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第72回 学校教育の様々な場面におけるGISの活用(「地理総合」研究チーム)

第72回は「学校教育の様々な場面におけるGISの活用」として、様々なGISの活用事例を紹介していただきました。GISは簡単に操作できるものも紹介されていますが、生徒が統計データを集めてGISに反映させ、そこで出てくるエラーをどうクリアするか、試行錯誤を繰り返して情報活用能力をつけることを心がけているそうです。以下の実践例以外にも多くの素晴らしい取り組みが紹介されました。地理総合は2単位のためGIS実習も含めて完結するのはかなり無理があり、授業ではGISの概念や紹介に留め、総合的な探究の時間に実習を行うなど工夫されているということです。また、1人1台端末になり、いつでもどこでも学習できると考えて、授業は動画。生徒は教室やベランダ、階段など自分の好きな場所で動画を視聴し、Formsで基礎知識を確認、メインクエッションを授業中に先生に説明するというスタイルを実践されていて、手応えを感じられているようです。
◯「Google Earthプロジェクト」県内の様々な地域から生徒が集まる学校の特性をいかして、各生徒が地元紹介を行ったり、共同編集機能を利用して協働ワークを実施。学校の枠を超えて他校の生徒とMeetで対話しながら協働学習する取り組みも行っている。
◯「Googleストリートビュー」フィールドワークも積極的に行っている。「ストリートビュー」アプリで写真を撮影してアップロードすることでストリートビューが自作できる。校内など私有地を公開したい場合に有効。コロナ禍でオープンスクールができなかったときに学校の広報活動にも利用された。
◯「ひなたGIS」他校や近隣大学、行政と連携し、南海トラフ地震発生時の津波浸水想定区域について住民の年齢や避難施設の有無などさまざまな観点から分析。防災学習を行った。
◯「ArcGIS Pro」専門的な取り組みも行う。全寮制の学校なので、隔週で夜間(19:00〜20:00)に教養講座を実施。例えば生物の先生と教科横断で県内に生息する希少生物サンショウウオ分布マップをつくるなど生徒自らデータを収集・整理して地図を作成した。

―以下議論―
・授業への思い。GISを通して何を学んでほしいか?→GISの操作方法だけを習得させたいわけではない。データサイエンスも話題になり、いろんな試行錯誤をして、こういう場面ではこのツールが使えるなど情報活用能力を身につけてほしい。
・生徒が調べたことを表現する方法はいろいろあるが、ウェブサイトで表現するよさは?→一般公開できる。生徒は一般公開を前提で取り組むので著作権などリテラシーの部分も気にしなければならない。今後社会に出たときもウェブ上のデザインは必要になってくるのでそれを体験させたい。
・どういう仕掛けをしたときに生徒は感動・発見しているか?→熱帯地域の土壌(板書では“赤”と表現)がこういう赤色なのかと発見したり、防災学習などで自分ごと(海面が何メートル上昇すると自宅が水没する)になると驚いている。フィールドワークとGISの往還(例えば、GISでは避難所しか確認できないが中学時代のフィールドワークでこの前に貯木場があったはず。浸水時は危険かもしれない)が新しい発見を生み出しているようだ。
・ArcGISはデータ整理がとにかく大変で根気のいる作業。地図の方に目がいってしまいがちだが、生徒たちにはデータを意識させて、どういう情報でうまくいくか、どうしてこのデータではうまくいかないのかを考えさせることも大事。
・授業時間内でフィールドワークは時間的に可能なのか?→他教科の先生も理解があって、前後の時間をもらえたり、一緒にフィールドワークに出たりする。時間を提供してくれた英語の先生はそこで感じたことを1分間スピーチ、国語の先生は江戸時代の人の気持ちになって一句詠むなど課題を与えて教科横断的に取り組むことができる。
・教室外での授業は学校として抵抗はないのか?→学校の特殊性かと思うが、公民の先生がグラウンドで車座になって哲学対話をしたり、授業を教室外で進めていくのは普通。
・データの加工が大変だから、情報や数学の統計の中で加工したものを地理で扱うことができないか、教科横断しやすい学校の文化をどう築いていくか。実践したカリキュラムは継承されていくか。→“探究する学校”と開校当初からイメージが共有されている。現在は個人で実践している部分が多く、カリキュラムの継承は課題。
・GISは見えるもの。社会科が目指すのは目に見えない社会問題。見えない問いにどうアプローチしていくのか。
・生徒の情報スキルはどのように育成しているのか?→生徒は探究活動を積極的にする学校という意識で入学。1〜2年目にフィールドワーク→3〜4年目にデータ分析というサイクルになっている。データ活用の際にエラーは頻発するがそれも含めて体験させたい。
(参加者11人)

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