ルールを知らないオーナメント【毎週ショートショートnote】

少年はうまくしゃべることができない。最初の言葉をつっかえてしまう。一度、つっかえてしまうと話すことが怖くなってだまってしまう。だから、小学校では友達ができなかった。

12月にお母さんがクリスマスツリーを買ってきた。妹と一緒に、星や綺麗な玉、サンタ人形のオーナメントを飾り付けていた。

ある夜、目が覚めてトイレに行こうとしたとき、ツリーの電気が点いていたので消そうとした。

『メリークリスマス！』
「だれ？」
『わしじゃよ』

オーナメントのサンタ人形がしゃべっていた。でも不思議なことに驚かなかった。サンタ人形は少年にたくさん話しかけ、少年もいっぱいおしゃべりをした。不思議だったのは言葉をつっかえずに話せたことだ。

『ルールを知らないな？』
「どういうこと？」
『楽しいことばかり話すのはルール違反なんじゃ』

少年は欲しいおもちゃを伝えられずにお母さんとケンカしてごめんなさいと言えないことを話した。

『本当に伝えたいことは、きっと伝わるよ』

（410文字）

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重松清さんの『きよしこ』をベースにしています。短編ですので久しぶりに読み返したら、また涙を流してしまいました。クリスマスのお話です。

『きよしこ』 重松清 | 新潮社

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