見出し画像

雨の七夕【青ブラ文学部】

「喜多方!さっきから昇降口にいるけど、誰か待ってるの?」
「高見さん。いや、別に誰かを待ってるわけじゃないけど…」

「もしかして、梅雨なのに傘を忘れたとか?」
「うん…、そうなんだ」

「はい。このまえ借りた傘、返すね」
「ありがとう。助かったよ」

「じゃあね」
「バイバイ。あれ?高見さんは帰らないの?」

「喜多方の傘を持ってきたんだけど、わたしの傘、忘れちゃった」
「梅雨なのに?」

「まいった、まいった」
「一緒に帰る?」

「いいの?ありがとう。相合傘だね」
「ち、違うよ。たまたま帰り道が同じだからだよ」

「そっか、そっかー。たまたま帰り道が同じでよかったよ」
「じゃあ、帰ろう」

「今日は七夕だねー」
「七夕なのに雨だね」

「そーだね。織姫と彦星が会えないね。悪いことしちゃたなー」
「悪いこと?」

「ううん、なんでもなーい」
「なんだか毎年、雨が降ってる気がする」

「喜多方は短冊になんて書いたの?」
「志望校に合格しますように、って書いたよ」

「そっか、そっかー」
「高見さんは?」

「わたしはね…、ナイショ!」
「ずるいよ。僕は教えたのに」

「もう願い事は叶ったからさ」
「高見さんの願い事は叶ったんだ。それは良かったね」

「喜多方の肩、濡れてるよ」
「折りたたみ傘だから、小さいからかな」

「そっか、そっかー。ありがとう、喜多方」
「なんのお礼?」


雨が降りますように


(おわり)



山根あきらさんの企画に参加しています。
お題の「雨の七夕」で「からかい上手の高木さん」を下敷きにしてショートショートを投稿しました。


#青ブラ文学部
#雨の七夕
#ショートショート

サポートして頂いたら有料記事を購入します!