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芸ごとへの憧れ

最近NHKで、イタリアの医師のドラマを見ている。それで、全然関係ないけれど、久しぶりに山崎豊子の「白い巨塔」を本棚から引っ張り出してきた。

忘れられないのは、主人公・財前五郎の舅である、財前又一。
野望に燃える五郎をも圧倒する、欲望の塊のような人物。昔はこういうギラギラした人も珍しくなかったのかもしれないけれど、今の時代、その生きざまが、やけにまぶしい。

でも、それだけでは、たぶん心惹かれないと思う。欲望にまみれつつも、芸ごとを嗜む一面もあり、人としての奥行きが感じられるのだ。

又一が、五郎と飲みながら、地唄を唄う場面が好き。女将に三味線を弾かせて、十八番の「雪」を唄う。

財前五郎は、始めて聞く地唄に耳を傾けながら、開業医として、多忙な診療をちゃんとすませ、その上で遊び、芸ごとをたしなみ、通人をもって任じる又一の姿に、大阪という街にしかない強烈な個性を持った町医者の姿を見る思いがした。

山崎豊子「白い巨塔」新潮文庫

婿と飲みながら、さらっと唄えるのが、かっこいい。
芸の嗜みがあるって、素敵だなあ。
人生にふくらみがある。

人生後半戦になってきたし、今さらだけれど、私も一芸を身に付けたい。
憧れは尽きない。

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