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終の棲家はまだ遠い

家を買うことにした
離職や転職、転勤、立ち退きなどでこの20年間で7回引越しをした
その度にかかる敷金や礼金や引っ越し代、2年毎の更新料
そう、この更新料というのがやたら神経を逆なでする
北海道出身の私は更新料などという馬鹿げたシステムなどなかったので東京にやってきて更新料なるものを取られたときに憤慨した
システムなのでしょうがないとはいえ毎月10万で物件を借りたいと思ったら、だいたい9万の物件を借りなきゃ実質予算オーバーになるという罠
更新料を払いたくなければ馬鹿高い引っ越し代などを捻出せねばならないなど、どちらに転んでも金だけは出ていくという更新月の憎さ
しかも引っ越しをしようにも猫を受け入れてくれる部屋の数は少なく、今は2匹だけど3匹となるとまったくと言っていいほどなかった
今の住んでいるところは猫3匹を受け入れてくれた上しかも家賃が安い、というものすごいありがたい家だった
安いだけあって排水口から時たまドブ臭い匂いがしたりアリが部屋の中に入ってきたり隣に酒乱の人が引っ越してきたと思えば上に住むシングルマザーと大喧嘩して二人とも出ていったりと、気になるところはあれども駅から近くそれほど不満もなく住んでいた
だが木彫りを始めるようになって、それを生業として続けていくうち、部屋の隅っこで細々とやる範疇を超えてきた
1.5畳ぐらいのスペースに天井近くまてギュウギュウに詰め込まれた道具やら本やら作品やらが溢れ出て作業スペースを圧迫し始め、生活スペースも圧迫し始め、とうとう引っ越すしかないという結論に至った
とはいえまた賃貸となると今までより広くて高いところに引っ越しせざるを得ない
更新料もばかにならない
それならいっそ家を買おう、という結論になった

そうと決まれば早速家探しだ
当初、関東の住宅事情を把握できていなかった私は注文住宅を土地込みで3,000万で買おうと思っていた
都内から1時間以内、駅からも徒歩20分圏内で平屋でと夢を見ていた
結論から言うとそんな条件ではまったく見向きもされず完全に夢物語でしかなかった
あるにはあったが、1時間に2本しか電車が通らない駅で、常に家にいる私にとっては問題なかったが通勤を余儀なくされる夫からそれはちょっと、と却下された

中古でも平屋があれば購入したかったがなかったので、早々に駅から近い2階建てでできるだけ土地の広いところ、という条件に絞って探した
二軒目に内見した物件を夫が気に入った。階段の多い家だった。老後のことを考えると、不安にならざるを得ない家だった。私はゆっくり時間を掛けてもいいから他に良い物件を探せばいいと思っていたが、夫がここが良い、と早くも決めたそうな雰囲気を出した。人生最大の買い物を決めるのに早すぎる。駅から近くて比較的安価であった事もあり条件は良かった。階段だけがネックである。
今はいいけどいつかこの階段が牙を剥く時が来る。そうなった時にどうするか。
少しだけ悩んだが、予算内で買える完璧に理想に沿う物件を探し続けてストレスのある暮らしを続けるより、定年になったらこの物件を売って田舎で平屋に住めばいいのか、とそういう結論にたどり着いた。そんな感じで人生最大の買い物が決まった。そして最低あと1回の引っ越しが確定した。
終の棲家はまだまだ手に入りそうにない。

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