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Liella!3rdライブ感想……曲弱い問題の解決と、アニメ本編問題の未解決

『ラブライブ!スーパースター!! Liella! 3rd LoveLive! Tour ~WE WILL!!~』愛知公演Day.2を観に行った。一般発売で購入したこともあり座席は後方だったが、前回参戦した1st追加公演(東京ガーデンシアター)の約半分のキャパだったこともあり、距離的にはほぼ問題なく楽しめた。後方でも遠すぎないのが地方公演の良いところである。

 感想については1年前と比べて楽しめるようになったという伊達ちゃんの心の成長や、懸念していた2期生も1期との実力差を全く感じずレベルの高いパフォーマンスを見せてくれたこと、ウィーンの強キャラ感を上手く再現出来ていた結那さんなど、言いたいことはたくさんあるのだが、『ラブライブ!』のコンセプトである「アニメとリアルのリンク」に限定し、アニメ放送中に言われ続けた「曲弱い問題」「本編の諸問題」が解決したのかについてのみ私見を述べる。

1.曲弱い問題の解決

 今夏のアニメ2期放送中、『Go!! リスタート』『ビタミンSUMMER!』『Chance Day, Chance Way!』などの劇中歌が軒並み「曲が弱い」と言われ続けてきた。一応説明しておくと、これまでの『ラブライブ!』シリーズは、仮にアニメ本編の内容が微妙だったとしても、終盤のライブシーンで「強い曲」を満を持して披露することで「ザ・チャラです」にしてきた過去を持つ(無印のスノハレが最たる例)。言い換えれば楽曲一つでアニメの評価が左右されてしまうコンテンツでもあり、スパスタ2期はそれが悪い方に働いてしまうことが何度もあった。

 これに関しては今回のライブを経て概ね解決したと言って良いだろう。特に『ビタミンSUMMER!』『Chance Day, Chance Way!』は、アニメで聴いた時はあまり良いとは思わなかったが、ライブでの盛り上がりは半端なく、「強い曲」に転じたと思う。『Sing! Shine! Smile!』は元から良曲だと思っていたが、それに加えステージの再現度が完璧で、ラブライブ!東京予選の緊張感と楽しむ気持ちがしっかり伝わってきた。スパスタの楽曲はライブで化ける。別にそれでも良いじゃない。

2.アニメ本編問題の未解決

 楽曲にステージ演出、それらに乗っかるキャストのパフォーマンスも完璧で、全体的に最高のライブだったからこそ「あと一歩」の部分を言いたくなる。そこはお許しいただきたい。唯一の問題点「アニメ本編問題」である。

 これもあえて説明すると、アニメ放送後に開催されるライブは、幕間にアニメ本編の総集編映像が流れる。その直後に衣装チェンジしたキャストが楽曲を披露する。これは、アニメ本編からライブパフォーマンスまでをセットにした「一つの物語の構成」であることを意味している。これによりアニメ本編の内容が再評価されることも往々にしてあった。『サンシャイン!!』1期13話の5分以上の寸劇が最たる例である。

 今回の場合は(1)3話総集編からの『Go!! リスタート』、(2)4・6話総集編からの『ビタミンSUMMER!』、(3)10話総集編からの『Sing! Shine! Smile!』、(4)11・12話総集編からの『未来の音が聴こえる』が該当する。

 (1)(2)はアニメ本編も元々良い話だったので何の問題も無かった(ただ四季メイで拍手したのは大袈裟な気もするが……)。問題は(3)(4)である。

 (4)から説明する。幕間映像は「留学問題」、その後のライブは「ラブライブ!本選」の話であり、あまり繋がりがあるとは考えづらい。確かにメンバーにとっては「ラブライブ!で優勝した上でかのんを海外に送り出したい」という強い意思はあったので、繋がりもあるにはある。しかし、本選に向けた準備期間のシーンをほぼカットしていることもあり、アニメ本編とリアルライブを繋げた「物語の構成」としては上手く機能していなかったようにも見受けられた。

 そして一番言いたいのは(3)である。『Sing! Shine! Smile!』に至る経緯をほとんど説明できておらず、とりわけ賛否両論だった「クゥすみ」や「1年生の実力問題」が再評価されたとは言い難い
 まずは経緯を振り返ろう。

【9話】
(1)初の東京大会突破に向け、「強敵ウィーン問題」と「1年生の実力問題」が浮き彫りになる
(2)「可可の帰国問題」を唯一知るすみれが「勝つために1年生排除」を提案
(3)1年生は悩んだ末に賛成を決意するも、可可が止めに入る
(4)すみれが可可に想いを打ち明け、帰国問題も全メンバーにばらす
(5)可可はすみれを抱擁し「大嫌いで大好きです」

【10話】
(6)9人の一体感を高めるために東京大会披露曲の作詞・作曲・振付・衣装デザインを1・2年の共同作業で行う
(7)リモート会見でのウィーンの挑発、かのんは彼女のスタンスに疑問を抱く
(8)かのんの奏でるメロディーで全メンバーに創作意欲が沸き、楽曲完成
(9)東京大会当日。先にウィーンが披露するもかのん「本当の歌じゃない」
(10)Liella!が『Sing! Shine! Smile!』を披露

 9・10話を通して「一つの物語」になっていることは明白。特に2期序盤から言い続けてきた「1年生の実力問題」を10話でようやく帰結させるという「積み重ねの感動」が醍醐味だと思っている。
 そもそも1年生にはきな子の作詞、メイのピアノなど創作面で強いメンバーが2人も居る。そして以前から密かにスクールアイドルの振りコピをしていた四季なら振付を思いつくかもしれない。1年生の実力問題をどうするかではなく「出来ないことより出来ることに目を向けて」(©楠木ともり)、各々の長所を伸ばす方向にシフトした結果生まれたのが『Sing! Shine! Smile!』なのだ。
 よって、東京大会の勝因は楽曲の力が最も大きく、「9人が協力して楽曲を作ったことにより一体感が芽生え、それがパフォーマンスにも繋がった」は副次的に生み出されたものに過ぎないと個人的には解釈している。

 しかし、ライブの幕間映像は「1年生の実力問題」や「帰国問題(クゥすみ)」を全カットし、(7)以降しか流れなかったのである。クゥすみはそれこそ実力問題の副次的なものであるからカットは妥当だとしても、肝心の実力問題をカットしたことで「1年生の成長物語」にはなっておらず、「9人で曲作って力を合わせたら強敵ウィーンに勝ちました」くらいの意味合いしか持たなくなってしまったのである。アニメとライブを繋げる物語としては1年生の存在感が薄くなってしまったかなと感じてしまう。

 結局、サンシャインの5分寸劇の時みたいに、アニメ本編の出来をライブで再評価させようという運営の意識は感じられず、「批判意見の多いシーンをまるごとカットすることで逃げた」のかもしれない。ただそれではアニメの失敗を公式が認めてしまったことにもなってしまう。

3.結果、『ラブライブ!』も閉じコン

 長くなってしまったので強引に結論に入る。以上の問題点は、アニメ全話を視聴済みであれば何の問題も無いのである。ただ、ライブの構成だけを考えた時に説明やフォローが足りないかなと思うだけで。早い話が、前回も触れた「閉じコン」に、あの社会現象にまでなった『ラブライブ!』もなってしまったということである。閉じコンというのは要するに、村の中だけで盛り上がり、新規は付きづらくなってしまったということである。こうなってくると先細りはいずれ訪れるので危機感を抱かなければならない一方で、閉じコンには閉じコンの良さもあるので何とも言えない。

 ただライブは間違いなく最高だったので、3rdツアーの残りの公演、迷っている方は是非行ってみることをお勧めする。ちなみに配信は今回の愛知を含め、一部実施しないそうなのでご注意を。

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