硯の重み
赤毛のアンシリーズの、スーザンが好き。
「アンの夢の家」から登場するスーザン・ベイカーは、アンの家に住み込みで働く家政婦。料理はうまいしきれい好き、縫い物もお手のものの、かっこいい大人だ。
昔の物語には、素敵な家政婦や乳母がよく登場する。スーザンに限らず、主人家族になじみ、家庭の中心という感じすらある。
でも、実際はどうなんだろう。
高橋順子さんが日経新聞に寄せたエッセイ「漱石の硯」を読んで、ふと考えた。
高橋さんの叔母は、漱石の家の住み込みの家政婦を50年以上務めた。あるとき漱石の長男から、感謝の添え書きとともに、漱石の硯を譲り受けた。
心暖まる美談、という感じだけれど。
その言葉に、現実を突き付けられる。
女学校出のプライドをもちながら、時代の制約から、思うような人生を歩めなかった。
主人一家にはよくしてもらったけれど、「使用人のつらさはぬぐえなかった」。
硯の話を美談だと思うのは、一方的な見方なのだろう。
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