2102:不妊治療再開どころか腫瘍見つかる②

診察の日がやってきた。
不妊治療に特化したこの婦人科クリニックにやってきたのは約3年振りだ。
待ち時間が長いのは相変わらずである。当時私と同時期に通っていた人たちのどのくらいが妊娠に至って、どのくらいが今も通い続けているのか。。いずれにしてもいつもここは待合室の椅子が埋まるくらい人がたくさん待っている。

以前と同じS先生が担当してくれた。当時から夫と「ロボットのような先生だよね」と笑いのタネになっていた先生である。一方で「ロボットのよう」にならざるを得ないのも理解ができる。不妊治療をしている女性のメンタルは特殊だ。目に見えない敵と戦うような、目に見えない宝を追うような、その上現時点で保険のきかない不妊治療は大きな負担になる。メンタル的にも経済的にも1日でも早くこの病院から卒業したいという気持ちだった。
もし先生が親しみやすくてこちらの気持ちを思いやるようなタイプだったら「先生がこう言ったから次はうまくいくかもしれない!」「先生がこう言ったからなんかダメな感じかも・・」など先生の様子の一欠片を捉えて勝手な解釈をして心を揺さぶられてばかりいたかもしれない。
毎日待合室から溢れそうな患者の一人一人の話を親身に聞いていたらキリがないのであえて「今回の結果は○○でした。次は〇〇をしていきます。なにか質問はありますか?」と一本線を引くような対応をしているのではないかと個人的に理解している。(単にS先生がぶっきらぼうなだけで他の担当医はものすごく親身だったりして・・)

3年振りだったが特に余計な会話はなく、今回を最後の体外受精にする旨だけ伝えて久々の内診に臨んだ。

久しぶりの内診(何度経験しても慣れない)。
3年前の治療時にはいつも特に問題はなく卵胞もたくさん見つかってスムーズに治療を進めることができた私の子宮。
今回も特になにも心配せずに診察台に乗っていた私だったが、お腹から下を隔てるカーテンの向こうのS先生から以外な声が聞こえてきた。

「腫瘍がありますね。わかりますか?この部分です。」

私からも見えるモニターで先生が示したところに確かになにかある。大きめな丸の、縁の内側にくっつくように見えた透明のそれはさながら「わらび餅」のようだった。

診察室に戻りS先生は、「大きな病院でこの腫瘍について調べてもらってください。これがきれいになったら不妊治療を再開するのでまた来てください」と言った。

1ヶ月でも早く治療を始めて結果を出してどちらにしても歩みを進めたかった。このわらび餅の登場はまったく計算外であり得体の知れぬ邪魔者であった。
これまで基本的に健康で不妊以外での体の悩みはなにもなかったのだ。このわらび餅などなにかの見間違いだから治療を進めてくれという気持ちだったが、紹介状を持たされてすごすごとクリニックをあとにした。その帰りに寄ったカフェですぐさま近所の総合病院で婦人科外来の予約をとったのだった。


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