見出し画像

いくぜ三連休で激混みの別府

フェリーに乗りたいから別府

これまで乗ったことない神戸ー大分のフェリー路線に乗りたかったのと、去年に泊まったお宿でいただいたリピーター向け割引券の期限が切れそうだったため、別府に行きたくなった。
三連休なら往復フェリーでイケる。最終日は朝に帰って一日のんびりで余裕。よし、このスケジュールで行こう。
今なら思う。連休を舐めるな。

仕事帰り、六甲アイランドからの旅立ち

定時。ドモホルンリンクルのコラーゲンが一滴一滴抽出されるのを見守るような仕事を切り上げ、急いで阪神御影駅へ向かう。ターミナル行きのバスに乗って、初めての六甲アイランドのフェリーターミナルへ。
来てみてびっくり。とにかく人が多い。ツアーの団体客や合宿の学生さんや、ファミリーや、謎客(わたし)など客層も幅広かった。

さんふらわあ ごーるど スタンダードルーム

さんふらわあ ごーるどは2007年就航と、さんふらわあ姉妹の中では最年長。部屋はとってもキレイに清掃されているが、ピチピチの妹たちに比べると古さは否めない。
そしてやっぱりレストランも大浴場も人だらけ。
常連さんが多いと見え、乗船・即・酒盛りをする団体さんが多かったのが印象的だ。あの域にたどり着きたい。

瀬戸内海を通るフェリーといえば夜の明石海峡大橋。

9時前くらいにやっとレストランの行列がマシになったので夕食。
ハイシーズンの金土(出発時間が遅い)の夕食は持ち込みにした方が良さげである。
夕食自体は閉店間際でも料理が売り切れているということもないし、すごくおいしかった。しゅうまいがおすすめ。

いきなり大分で最も行くべき場所へ

ザビエルさんの導きのままに

翌朝。着岸後、人の流れに乗せられるまま大分駅行きのバス(超満員)に乗り、駅前のドトールで1時間ばかりつぶしてから別府方面のバスへ。そのまま温泉へゴー…はせずにちょっと寄り道しよう。

動物を見たかったし、朝9時からやっててフェリー旅に良さそうだったので行ってみた。サイトの説明文にもある通り、猿山を展示している動物園ではなく、野生の猿がいる自然公園なのだ。
それってどういうことかというと、こういうことってワケ。

出会って5秒でおさる

園内モノレール駅の出口すぐにいる、おさる。
高崎山には檻も堀も網もない。そのへんにフツーにおさるがいる。

おさるにとって人間は、ただ餌場をウロウロしてるへんな動物

おさるといえば(元)大阪人としては一昔前の箕面を思い出す。さる=人の食べ物を狙って襲う、という偏見があったが、この高崎山のおさるは至って温厚だ。客からの餌やりは禁止されているため、おさるにとって客と餌がセットでないかんじ。
おさるに喧嘩を売ることになるのでじっと目を合わせないように、という注意事項もあり(田舎のヤンキーか。いや、田舎のヤンキーがおさるなのか)、ビビっていたが、基本人間に興味がないようだ。もちろん注意書きは守ろう。

ストーブついてないですけど。

寒い時期のおさる達はあまりアクティブじゃないが、冬毛がもふもふで可愛いし、身を寄せ合って団子を作っていて可愛い。春夏に生まれた子猿が離乳の時期になり母親から離れてよちよちうろうろしているのが可愛い。冬もいいもんだ。

珍しい白い模様のさる(7位くらいの子だったかな)

高崎山の特色の一つが職員さんの解説。客がいればずーっと喋ってくれるし距離が近いので直接話しかけて質問もできるっぽい。フレンドリーだ。
おさるの群れといえば最大のトピックはオスの順位のこと。職員さんがおさるの個体を見分けられて、あれが2位、3位、とスラスラ言えるのがすっごい。
「わたしは職員の中で下から2番目です」みたいなテッパンネタも絶対わろてしまう。

他にもニホンザルの生態を色々教えてくれる。
群れで1位のさるは便宜上「ボス」と呼ばれているが、ボスは群れを統制したりしない。ボスがいなくなっても全然困らないんだそうな。
それから群れのメスはボスのハーレムでもない。モテないやつはボスだろうがなんだろうが全然モテないという世知辛い現実。

背中に黒い模様の毛がある子が何匹かいて、そういう家系なのかと思ったら健康調査した個体の識別用に毛染めしてるんだそう。おさるは人間の匂いがつくと周りの仲間から嫌がられると言ってたけど毛染めの匂いはいいんだ。
ただ背中に白い毛のあった子は天然で珍しいらしい。でも毛はすぐ生え変わるとのこと。

廃墟ではないんだけど廃墟感

おさるの餌場は万寿寺というお寺の別院の中にある。いろいろ経緯があって、別院といってもお寺としては使われていないっぽい(万寿寺の本院は大分市にあります)
餌場の周りにはお堂や道場などの建物がいくつかあるが、人気がない古びた建物をおさるが占拠し、屋根の上やら庇の上やらでくつろいでいる様子はなんとなく「猿の惑星」っぽい廃墟美のような趣があった。人気がないといっても別に建物が朽ち果てているってわけじゃないので、あくまで「ふんいき」だけど。

どちらかというと時間潰し的な気持ちで行ったのだが、めちゃくちゃ楽しかったです高崎山自然動物園。別府で一番行くべき場所、といってもいい。向かいにあるうみたまごという水族館も行けばよかったなーと後で思った。

タイムスリップ・鉄輪温泉

その後バスに乗って別府市内の鉄輪温泉に向かう。以前気になっていた「レストラン三ツ星」さんでランチ。

この「日常的なハレの日のレストラン」感

オムライスを食べる。ケチャップライスではなく牛肉のデミグラスライスで、お肉とキノコの存在感があってとっても美味でした。うまうま。

とてもレトロ

レストランから近い白池地獄へ行ってみる。熱帯魚水族館があるところだ。地獄とは別に小さな池があり、グッピーや鯉やスッポンモドキという亀が泳いでいてじっと見てしまう。

「アマゾンの巨大魚を追え!」のフォント感

白池地獄は熱帯魚水族館も含めてすごく昭和レトロだ。
わざとらしい「レトロ風」ではなく、剥き身の「高度経済成長期の観光地」だ。
雰囲気としては、別府が一番イケイケだった昭和40〜50年代のままなんだろう。
ピラルク展示ではその当時の水槽がまだ現役で使われており、わざわざ外側に新しいガラスが設置してある。
(「このガラスは拡大鏡ではありません」とわざわざ但し書きがしてあってキュートだ)

そういう懐かしさは別府そのものに漂っている。
古い水槽に新しいガラスをはめるように、あえて昔のままにしている様子もあるが、なんとなく変えないでいるうちに令和まで来たのんきな空気の方が濃い。
温泉があり、宿泊施設があり、交通の便があり、珍しいものがあれば人がいっぱい観光にきた素朴な時代の面影がある。

白池地獄は「あえてレトロ」な自負が強いんだろうけど。

関東なら熱海とか鬼怒川とかこんな感じなんだろうか。その温泉地のことはよく知らないが、別府はまだまだ観光客が多い。多すぎる。混みすぎ。
一応データで見ると別府の観光客は減少傾向みたいだし、鉄輪温泉には廃業したまま放置されている大型観光ホテルが散見されるので、熱海・鬼怒川同様に決してウハウハではない。それでもこんなにもお客がいるとは思わなかった。さすがアフターコロナ。さすが三連休。あと春節もあるのか。とにかく舐めていたな…別府を。

日本人の団体旅行客もまだまだいるし、亀の井バスがガイドさん付きの周遊バスで作っている擬似団体旅行客もいるし、忘れちゃならないインバウンド客のご一行もいる。
昭和40〜50年代ってこんな様子だったんじゃないかな。当時からしたら規模はお話にならないほど小さくなったのかも知れないが。
私が小さい頃の90年代後半もまだまだこういう雰囲気だったっけ。

鉄輪温泉を歩いているとき、若い女の子グループの発した言葉が印象に残っている。
「なんか、観光してるー!って感じ!」
そうなんだよなあ。今すごく観光してる感じだ。
行くべきところ、見るべきもの、やるべきものが決まっている旅行。逆に今、こういう旅行ってやろうとしなきゃ出来ない気がして、実は悪くないかも。
だけど、うーん、でもやっぱり混みすぎだ。私は団旅行客を見に来たんじゃない。温泉に癒されに来たんだ。14時になったと同時にお宿に向かおう。

「サリーガーデンの宿 湯治柳屋」

これは2023年3月に泊まった時

シフォンケーキで有名な「サリーガーデン」さんが鉄輪の古い湯治宿をリノベーションしたお宿。セルフで地獄蒸しで自炊できる窯とキッチンと、とろりとした宿の雰囲気がすごく居心地が良くて二度目の投宿。

ここのお宿に泊まってから、温泉でくつろぐ快楽を知った。
建物は古いけれどよく清掃され、とても大切に使われている。お宿の人は親しみやすくて優しい。使いやすくて共用物のたくさんあるキッチン。ラウンジにはコーヒーやお茶と、お部屋に持ち帰って飾っておけるお花。民藝とコンテンポラリーが幸せに暮らしているようなアートいろいろ。
そういう細かな優しさとか気遣いが、いつでも自由に手にとって持ち帰れるところに置いてあるようなお宿なのだ。ザ・観光な地獄を楽しんだ後だけど、やっぱり私は自由がいいな。
温泉が気持ちいいのは当然だが、浴場の窓が大きく、光がいっぱい入ってきて明るいのも気に入っている。
チェックイン間もない昼下がりの時間、お湯と同じくらいたくさんの優しい光が注がれているお風呂に入っていると、「こんなに幸せになっていいものか」としみじみと思う。

地獄蒸しの食材は予約すれば準備してもらえる(これは2人前)
朝ごはんも美味しい。蒸し鶏サラダが好き。

ただやっぱり混んでいて、この日は満室だった模様。
離れ以外お子様は泊まれない大人用の宿なのだが、古い建物なので音や人の気配はどうしようもなく、前回のようにのびのびと心からくつろぐことはできなかった。
早く三度目の宿泊をしたいものである。次こそ私の本気のくつろぎを発揮したい。

地獄をめぐり、己の動物に気づく

翌朝はチェックアウトぎりぎりまでくつろいで、鬼石坊主地獄と鬼山地獄へ行った。地獄は三つしか行かなかったけれど、一番おすすめなのは鬼山地獄だ。なぜならば。

ワニがおる

鬼山地獄の別名は「ワニ地獄」。
地獄が観光資源として注目され始めた大正時代から鬼山地獄ではワニを飼っている。
なんでだよ、なんでワニなんだよ。
温泉がいっぱいモウモウ湧いてすごいから「よっしゃ見物料とろ」ってなるのはわかるけど、「あったかいしワニも飼お」ってなる???
なったんだなあ。
とにかく珍しいもの! よそとは違うもの! 目立つもの! を集めてガッポガッポや! という世はまさに大観光時代的な、熱いバイタリティを感じる。
ただ、儲け根性だけで続けられることじゃない。もし儲けだけなら、激動の時代を生き抜けないし、行き当たりばったりに色々な動物を飼って、とっくに収拾がつかなくなっていだろう。
ワニいっぽんで100年やっているんだから、鬼山地獄にはまぎれもないワニ愛があるに違いない。

こんなんもうモンハンに出てくるやつですやん

三代目イチロウでかすぎ。このデカさは写真や動画では伝わらないと思うので、是非とも実物を見に行ってほしい。よくできた作り物なのか疑ってしまったほど強そうで大きい。
三代目イチロウは平成4年生まれの32歳とのことなので、私より後輩である。
偉大な年下を見ると内心僻むものだが、三代目イチロウを見ても私はしっかり僻んだ。

73年後に天寿を全うするワニ(デカすぎて見切れ)

屋内には初代イチロウの剥製が。これも実物でないと迫力が伝わらないと思う。
あまりにも強大で絶対に勝てない動物を目の前にすると、本能的な恐怖がある。すでに死んでいる剥製にも関わらず、だ。こういう動物的恐怖はなかなか味わえるものではない。
しかし反面、動物的恐怖を楽しんでいる自分もいる。
動物界には食べられる側がわざわざ捕食者に近づいていく「捕食者検査」という謎の習性がしばしば見られるそうだが、人間がこういう巨大生物を見て「こわーいでも見たい」となるのもその一種なのだろうか?
ワニ園を3周もした私は、己の内なる動物に気づくのだった。

ワニにちょっかい出すとガチで殺られるが、
それより前に係員にガチで怒られるので安全(?)

ちなみにワニの餌付けはコロナ禍で中止されていたが、最近復活したようだ。
私が行った時はすでに終わっていたが、ワニが食べ残しをもぐもぐしているところは見られた。
なお餌はスーパーで売っている鶏肉だった。
それ以外何があるねんという感じだが、戦前の鬼山地獄では鳥のヒナやネズミなどの生き餌を与えていたらしい(「別府市民読本」別府市教育会 編, 昭和13)
ワイルドすぎるだろ。

絶景そして息切れ

鉄輪温泉からバス(混み混み)に乗りこむ。前にいた女の子たちが鬼滅の刃グッズを持っていたので「絶対同じ行き先だ」と思ったのに血の池地獄で降りて行かれた。絶対同じだと思ったのにハートブレイク…。
なぜならば、私が向かう先は鬼滅の刃の非公式聖地として知られる八幡竈門神社だからだ。
バスを降り、のどかな町を歩いて、鬼が作ったとされる九十九の石段を前に絶望する。
ここで引き返すわけには行かない。登った先に絶景があることを信じて登る…。

最の高

「竈門」「鬼の伝説」「神楽」の役が揃ってファンの間で聖地認定されている神社。神楽殿や御神木は残念ながら工事中だったけど、スコーンと晴れたこの日にこの景色が見られてよかった。

ちなみに鳥居の両隣にあるのは狛犬でも野球ボールでもない。日独戦争(第一次世界大戦)の戦勝記念に海軍関係者から奉納された機雷だ。
信管などを抜かれた本物なのか、模型なのかは調べてもわからなかったが、おそらく本物なんだろうな。
今は大分トリニータと鬼滅の刃推しの平和な竈門神社。
でも別府が昭和初期まで海軍の保養地だったこと、ふもとにある別府医療センターの前身が海軍病院だったこと、この神社が祀る武神の八幡神が海軍関係者の信仰を集めたこと、などをこの機雷が教えてくれるのだった。

洗われる芋の気持ち

鉄輪温泉に戻り、まだまだ帰りのフェリーまで時間があったのでひょうたん温泉に行く。砂湯と、でっかいお風呂が楽しい日帰り温泉施設だ。

基本的にはおすすめ。基本的には。

いや〜〜〜〜混んでた。
砂湯もお風呂もすごい人だらけだった。普段こんなに混んだお風呂に入ったことがないので、別府の人に言わせると「何甘えたこと言うとんねん」といったところかもしれない。
空いているか、ノーマルな混み具合であれば、すごく広々したスケールの大きなお風呂と露天風呂、気軽な砂風呂などが楽しめておすすめです!
でも団体旅行客が押し寄せてる時はやめとこ。

さよなら別府

別府北浜のトキハでお土産を買い、スタバで時間をつぶしてフェリーへ(つぶしすぎてギリギリになってしまった)
帰りは別府ー南港の「むらさき」だ。去年は「くれない」だったのでコンプリート。
「ごーるど」のご飯も美味しかったけど、「むらさき」も美味しい。カキフライと「りゅうきゅう」(大分の郷土料理、刺身のヅケ)がおすすめ。

混雑でハードな旅行だったが、大分にはまた来るつもりだ。
柳屋さんでゆっくりするぞ。あと、さんふらわあで開催予定らしい「昼のカジュアルクルーズ」にも参加するぞ。あとあと竹田市の秘湯という噂の長湯温泉にも行きたいぞ。
おそらく大分にはしばらくお世話になるだろう。

おまけの大分で買って美味しかったもの色々

とりかわサクサク揚げ

これは感動した。油っぽさがなく小魚のようにサクサク食べられるのに鶏皮のこくと唐揚げの味がある。超うまい。一袋450円と高めだから大事に食べようと思うのに秒で無くなってしまう宿命を背負っている。

謎のとり天せんべい

インパクトのあるふざけた名前、妙にあるネームバリュー、お土産売り場のセンター扱い、小ささ、個包装、と「あっしを職場のバラマキ土産にしてくだせえ」と言わんばかりのこやつ。そんなに言うならしてやるよ! と購入して配り、余ったものを食べてみたら結構美味しかった。おつまみになる味だった。
プレミアム的なせんべいも売っていたので次は鬼リピする。

荒城の月

別府じゃなく竹田市の銘菓だ。
カレー沢薫さんのエッセイで紹介されていたのを読んで食べたかった。トキハに売っていたので購入。が、エッセイで紹介されていたのは「但馬屋老舗」というお店のもので、私が買ったのは「川口自由堂」というお店のほうだったことに帰ってから気づいた。二つのお店で同じお菓子が…大人の事情ってやつかな。
とにかく「荒城の月」は、卵白と寒天でできた「淡雪」で「黄身あん」をくるんだおまんじゅうだ。鬼才・カレー沢薫氏の言葉をお借りすると「書類をスキャンしてPDFにした後、出力しろ」といった行為に限りなく近い代物(余談だがうちの会社は似た行為をマジでやっている)だけど、ちゃんと美味しい。
淡雪は羊羹に近いだけに粉のまんじゅう皮とはまったく違う。ちゅるんとして新感覚なんである。見た目もツヤツヤで可愛い。黄身あんも甘すぎなくて美味しい。
次は竹田市に行くつもりなので、「但馬屋老舗」の「荒城の月」も購入し、大人の事情に思いを馳せつつ食べ比べてみたい。


この記事が参加している募集

#旅のフォトアルバム

38,665件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?