麦茶

コロナ禍が始まって3年。
在宅勤務が認められている職場で勤め始めて3年。

家で過ごす時間が長い、もはや1日中家の中で生活するのにも慣れてきた。
在宅での仕事は自由の極み。
業務に支障がなければ、いつご飯を食べても良いし、音楽を聴きながら作業しても怒られないし、空き時間に昼寝することもできる。トイレも行きたいときにすぐ行ける。
外の職場で働いていれば人目が気になってしまうようなことも憚ることなくできるのだ。

このような生活を送り始める前と後で、圧倒的に変わったことがある。
一日の水分摂取量だ。
ほとんど一日中家の(というか狭い部屋の)同じ場所に座って何かしら作業をしているわけだから、喉が渇くことはむしろ減ったのだが、単に口さみしいために水分を沢山摂るようになった。
そしていつでもトイレに行ける状況も、この変化を後押しする要因となっていた。いくら飲んでも大丈夫、という安心感。ぽぽちゃん人形にでもなったかのように、水分を摂ってはトイレに行くようになった。汚い話でごめんなさい。

美女は1日2L水を飲む!とか最近増えてきたそういう文句に踊らされているわけではない。
もちろん美容に良いという情報を聞くと「ふ~ん、そうなんだあ」と少し得意げな気持ちにはなるけれど。

さて、ここまで”水”ではなく”水分”と書いてきたのは、飲んでいるのが水ではないからである。
比較的水のきれいな地域に生まれ育ってしまったがために、未だに都会の水道水の味があまり好きではないのだ(気分次第な気もするけれど)。
かと言って、ペットボトルの水を買って飲むのも経済的ではないし、何よりペットボトルのゴミをまとめて捨てるのが面倒だ。
しかもこの辺りは、ペットボトルの回収が2週に1回しかない。毎日2L以上も水をがぶ飲みしていれば、回収日の前日はゴミ屋敷ならぬペットボトル屋敷になりかねない。

というわけで、蛇口にくっつけるタイプの浄水器(これも気分の問題なのかもしれないけれど)を使って、結局料理などには水道水を使うようにしている。
でも、やはりそのまま飲むのは気がひける。そこでお茶にすることにしたのだ。多少の匂いと色が着いていたらそれは水道水ではないので。

実家では常飲するのは麦茶と決まっていたこともあり、なんとなくお茶は麦茶を選ぶようになった。一口に麦茶と言っても様々なメーカーがお茶パックを販売しており、スーパーに行けば迷うくらいに種類がある。
そんな中で私が一番気に入っている、それしか飲まないと決めている麦茶はセブンイレブンの麦茶だ。
毎日麦茶を作るのに、お湯を沸かして煮出すのは非常に面倒くさい。
水出しでもしっかり色と匂いが出ることが何よりの決め手である。
風味がどうとかそういうのはよく分からない。面倒くさくないことが何よりも正義だ。

ただ、このセブンの麦茶は、セブンイレブンの商品の中ではだいぶ地位が低いようである。
1袋に大量のお茶パックが入っているため、このように言っている私ですら1ヶ月に1度くらいのペースでしか買わないのだから無理もないかもしれない。

コンビニの陳列ルールには全く詳しくないが、なんとなくよく売れる(有力な)商品は人の目の高さ辺りに置かれているのだろうなと思っている。
その点この麦茶パックは、いつも棚の最下層にひっそり置かれている。
とにかくどこのセブンに行っても、見つけるのに時間がかかるのだ。(そもそもお茶のコーナー自体が目立っていないのもある。)

それでも、大体一番下の棚にあるよなということが分かっていれば、例外はあるけれど少しは見つけやすくなる。
しかし今日行ったセブンでは麦茶好きにとってもっと悲惨な事態が起きていた。
最下段にある麦茶のパックが、床掃除のあおりを受けて埃まみれになっていたのだ。当然ビニールの外袋に包まれているし密封もされているから、中身には影響はないのだろうけど、それでもいたたまれない気持ちになった。

仕方なく、埃を軽く払って麦茶を手に取りお会計を済ませた。
そして家に帰ってすぐに、ウェットティッシュで外袋をまんべんなく拭いてから封を開ける。中身はいつもと変わらない大量の麦茶のパックだった。
その麦茶パックは今も現在進行系で、うちの冷蔵庫の中でしっかり仕事をしている。もちろん水出しで。

まだ少し薄い麦茶を飲みながら、セブンの麦茶の地位が少しでも上がりますように、もしくは陳列棚の最下段が埃をかぶらなくて済むくらいの高さに上がりますようにと祈った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?