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第二話 出会い2

「定住山のエクスカリバーですか?」

「そうよ。正式名称は水剣 水研ぎ刀九里粉っていうのよ。」

何とも間抜けな名前だ。片栗粉ってなんだよ。剣にそんな名前つけるなよ。でも、名前を聞いても、聞かなかったとしてもあの剣には何か魅力を感じる。定住山のエクスカリバーって言われるのも分かる気がする。

「今から、この剣についての説明したいんだけど、聞きたい?少し長くなるけど…。」

「はい!聞きたいです。」

「あの剣はね…この定住山の最初の持ち主 山上一鉄が作ったの。彼の作った作品たちはね 後指製剣って言って、試しの四作、放浪のバラマキ、定住の大作、晩年三剣の順に価値が高くなっているの。そして、あれはその後指製剣の中でもっとも価値の高い三作…晩年三剣の一つよ。しかも、彼が正真正銘最後に作った作品。そりゃあ誰だって、引っこ抜いてみたいわよね。そんな大作。売るもよし。使うもよし。自慢するもよし。一度自分の物にしてしまえばどうしようが持ち主の勝手にできるんだから。でもね、作られてあの池に突き刺さってから一度も誰の物にもならなかったのよね。そう。まるで、誰か持ち主を待っているかのように…って言いたいところなんだけど…。まぁ挑戦してみなさい。もしかしたら、もしかするかもしれないから。」

「えっ。あっはい。」

確かにさっき感じた魅力の正体がわかった。でも、なんだろう?なんで最後ドルーワさんは話しづらそうに俺に話を振ったのだろう?なにか心に一物でもあるのだろうか?確かに、一物は彼女にもついてるけども…ってそんなことはどうでもいい!とにかくやってみるか。もしかしたら親父の言っていた出会うもの達の一つかもしれないし。心は早速抜いてみることにする。しかし、抜けない。

そりゃそうか。俺よりも強い人たちが抜けなかったんだ。俺が抜こう。俺なら抜ける。そんな考えは甘かった。

「小僧。そんなあからさまに悲しそうな顔をするな。俺はそんなするっと抜けるような代物じゃない。」

「えっ…。しゃべったああああああああ!」

「しゃべるよ。後指製剣…俺の兄弟たちは全部。作った奴の能力か何かはわからないがな。」

「ドッドルーワさん!知ってたんですか!」

「えっえぇ。知っていたわ。まっまぁ今まで誰も抜けなかったのは彼と誰もそりが合わなかったのよね。剣だけに…。」

「まぁそういうことだ。小僧。今までの奴らは俺と話が合わなかっただけだ。だから、お前にもチャンスはある。もう一回挑戦してみろ!今度は少し、肩の力を抜いてやるよ。肩ないけど…。ここにいるのも少し飽きてきたし。」

「えっ。じゃっじゃあ僕の物になってくれるの?」

「抜けたらな。」

「よっよし!やってやる!」

力強く剣の持ち手を持ち、抜いてみた。あっ!さっきより軽い気がする。

スラッ…

ぬっぬけた!…あれ?でもおかしい。いつまでこの剣は抜け続けるのだろう終わりが見えない。

「あっやっぱり気が変わった。小僧!今日はお前の物になるのやめとくわ。」

「えっそんな。」

その一瞬、少し心の手の力が弱まった。

スルスルスルスル…

そんな音をたて、元の位置に戻った。

「まぁいつものことだわね。心!どうやらあんた!水剣に遊ばれたみたいよ!」

「えぇ。マジですかぁ。そうなの?」

「あ?あぁまぁそういうことだな。いつもならこの後こう吐き捨てる。
…お前に俺は使いこなせねぇよ。バ~カ!そこらへんの枝でも使いやがれ!ってな。」

「それじゃあ俺も枝を使うしかないのか…。」

「まぁいつもだったら、そうだ。っていうところだが…お前名前は?」

「え?魚水 心ですけど…。」

「魚水…そうか…おい!!ドルーワ!!」

「!!はいはい。私に何か用かしら?」

「こいつどこで拾った?」

「この山の麓でよ。どうやら父親がここに行けって言ったみたい。」

「そうか…じゃあこいつお前のもとで育ててやれ。」

「え?」

「聞こえなかったか?もう一度言う。こいつをお前の弟子にしてやれ。」

「あなたにしては珍しいこと言うわね。」

「確かにそうですね。」

!!!

そこにはもう一人いた。いつ来たのか誰も分からなかった。でも、二人はどうやら正体を知っているようだ。

「あら、あなたこそ珍しいわね。オポ。」

「いえいえ、私の目的が完了しそうな音がしたので…。」

「残念ね。あともう少しかかりそうよ。」

「あら、残念。早く登場しすぎたみたいね。」

「あっあの、この人は?」

「あぁ。心は知らないわよね。この人はねあの剣を抜く人を見たい人なの。」

「その後、どうするんですか?」

「もちろん殺すわ。それがある存在からの命令ですから。」

「ある存在って?」

「それは言えないわ。でも、私の存在は明かしてもいいわ。私は王狩りって言って、王を狩る存在。エクスカリバーを抜く奴なんて、王の素質を持ったものに違いないそう思ったんだけどね…。どうやら期待違いだったみたいね。」

「え?僕には素質がないんですか?」

「無いわね。全くって言ってもいいほどに。」

「えぇ。」

「でも、いいわ。あの剣がやっとここから出ていく気になったんですから。私もそれについていけばいい。そうすれば、剣に寄って来る王の素質を狩れる…。で?この子をドルーワの弟子にする利点は何なの?別に強くしなくたってこの子を殺した人を次の持ち主にすればいいだけじゃない。それとも…」

「理由は簡単だ。俺はこいつを今までの奴よりは気に入ったからだ。」

「あら、あっさり認めるのね。じゃあその意見は尊重してあげないとね。心っていうガキ!」

「はっはい!」

「さっさと強くなりなさい!そして、早く私を王たちのもとに連れて行きなさい!」

「そっそんな。急に言われても…ねぇ?ドルーワさん。」

「私はいいわよ。この子を弟子にするのは。気に入っているからね。だから、ここに連れてきたってのもあるから。」

「えっ。えぇ…。…よし!わかりました。弟子になります!その方がこの後の旅がスムーズに進むような気がする。簡単に考えても。
だから、水剣 水研ぎ刀九里粉!」

「なんだ?」

「俺が引っこ抜きに来るまで、誰にも抜かれるなよ!」

「あぁ。気が変わらなかったらな。」

「じゃあ決まりね。私はまた、森に潜むとするわ。剣が抜けたら私の名前を呼びなさい!すぐに来てあげるわ。楽しみにしてるからね。ガキンチョ。」

「わかりました。強くなってきます。…というわけで、オネエさん…いえ師匠!これからお願いします!」

「師匠ね…。先生くらいでいいわ。ビシバシ鍛えてやるから期待しておきなさい!」

「はい!」

それから、三人はそれぞれの寝床に戻っていった。一人…いや、一本残された水剣 水研ぎ刀九里粉は少し昔のことを思い出していた。

「なぁ!なぁ!なんでだ!なんで、俺を引っこ抜くことができたのに俺を連れて行かない!どうしてだ!」

「あぁ。元々、お前さんには記念に挑戦しただけだ。そしたらたまたま抜けただけ。それに、ほれ。俺はおNEWの剣をもう、持ってるし…。こいつで俺は十分だ。」

「じゃっじゃあ。俺はどうしたらいいんだ?お前以外の持ち主をまた待てというのか?俺をまた長い長い待ちぼうけの日々に戻すというのか!」

「…そうだな。それもかわいそうになってきた。…!そうか、それはそれは…。安心しろ!水研ぎ刀九里粉。お前の待ちぼうけはもうすぐ終わる。」

「そうか!そうなのか!」

「あぁ。俺の名前を憶えておけ!その名前と同じ奴が、少しはお前を楽しませてくれるだろうよ。」

「そうなのか!で、おまえの名前は!」

「俺は、魚水。魚水…」

…!剣のくせに思い出に浸るとはな…魚水。あれはお前の息子か?お前は今どこにいる?お前には聞きたいことが山ほどある。そして、お前に会うその最短方法はあいつについて行くこと…。楽しみだ…。心!強くなって俺を引き抜きに来い!俺とお前の目的はどうやら一緒らしいぞ。

翌日
「心!起きなさい!お姉さんが今日からビシバシ鍛えてあげるわよ。」

「はい!師匠…いえ、先生!」






























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