山岳カルマ【毎週ショートショートnote】

「取材に応じて頂き、ありがとうございます」
「こちらこそ」

ここは山岳に囲まれた盆地に位置している。北側にある山だけが岩山で草木が一切生えていない。古来より地元では『カルマ』と呼ばれ恐れられていた。稀に近づく者もいたが、生きて帰ってくることはなかった。

「その伝説を陸軍が利用したんですね」
「ええ」

戦時中、生物兵器の開発が進められていた。『カルマ』は岩山自体が堅固で防衛上有効であり、地元の人も近寄らないことから、ここに研究所が設置された。戦後、研究所は閉鎖されたが、生物兵器の一部が外部に漏れて草木が一切生えなくなったとも噂されている。

「大学教授が行方不明になりましたが、その研究所と関係あるんですね」
「生物兵器について調査されていました」

取材が終わり、席を立った。

「それでは、失礼致します」
「どちらに行かれるんですか？」

「え？」
「またまた。ようこそ『カルマ』へ。皆さん歓迎していますよ」

振り返ると複数の人達に囲まれていた。

（410文字）

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