さいながらも台の状態が良好だと(仲間内で)評判のお店。友人とそこに行って、閉店間際まで格闘ゲームを楽しむ事も多々ありました。
 夕方ごろは近所の学校に通う高校生で賑わうそのゲームセンターも、さすがに閉店間際ともなれば閑散としたものですが、その頃になるとやってくる常連客がいました。その人は店長さんと仲が良いようで、よく二人仲良く並んで脱衣麻雀の対戦プレイをしていました。深夜のゲーセンで脱衣麻雀の台に仲良く並ぶおっさん二人というのは、ちょっとなかなかの光景ではありますが。
 その晩も、二人は仲良く対戦プレイを楽しんでいたようです。そして店内の別の場所では、友人がシューティングゲームに興じていました。友人曰く、その時はなかなか好調だったそうで、なかなかいいスコアが出るかもしれないと熱が入ります。すると

「リ~~チっすよせんぱぁい!」

 深夜のゲームセンターを彩るおっさんの声。どうやら白熱していたのは友人だけではなかった模様で、図らずも脱衣麻雀コンビはその叫び声によって友人へと精神攻撃を仕掛けてきました。一瞬調子を崩しかけるも、しかしその程度の精神攻撃に負けるような友人ではありません。どうにか持ち直してプレイを続行します。

「ほ~ぅら、脱げ脱げ!」

 悪夢再び。襲い掛かる第二波に屈してしまった友人の、ゲームクリアは儚く消えていったのだとか。

 以上、特に面白くも何ともない脱衣麻雀に関する昔話でした。ゲームセンターの片隅で、ひときわいかがわしい雰囲気を醸し出している脱衣麻雀。クレーンゲームやプリントシール機、メダルゲームなどに押されて見る機会も少なくなってしまったかもしれませんが、そんな片隅にも確かにドラマは存在していたのです。打ち切り確定レベルでしょーもないドラマですが。

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