#9 Kiamaからの学内上映会編【オーストラリア海外研修】

出国前から、やりたいことリストに載っていた一つ。
通うことになる大学には、映画館があるらしい。
学内に映画館があるだと!?これは行かずしてどうする。
そんなんで、学内のショップで映画のチケットを購入。お値段、6オーストラリアドル。当時で約600円。安くてハッピー。

前回、ぼっちになりながらも一日を楽しんだ私。
その次の日の放課後、友達たちがこれから観光地Kiama(カヤマ)に行くとのこと。
「一緒に行く?」とまさかのお誘い。
本音をいうと、めちゃくちゃに嬉しかったです。
行きたいと思っていたけど、時間もなくて諦めていた場所でした。
それに、ぼっちで過ごした日の翌日だったからなおさら……。
しかし、その日は楽しみにしていた映画の日。
でも、友達も早めに帰らないといけないからと時間を計算してくれ。
夜の上映時間には間に合いそうということで、ついていくことになりました。
誘ってくれてありがとー!!
てなわけで、この日は大学→Kiama→大学に戻る、と、なかなかのハードスケジュールでした。

Kiama

この観光地は、オーストラリアに来てから知りました。
その見どころは……ずばり、「ブロウホール(Blowhole)」!
電車でKiama駅まで向かい、降りて道を歩きます。
海が近づくにつれ、強風も強風。本当に立っていられないほど。
しかし、実際にその場所に来て感動。
波の音がして、からっぽの穴から水が噴き出す!!

ジャッパーン!!


ご覧の通り、画像を見てもらった方が早いですね。
詳しいことはわかりませんが、激しい波が、打ちつけられることによって岩の間を豪速球のごとく昇ってくるようです。むしろ、波によって削られた岩なのでしょうか?
波の音と、くるぞというワクワク感。三十秒に一回くらいの早さで湧きあがるのですが、永遠に見てられます。次は大きいのがくるんじゃないかと、カメラをずっと構えていました。
一度この滞在中にKiamaに来たことがある友達の一人も、「前回はこんなに噴き出してなかった」と驚いていました。もしかしたら、タイミングが良かったのかもしれません。
近くに少しだけ岩を登れるスポットがあったのですが、恐怖心によりもちろん遠慮しました。
それぐらい風が強かったんですよ、本当に。
いくらでも見ていられる絶景でしたが、何時間も居座るわけにもいかないので、移動します。
スーベニアショップで、記念コインとマグネット付きのクリップを買いました。
他にも、ポストカードがたくさん売っていました。ピンとくるものがなかったので買わなかったのですが、またいつかここに来ることがあったら、買っているかもですね。
大満足のまま、先程の友達が「近くに絶景スポットがある」というので向かいます。
目の前にそびえたつ坂。高い坂。向こう側が見えないほどの坂。
この日は無事に筋肉痛です。
でも、頂上に来たときの景色は、達成感は、目に来るものがあります。
私は今まで潮干狩りでしか海に行ったことがなかったので、こうして上から眺めるなんて初めてでした。
海がこんなにきれいだなんて、もっと早く知りたかったです。その後は電車の時間までのんびり。色々お店を見たり、ベンチに座って休憩したり。観光旅行だと、こんなにゆっくりしている暇はないと思います。これだけは海外研修、もとい留学で訪れる者の特権です。

さて、そろそろ帰ろうか。
いや、私にとってはこれからが今日の第二幕!
ずっと楽しみにしていた映画です。
しかし、このときはまさかあんな目に合うとは、みじんも思っていませんでした……。

降ろしてくれ

電車から友達の一人が、途中の駅で降ります。
三人になった私たちは、大学の最寄り駅までガタンゴトン。
一人はその先まで電車に乗っているとのこと。つまり、そこで降りるのは私ともう一人の友達。ちなみに、先程から何回も出ている「Kiamaに行ったことがある子」です。せっかくなので、Aちゃんと呼びましょう。イニシャルではないです。
さあ次が目的の駅。私とAちゃんは、残る子に手を振って、席を立ちあがります。ちょうど電車がホームに滑り込んだときでした。
このとき私たちは、電車の二階席にいました。オーストラリアの電車って、二階建てなんです。
そこで私たちが階段を降りようとしたそのとき。
大量の人々がガーッと乗り込んできて、階段を上がってくる!
ちょ、ちょっと待って、降りたいんですけど。そう思っても、列が途切れることはなく、完全に階段前で足踏み状態。
今思えば、ちゃんと降ります!って言えばよかったんですよね……。でも、英語でこの状況の「降ります!」は、何て言うんでしょうか。
とにかく、みなさんは電車がホームに着いて停止する前に、階段を降りときましょう。ドアの前でスタンバってましょう。
日本に電車の階層の概念はないので、なかなか苦労しました……。
話を戻し。お察しの通り、私とAちゃんはまったく前に進めず。列が途切れ、やっと階段を下りたところで、電車のドアが閉まりました。
二人そろって、顔を見合わせ、軽く絶望。
私の脳裏には、映画の二文字がよぎります。
え……これ、映画間に合うの?

私とAちゃんはとりあえず、残っていた子に、降りられなかった報告をします。そりゃ、え、なんでいるの!?ってなりますよね。
そして、もう一回階段を下りて、ドア前で待機。
これはもう、次の駅で降りるしかありません。
なのに。
全然停まらないじゃん!!景色どんどん流れていくじゃん!!
路線的に二本通っているので、駅区間が長いわけではありません。
ただ、この電車の、停まる駅区間が長すぎるのです。
日本でいうなら、準急くらいの感覚です。
もちろん、それより遥かに長時間なんですけど。
ますます不安になる。一刻も早く戻らないといけないのに、最寄り駅がどんどん遠ざかっていく。
一旦落ち着くか、とあらかじめ買っていた今日の夜ご飯、サンドイッチをもぐもぐ。
これはもう正直、間に合うことを願うしかありません。
私はAちゃんにいわれて、最寄り駅に戻ったあとのバスの時間を調べました。
やっと駅に停まって、今度は急いで降ります。
一回、バスで向かうことも検討しましたが、時間的には、次の電車の方が早かったので。
ホームを移動して、反対向きの電車が来るのを待ちます。
滑り込んできた電車に乗ると、腕時計とにらめっこをしながら、そわそわする心をなんとか落ち着けました。

夜の学校

結果から言うと、45分前に大学に着くことができました。
初めて乗るバスで、全く知らないところに降ろされたときは焦りましたが、スマホ頼りに歩いていると、見知った道に出ました。なんと、映画館となるホールの、すぐ近くでした。
間に合ったことに心から安堵し、まだ時間は早いですが、ホールに向かいます。
……と、あれ、誰もいない?
45分後には映画が始まるというのに、エントランスには誰もいない。ましてや、人の気配がない。
これ、本当に今日だよね……?と、何度もチケットを確認します。
うん、合っている。
もしかしたら、これから大量に来るのかも。
それでも不安なので、ホールのすぐ近くのカフェテリアで待機することにしました。ここに座っていれば、ちょうどホールの入口が見える位置です。
昼間は座る場所がないほどあんなに賑わっているカフェテリアなのに、このときは人っ子一人いませんでした。途中、絶対年上の男性が、右から出てきて、奥へと歩いていくだけでした。
一応、近くにある学内のBARから音楽は聞こえるのですが……。
いつもと違う学内の雰囲気に、私は震え上がりました。知らない異国の地ならなおさら。
人がいない雰囲気を楽しむ余裕は、このときの私には全くありませんでした。
時間が近づいてきているので、お手洗いを済ましてきて。
すると、本当にちらほらと、ホールに入ってくる人たちが現れました。
今日で合ってた……良かった……。
でも、想像では、もっとたくさんの人たちが押し寄せてくると思っていました。
だって、学内に映画館があること自体、ものすごく羨ましいことですから。
ていうか、私も誰かを誘ってみてもよかったのかもしれません。ただ、こんな夜に始まる映画に誘うのは、時間的に申し訳なかったのです……。
でも、でも、でも!ついに映画が始まる!
ホールの入口までいくと、カウンターのようなところに、女性の方と男性の方がいました。
特に何も言われず、こちらを見てきたので、持っていたチケットをおそるおそる見せました。
すると、はいはい、入っていいよー、あ、チケットはこの箱に入れてー、と見事な軽さ。緊張していたけど、拍子抜け。
まあ、だからといって本格的な入場も怖いですけど。
さあ、いざ入場!

眼前に広がったのは、「映画館」ではありませんでした。
そのまんま、広すぎる体育館のような場所。
その先のステージで、これまた巨大なスクリーンが垂れ下がっている。
これが、タイトルを「学内上映会」にした理由です。
映画館、と聞いていたのに、これは大規模な鑑賞会じゃないか。
と思ったのも束の間。
日本の体育館じゃ比較にならないほど、とにかく広いんです。縦よりかは、横に。
そこにずらああああっっっと並ぶパイプ椅子。
この椅子はいつ並べたのか。それとも、常にこうなのか。
映画館と同じくらいの暗さで、スクリーンに映し出された広告の映像が光っています。
って、鑑賞会でも広告流すの……!?
それはともかく。周りを見渡すと、大量の椅子に反して、座っているのはほんの数人。自由席なので、色々なところにぽつりぽつりと座っています。
少人数で見る映画は大好きです。その分静かなので。
すっかり気分が高揚した私は、どの席に座ろうかと歩き回りました。
まず、絶対真ん中。それでいて、近すぎない、スクリーン全体が見渡せる場所。
どっちの列にしようかなー、と前後を行ったり来たり。すみません、ここ来るの初めてなんです。
そして、ここに決めた!と座ります。
数個前に座る人たちが、サンドイッチか何かを食べていたのには驚きました。ポップコーンの域を超えて、食事になっています。
あと数分で始まる。一応、スマホの電源を切っておこう。
そうして、よく分からない英語の広告を見ながら、上映開始を待ちました。
個人的に、間際になったとき、今月の映画はこれ!と紹介の1ページが入っていたのがツボでした。毎月五本くらい、この上映会をやっているみたいです。本当に羨ましい。

今回私が見たのは、『The Holdovers』という作品です。
今、タイトルを調べたときに知りましたが、日本公開されていますね……!早くチェックしておくべきだった……!
当時は、アカデミー賞を獲っているから、後に日本でも公開されるだろうという気持ちで選びました。
また、当時の3月上映作品で、他のものはシリアス系だったり、映画時間が3時間近くだったりとしていました。
日本公開がのちに決定しているものもあったので、消去法みたいにはなってしまいましたが、こちらを選びました。
英語はほとんど理解できませんでしたが、心があったまる作品でした。登場人物たちが個性豊かで、人々の間で生まれる物語(ストーリー)を感じました。ラストシーンは、いまでも覚えています。また、舞台では雪が降っているので、暗い空間で見ると白色がとても映えて見えました。実際に、雪景色が目の前に広がっているようでした。
初めての海外で、しかも不安だらけの海外研修生活を送っていた中で、大好きな映画を鑑賞できたこと、ほっこりしながら見られたこと。そういう意味でも、私にとって人生をあたためてくれる作品の一つになりました。
まだ日本で上映しているみたいなので!早速見に行ってきます!!

映画が終わると、ぞろぞろと人が出ていきます。
ここで本当に悲しい事実なのですが、パイプ椅子によって、首と腰が破壊されていました。映画に集中したいのに、途中から痛みとの戦いも入ってきてしまいました。それさえなければ、面白かった!で終われたのに……!
立ち上がって、首と腰をいたわりながら、映画館ホールを後にしました。
この日は事前に、ホストマザーに迎えにきてほしいと頼んでいました。真夜中に近づく暗さは、さすがに怖かったです。ホストマザーも映画好きなので、OK!と引き受けてくれてありがたかったです。
帰りの車内で聞いたのですが、あのホールは卒業式も行う場所なのだそう。どうりであんな広いわけだ……。
平日で、午前に授業を受け、その後観光地に行き、電車に見放されながらも、また大学に戻って映画を見る。
なかなかのハードスケジュールでしたが、とても充実した一日になりました。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
次回、お散歩お散歩らんらんらん。
それでは、また。

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