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冬の寒さに

すっかり寒くなった。
11月ももう終わるのだから当たり前なのだけれど、暖かい日が続いていたので、急な寒さがこたえる。
年々、寒さが苦手になっている気がする。

そんなときは、南木佳士さんのエッセイ集「生きてるかい?」を思い出す。
南木さんの勤める長野の病院では、寒くなると、高齢の通院者さんが、「こんなにさぶい日ばっかりつづきゃあ凍み(しみ)死んじまうよ」と言う。

もっと若かったころ、凍みて死ぬなんてことはありませんよ、とぶっきらぼうに答えていたものだが、還暦が近くなってみると、代謝が年々低下してきているからだには冬の寒気が直に背骨にまで伝わってしまう。だから、凍みて死ぬってのもありだよなと、それこそ身にしみて思えてきた。

南木佳士「生きてるかい?」(文春文庫)

東京の冬で、凍み死ぬことはないだろうけれど、寒くなると、命が縮んでいくような気がする。

昔、夜遅くに会社を出て、小雪の舞うなか、ずっとバスを待っていたことがあった。
そのうち心がしーんとして、ぽろぽろぽろぽろ、涙がこぼれた。バスに乗っても電車に乗り換えても、涙は止まらなかった。
寒さが怖くなったのは、その頃からかもしれない。

今夜は、暖かくして眠ろう。

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