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第75回 日本史探究の実践報告-目標を明確にした授業づくりの実践-(「歴史総合」研究チーム)

 第75回は「日本史探究の実践報告」としてお話しいただきました。報告者のテーマは「歴史を学ぶ・歴史から学ぶ・歴史で学ぶ」。授業で身につけた知識をよりよい社会づくりに活かすこと、授業での取り組みを通じて思考力や判断力を身につけることを目指しているそうです。ポイントとしては、歴史総合→探究科目、と段階を踏んで学びを深めていくととらえ、歴史学習=暗記のイメージを変えるべく、導入(生徒たちの意識や思い込みを揺さぶる仕掛け)に力を入れているそうです。例えば、日本史探究の導入では、時代区分のために年代を覚え込んでいる生徒に、それに何の意味があるのか問いかけ、時代の変革を自分で考えることを意識させた結果、その後の授業でも自分で考えて理解しようとする生徒たちの様子が見られたそうです。また、探究科目の“型(問い→仮説→検証(証拠資料に基づく)→結論)”をつくって授業を進めやすくする工夫もされています。知識として答えられるものではなく、既存の価値観を揺さぶられるような問いの設定だけでなく、生徒自身に問いを立てさせることにも挑戦されているようでした。単元を貫く中心的な問いの妥当性や資料の使い方と問いの一貫性、仮説から結論に至るまでの変化を生徒自身がどう振り返るかなど課題も多いと分析されていました。

以下「私の授業理論」で議論
・中世や古代の歴史を生徒に自分事にさせるには?古代や中世の魅力を学ぶ意味は?→歴総に比べて現代に繋がっている感覚は少ないかもしれないが、同じ人間の営みなので共通する部分はある。そこにシンパシーを見出したり、時代や立場が違ったら人の行動様式もかわると気づくことで視野が広がり、他者理解にも繋がる。わからないからこそ考える楽しさを味わえる。
・単元を貫く問いをどう設定するか、抽象的な問いはある程度の時間数をかけて取り組めるが生徒はあまり追いかけたがらない。具体的問いに対する生徒の反応はよいがすぐに終わってしまう。→教科書で設定された章・節に基づいて単元を設定し、問いをつくっている。時代を貫くような、そしてそれが現代にも繋がるような問いがあればよい。
・生徒がつくった問いの評価はどうするのか。→問い一つ一つの良し悪しではなく、時間をおいてもう一度問いをつくらせ、各生徒がどれだけパワーアップしたかに基づいて評価したい。
・単元を貫く問いを設定することは、生徒が理解を深めるうえでもすごく大事だと気付いた。高校の現場では「単元で授業をつくる」がまだ普及しているとは言えない。教科書の章で切るよりも教師が学習内容を考えて単元を設定するのが本筋ではないか。生徒の文脈から現代的諸課題を考え、それに必要な歴史の事例を集めて単元を構成するなど。目指したい授業、やりたい内容から授業を組んでいく。
・単元の終わりごとに文章を書かせて文章力をつけることを目指している。生徒に問いかけながら進め、そうするなかで知識の要素も取り入れている。
・単元ごとに授業するうえで、授業のまとまりを意識できるのがよい。本時のまとめはよくするが、単元のまとめが意識されていない。こういう単元だったというまとめも必要。前と何が違うかな?という変化に視点を持っていくのもよい。
・歴史総合がどう繋がっているのかを意識することも意味がある。2年目に入り、歴総を学んだ上で探究の授業をどうするかが課題となると思う。
・「教科書で教える」を何年かこなして、チャレンジできそうなところでやってみるというスタイルでもよい。何年か終えると、自分のやりたい内容が見えてくる。
・授業をメタ的に考えようとしているところが素晴らしい。単元を意識しているところも。教科書を外れることで不安になる生徒もいるので、ここぞというところで先生の色を出せばいいのではないか。1時間1時間の授業の問いを並べたら単元を貫く問いだったんだと生徒にわかる、のように振り返る時間を持てたらよい。
・目標を明確にした授業づくりが素晴らしい。「揺さぶり」「自分で考える力」が印象的。

参加者17名


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