見出し画像

お経は、暗くて、つまらないか? 仏教ポップスへのいざない

 写真: シンガポールの門前町「ブギス」の仏具店で買った仏教ポップスCD『佛陀的愛』(黒龍江文化音像出版社)

 国によって、何が発達しているかは違うものです。
 
 南方中国人世界(台湾、シンガポール、マレーシア等)に行ってみると、日本がものすごい漫画の発達国であることがわかります。
書店の漫画コーナーでは、日本の訳本ばかりが目につき、現地の作品というのは見えませんでした。

 一方、それらの国々で発達していて、我が国にほとんど少ないのは、

佛教[仏教]ポップス

 でしょう。
 向こうでは、
経文[きょうもん]や念仏や佛教[ぶっきょう]的歌詞を土台に、
現代人が作曲・編曲をほどこし、
現代の楽器で伴奏される中、
現代のスターたちがポップスとして歌う
ものがたくさんあるのです。
 曲調も、ポップス、演歌、童謡とさまざまです。
 
 歌手も、特定の寺の住職や檀家ではなく、その国で誰もが知っているような歌手、
日本ならば「紅白歌合戦」級の大物スター
が歌うことも珍しくありません。

 例えば、

王菲(フェイ・ウオン。おうひ。女性)



張智霖(ジュリアン・チョン。ちょうちりん。男性)


は、現代風に編曲された

『般若心経』をデュエット


しています。
 菲(フェイ)の澄んだ声で、
「観自在菩薩[コン ジゾイ ポーサーッ]、、」と始まります。

 

 お経とは堅くて、古くて、渋いものという固定観念を持つ現代日本人が、聞き流せば、とても佛教音楽には聞こえないでしょう。
 

林憶蓮(サンディ・ラム。りんおくれん。女性)


許志安(アンディ・ホイ。きょしあん。男性)

が歌う

『阿彌陀佛心咒[あみだぶつしんじゅ]』


は、神秘的な雰囲気を持つ癒し系の曲です。
歌詞は、二人が梵語[ぼんご](サンスクリット)で交互に繰り返す

「オン・アミデーワーヒ」
(アミデ=阿弥陀。

意訳:無量光佛[むりょうこうぶつ]をたたえます)

だけで、他はありません。

阿彌陀佛心咒49遍 林憶蓮 許志安 - YouTube



 若いころ、ポップス界で有名になり、ある年齢になってから、佛教音楽中心に転身した歌手も多いです。
 

孟庭葦(モン・ティンウェイ。もうていい)


もそういう一人です。彼女の

「遇見阿彌陀佛[ぐうけんあみだぶつ]」

(阿弥陀さまに会いたてまつる)


の歌詞は、ずばり

「阿弥陀佛」[アミトフォ] と

「南無阿弥陀佛」[ナモアミトフォ」

のみです。
 この子守歌のような穏やかな中国語による
念佛[ねんぶつ]「南無阿彌陀佛[ナモアミトフォ]」の反復は、大人をも眠りに誘いそうです。

遇見阿彌陀 - YouTube


 “百見は一聞にしかず”。

 上記の曲に「どんなものかなあ?」と興味をお示しになったかたは、ぜひ上記を検索して、歌そのものをお楽しみください。

 今年(平成23=2011年)は、親鸞さまの七百五十回忌、および法然先生の八百回忌です。

 法然教団にいた親鸞さまの兄弟子、安楽さま、住蓮さまは、美形で、美声の持ち主だったと言われています。
 時の権力者、後鳥羽上皇の女官、松虫姫鈴虫姫は、安楽さま・住蓮さまの二人を慕[した]って、宮中を逃げ出し、法然先生の寺に入ってしまいました。
 しかし、これは上皇の怒りを買い、安楽さま、住蓮さまは処刑され、教団は解散させられ、法然先生は四国に、親鸞さまは越後に流罪となりました。

 それまでの法然教団の人気は、他の伝統寺院から嫉妬されていました。
これほどまでに、人々を引き付けていたのは、法然先生のお寺が、
単に、「良い話」をしていただけではなく、娯楽性もあった
からではないでしょうか。

 落語は、僧侶の説法から発展したものと言われています。
 法要では、前段で、安楽さま、住蓮さまが美声を聞かせ、
最後に、真打ち・法然先生がお出ましになった
のではないかと想像しています。

  『園だより』平成23=2011年7・8月合併号
「お経は、暗くて、つまらないか」(副園長 白井千彰 当時)
の原文を基に改編。

                     令和6=2024年2月29日

 社会福祉法人 和光保育園 前園長・理事 白井千彰[しらい・ちあき]
 ※ 本編は和光保育園の公式サイトではなく、白井千彰個人のブログです。
 
関連記事:
超々ド級初心者のための中国語の歌(仏教ポップスの一つより)|白井千彰 (note.com)
成道会[じょうどうえ]生活発表会BGM曲紹介 『三皈依[さんきえ]』|白井千彰 (note.com)

 追伸:
公表された紙の『園だより』で、具体的な曲(経)や歌手の名は紹介していませんでしたが、今回、『園だより』の元になった文章(未発表)に基づいて、曲名(経名)・歌手名を記しました。
                      令和6=2024年2月29日

 追伸2:
題名「お経は、暗くて、つまらないか? 仏教ポップスへのいざない。あわせて、刑死した安楽さま・住蓮さまを思う」から
「あわせて、刑死した安楽さま・住蓮さまを思う」の一文を削除しました。本文の内容は変わっていません。
                      令和6=2024年3月1日
 追伸3:
検索のためのキーワード 「仏教華流ポップス」

                      令和6=2024年3月12日 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?