episode 13:

作者:黒ゴマの一番弟子

もう3リットルは汗を書いたんじゃないか?
もう直ぐ着くかなぁ。

8/25、午後12時。友人の白布(しらふ)と僕は、目的地までの距離を休む事なく詰めていく。
なんせあの謎に包まれた接客を受けられるのだから。

「コンビニが駅から7.2kmって、最初笑ったよな。」吹っ切れたかのように、声高に言葉を放ち始めた白布。
「あ〜 ね。でも今日はコンビニで商品を買うのが目的じゃないから。」
「まぁー、ねー。でもこりゃ、現地着いたらビール行きたくなるぞ?」

突如としてパワースポットとして擡げられ始めた、
『ノータックス オアシス店』。今日の目的地だ。

店員は至って普通の接客をするのだが、
問題は店長だ。

"3日前の放課後"

「託水(たくのみ)ー、あのコンビニのパワスポ行って見ない?夏休み終わる前にさ。」
「いいね。」僕は了承した。

「店長のレジ捌きがエグいって事らしいーよー。」
「店長が??」

「そうそう。何故か入店中は、スマホが使えなくなるらしいから、動画上げた人がまだ居なくて、どう凄いのかは分からん。実際に行って見ない事には。」

"現在 : 店の赤い入口が見えてきた"

「出た出た。、出た。あの鳥居。」白布の疲労困憊の表情は、けろっと明るくなり、鳥居に吸い込まれるように走り出した。
「待て待て。引きの外観をパシャッと。いやぁ、しかし迫力すげぇなー。」
そう、それが入口であるとは聞いていた。しかし近くから臨むと、その精巧な作りに圧倒された。
「こりゃー、一般客来ない訳だ。」
「な。」

僕たちはあっという間に鳥居の下まで来た。
「入り口まで来たけど。。ほー〜ん。店長ほんとに居るのかな?」
確かに、店長らしき人物が見当たらない。

「月水金は出勤でしょ。ちゃんと確認したはずだけど。」
「まぁ、入ってみようよ。とりあえず。」

ウィーンッ
「いらっしゃいませ!」

入店自体は、さらっと果たしてしまった。しかしお目当ての様子は未だ見えない。
僕たちは入店する、商品を選ぶ、レジに並ぶ、という順序まで辿り着いてしまった。

しかし、、

ゴトンッ
コンコンコン!
サー ザー
サー ザー

「何だ今の?」
誰か後ろで納品でも捌いているのか。そう納得して振り向くと、、

なんと、
店長が床を構築していたのだ。

「えーー!」
僕たちは顔を見合わせ、笑みをこぼさざるを得なかった。

つか、レジ関係ねぇじゃん。

入店中は何故か気付かなかったが、
店長は5,6個の床タイルを抱えて、客が歩いた床を常に新しいタイルに交換していたのだ。

しかも目地もちゃんと埋めているじゃあないか。タイルとタイルの間を、パテで穴埋めしている。妙義だ。

誰も撮影出来ない理由が分かった。この妙義に見惚れて、撮影意欲すら忘れてしまうのだ。

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