逆、とは何か
先日、「謡曲を読む愉しみ」(山村修・檜書店)を読んだ。
「蝉丸」を取り上げた箇所が、心に残った。
「逆髪」(さかがみ)と「蝉丸」は、姉弟。皇女、皇子でありながら、逆髪は狂乱して放浪し、蝉丸は盲目を理由に捨てられてしまう。
逆髪は、髪が逆立って生えていて、放浪の最中、こどもに笑われる。
実に(げに)逆さまなる事はをかしいよな、と逆髪は言う。でも。
花の種は、「地中へと下降しながら、また花と咲くために木の梢にのぼって行く」。
月影は、「高い天にありながら、海や湖をみれば、水底ふかく沈んでいる」。
何が順で、何が逆なのか。
「蝉丸」は世阿弥の作といわれていて、600年以上前のものだけれど、その問いかけは、今でも新鮮だ。
逆って、なんだろう。
自分にとっての順が、実は逆であるかもしれない。
世界が揺さぶられる。
それを恐れて、人は逆髪を笑うのかもしれない。
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