見出し画像

ぶどうパンの歌

今月のNHK短歌テキストで、お米とパンの歌が特集されていた。

たくさんのパンの歌を読んでいたら、とても素敵な歌に出会った。

少し長めに生きたることも葡萄パンにまじる葡萄のごとき確率

杉﨑恒夫「食卓の音楽」

テーマは重いのに、パンのやわらかさや、干しぶどうの甘さが、軽やかさを引き出している。
素敵だなあ。こんなふうに詠めるようになりたい。

作者は戦時中を生きた方だから、よけいに長生きの尊さに、実感がこもるのだろう。
今は人生百年なんていわれるから、だいぶ事情が違うけれど、私の父は早くに亡くなったし、同世代で急に亡くなる人もいて、本当に、先のことは分からないと思う。

そして、この歌を紹介したNHK短歌テキストの解説を読んで、びっくり。
最近は、パン生地よりぶどうの方が多く入っていると思えるようなレーズンパンが、たくさんあるらしい。
この歌の葡萄パンは、ひとちぎりに1、2粒入っている程度の昔ながらのパン、とのこと。

そうなのか。大人になってから、パンを食べる機会がほとんどないから知らなかった。
私の知るぶどうパンは、コッペパンに、時々干しぶどうが入っているやつなのだけれど。

いつの間にか、私もすっかり昔の人間だ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?