草香なむ🌱

持ち歩ける「窓」のような文章を目指しています。書いたエッセイをまとめました✨

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最近の記事

ナイト・ピクニック

もうずいぶん昔の話になる。東京・新宿にある「高野フルーツ・パーラ」に入って、一人で時間潰しをしていた時のこと。私の隣に体格のいい外国人の男性が、どかっと、座った。大きな撮影機を机の上において。 「レモネード、プリーズ」 彼は、そう注文した。けれども、暫くして、店員が運んできたのは、アイスレモンティーだった。なんとなく嫌な予感がした。この店、レモネードなんてあったけ?そばにあったメニューで確認する。やはり、レモネードはない。彼は、口調を強めながら、繰り返した。 「ノー、レ

    • 墨の香り

      言葉を省略するのが苦手だ。どうして略さなければいけないのか。時間の省略?物事を省略する人の心理……この言葉、当然知っているよね?みたいな「優越感」が苦手なのかもしれない。 「マクドナルド→マクド」 「まいばすけっと→まいばす」   「タイムパフォーマンス」→「タイパ」など。 「マクド」や「まいばす」なら、まだ意味がわかるが、わたしは長い間「タイパ」の意味がわからなかった。響きのカッコよさに気付こうとしてもそれ以前に、わたしの心の中に違和感が生まれる。 子どもの頃、長い間

      • 数字は宇宙と繋がっているのかな?

        数字と聞いて、真っ先に思い出すのは、高校の時の先生のこの言葉だ。 「数字は美しい……です」 そしてわたしもその意見に同感だ。XやYなど学校で習った方程式も面白かったが、πの法則、3.14……などは、その代表ではないでしょうか? 先生は、中高時代数学が大好きだった。特に証明問題。こうすれば、この問題は解決できる。それを解くのが、楽しくて仕方がなかったらしい。そして、大学も数学科に進学したそうだ。 ところが、現実はそう単純ではなかった。問題の中には証明できないもの

        • H2O

          私がまだ、二十歳そこそこの頃の話だ。当時、東京・新宿東口駅前の路上では、アマチュアバンドの生演奏が聴くことができた。お目当てのバンドマンがいて通う人もいたし、通りすがりで足をとめる人もいた。 ブルースバンド「すし」というバンドが好きだった私は、週末になると、新宿駅前の広場に集まり、演奏を楽しみながら、常連客と将来の夢などを語りあった。 そんなある日。首にストップウオッチをぶら下げたまま演奏のリズムにのって跳ねている女の子と一緒になる。 「これ、どうしてつけているの?」

        ナイト・ピクニック

          お山のアカネさん

          「山の中に住んでいます。大きな木に囲まれた生活は自然を実感する日々です。誰かが残した大切な何かを次の世代の誰かにつなげられたら嬉しいな」 お山のアカネさんは、私が人から紹介されて、一時期連絡を取り合っていた文通相手だ。その頃私は、ある大学院で秘書をしていた。 私の仕事は昼間だったが、夜間大学院だったため、昼間あらわれる先生がたは少なく、比較的一人で自由にさせてもらっていた。環境的にも条件的にも恵まれていたと思うが、友人ができず、一人で心細いと感じていた時だった。 アカ

          お山のアカネさん

          マイ・ペン・ライ

          つくづく私は、語学のセンスがない、と思う。これまで何ケ国語か勉強した中で、ものになっている言語が、一つも見当たらないのだ。 そんな私が、つい最近、一冊の本を入手した。「すらすら読めてくるくる書けるタイ文字練習プリント」(小学館)という問題集だ。タイ文字のレッスンを独学で始めようという魂胆なのだ。 二十代の頃、仕事で約一年半、タイのバンコクに滞在した。しかし、私は、タイ文字が読めない。現地では、理論より実践が求められ、必要な日常会話は、カタカタでルビがふられたテキストをみな

          マイ・ペン・ライ

          さなかのネックレス

          もう三年前くらい前になる。東京・東陽町にある会社で奨学金関係の書類の整理を半年ほどしていた。朝が弱いせいもあり、私は、いつもマクドナルドで一杯コーヒーを飲んでから、出勤していた。 七十歳は超えていたと思う。若い時は、綺麗だったんじゃないかなと思われる女の人がフロアーを担当していた。まさに「制服が似合う可愛いお婆ちゃん」。若者の中で同じように働くその姿は、かえって人目をひき、気がついたら、目で追っていたり、今日もいるかな?なんて頭の中をよぎったり……。いたらいたでなんて言葉

          さなかのネックレス

          モノクロ東京

          二十代の後半、私は仕事で配属されたアジアでの生活を続けるか、国に帰るか決断を迷っていた。その頃、恩師より一枚のハガキが舞い込んだ。 東京は汚い街だけど  故郷は故郷だ 帰ってきたら一緒に酒でも飲もう 私は東京生まれ、東京育ち。住んでいて思う。東京は、便利かもしれないけれど、逃げ場もない。時間軸が「未来」に流れている。人々もドライだ。 昔こんな事があった。京都に移り、家庭をもったフランス帰りの友人にいわれた。 「東京は、子供が遊ぶ場所は沢山あるけれど、大人が遊ぶ場所が少

          モノクロ東京

          メトロノーム

          私が、フルートを始めたきっかけは、ジャズフルート奏者ハービーマンの影響だ。ハービーマンの外見は、胸毛がもじゃもじゃに生えている無骨なアメリカの奏者。演奏中、空気をさく音は鋭く、リズムも爽快だ。有名な曲「IT  AINT NECESSARIY   SO」を聴いていると、まるで、奏者がへび使いになったかのような錯覚に陥る。 そんな、彼に憧れて、まだ二十代の頃、私は、東京の大塚にあるオーバーラントフルートスクールの扉を叩いた。どうしてもジャズフルートが習いたかった。 ところが、

          メトロノーム

          再会

          Hello、元気に過ごしていますか? 今、ギリシャに来ています。旅の最後の国です。  ● 六週間あっという間で、色々行ったのに、 何も見てこなかったような不思議な気分。 やっぱり、観光地ばっかり行っていたせいかな…。  ● ここ、ミコノス島では、さすがに泳ぎ疲れて、ひりひり。  ● 魚とも十分戯れて遊んだし、  ● 海って、本当に青いのね。  ● でももう、おしまい。  ●  ●  ● ……あった! 高校を卒業してからすぐ、海外に飛びだした中学の友人、N子からのハガキ。

          ミッキーマウスのおじさん

          高校を卒業してすぐ、家の近所のドーナツ屋で働いていた。 「フレンチくるくるパーとストロベリーセーキを下さい」 ミッキーマウスのおじさんは、店の常連。注文する時は、いつもこのセリフだ。頼まれたフレンチくるくるパーとストロベリーセーキをだすと、必ず「ありがとう」といい、会計をするときに、いつも持ってきている「ミッキーマウスのぬいぐるみ」で、ペコリと頭をさげる。仲間の間では、有名だった。 そんなある日、アルバイトに入ると、おじさんが、カウンター席に座っていた。お客様のカップや

          ミッキーマウスのおじさん

          竹色のフィッシングベスト

          パリッとしたスーツの中にフィッシングベスト。老人の「自由さ」に感心。見た目は「常識」から外れているし、「美しく」もないけれど、他人の価値観に流されず、自分らしく自由に気分よく生きているように見える。  「ベストと蛍光ペンの衝撃」所収 『森沢カフェ』森沢 明夫 新潮文庫より ……思い出した。 中学生の頃の私。竹色のフィッシングベストを、普段着ていました。あのポケットの沢山ついている釣りベストは、中学生だったわたしにも魅力的に映った。近所の「丸善」という洋品店で買ってもらいま

          竹色のフィッシングベスト

          夕日が何故赤いのか答えなさい

          「夕日が何故赤いのか答えなさい」  これは、ある就職試験にでて、私が時間内にまとめられなかった問題だ。  私は今もこの問題を正確に答えられない。「夕日」が、ただの「赤」ではないのは、子供の頃から、わかっているのだが。  はなしは、小学校四年生の三学期に遡る。私はその頃、どちらかというと、マイペースで少し内向的な、女の子だったと思う。大勢の友達と駆け回るより、花壇の隅で、数人の友達とゴム飛びをしたり、本を読んだりするのが好きな子供だった。 ある日、私は、校庭のグラウンド

          夕日が何故赤いのか答えなさい

          ちんころたんころ

          先日、バスに乗っていたら、制服をきた日焼けをした小学生の男の子が一人。手にはちょこんとエノコロ草。緑のシッポ?……猫じゃらし。 母は子供の頃、「ちんころ、たんころ♪」と呼び、歌いながらこれを摘んで遊んだらしい。 なんだか嬉しい。 変わっていくものと、変わらないものをバスの中で考えた。

          ちんころたんころ

          イビサ島

          若い時の感性は魔訶不思議で未完成の独創性がある。音楽でいったら一見バラバラで最終的にはつじつまが合うフリージャズのように。昔々、残していたメモの中からこんな破片が見つかった。 イビサ島 私の言葉はいつも真っ白な空間の中から生れてくる。この間、イビサ島の写真集をみた。真っ青な空ととにかく白い壁に私は強く心惹かれた。いつか、あのぬけるような白い壁の前に立って「自分の影」を映してみたい。    当時たまたま図書館で開いたスペインにある小さな島に興味をもったようだ。遠い異国の地に

          グリーン・ウィーク

          かつて皆さんは、偶然ばったり、友人や知人と遭遇したことはなかっただろうか?   それは、近所のカフェだったり、 図書館だったり、どこかの公園だったり……。   かなり前の話になるが、五月の連休に一人で、東京の文京区にある小石川植物園に足を運んだことがあった。 『植物の世界』(週刊朝日百科)を読み、風媒花(ふうばいか)という、風に運ばれて受精する「きみどり色の花」があることを知り、本物が見たくなったのだ。 植物園にいくことは誰にもいっていなかったし、小石川植物園は思ったより広

          グリーン・ウィーク