祭りのあと
祭りの帰りの電車で、中学の頃好きだった人と会った。
あの子は部活帰りらしく、練習着に草臥れた顔をまとわせて席に座っていた。でも俺は、確証が持てずに話しかけなかった。正確には、相手が話しかけてくれる、俺は話しかけてもらえるような人間だという驕りがあったのかもしれない。
気付けば終着駅、何かアクションを起こさねばと半ば脅迫に近い感情に合わせて目を見やると、あの子と目が合った。逡巡の後に出たのはこともあろうに会釈だった。そのあと、あの子は改札で私を一瞥してから夜の闇に溶け込んでいった。
駅から歩いて帰りながら、後悔の念が頭の中で対流していた。そんな俺を侮蔑するように、今日の帰り道はいやに澄んだ空気を孕んでいた。
祭りのあとは、いつも悲哀の感情が俺を取り巻いてくる。
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