ワクワク!イマゼキッチン!第三話 キャスト集合

狂気の企画発表から数夜、滑らかに番組作りは進んでいった。途中関わる予定だったスタッフがどんどん辞退したりなどもしたが、人員はギリギリ十分な人数を維持できていた。そしてついに番組収録の日が訪れたのであった。

監督「チェルさん入りまーす!」と高々と声を上げた。そしてチェルがついにクランクインした。遂に新番組がスタートするのだ。まずチェルはスタジオを見てなんだか驚いている様子であった。それもそのはず1週間ちょっとで準備出来たとは思えないほどの豪華絢爛たるセットが眼前にひろがっていたからである。いくら使ったんだ、どういう力を使ったんだという疑問が家でファンタジーだけに浸っていたチェルにも流石に感じるレベルだった。このスタジオにはありとあらゆる調理器具も揃っていて、料理初心者のチェルには身余るハイパー設備だった。

監督「吉澤アナ入りまーす!」出演者はチェルだけではなかった。彼女は入社1年目の新人アナウンサーでチェルの料理のアシスタントをする。監督曰く先日のバレンタインでくれた義理チョコが全義理チョコの中でもっとおいしかったことから今回のキャスティングに至ったらしい。ちなみにそのチョコは本人が作ったものではなく、家から徒歩5分のお店で買ったものであることは監督は知らない方が幸せであろう。吉澤アナは身長がチェルとほぼ同じかちょい高いぐらいで、黒く艶やかな長い髪を靡かせたTheアナウンサーな感じだった。入社一年目の彼女をこんな料理番組に巻き込んでしまったのはなんだかすごい可哀そうである。
吉澤アナ「チェルさんよろしくおねがいします!」
チェル「どうも」チェルはあんまり自分以外の出演者に興味がなかった。

監督「菊池料理長入りまーす!」吉澤アナに続いて、また新たな出演者が登場してきた。彼はこの番組の出演上のボスのような立場。チェルの料理の審査をするという謎の立場にある。彼はかつて本当にホテルのレストランで料理長をしていたらしい。それが一体どうして何があってこんな3つ星のかけらもないこの番組にやってきたのか。彼の顔は明らかに暗く、かつて料理人だったとは思えないほど汚れた服着ていて全体的にテロリストみたいだった。多分彼はなんかあったんだろう。彼は出演陣に軽く会釈だけすると、料理長の椅子とかかれた高級感漂う椅子にどんよりと腰かけた。

出演者は以上3名である。
カメラマン山崎「ではポスター用の写真撮るのでキッチン前に出演御三方集まってください。」
カメラマン山崎「はい行きますよ。」チェルは写真を撮られるのが実に10年振りぐらいだったのでカメラのフラッシュがそれはそれは耐え難いものであった。そのせいでただの集合写真一枚撮るのに、かなり難航した。どの写真に写るチェルも半目なのである。撮り続けて30分、山崎、憤慨。
山崎「もう嫌だ!あいつどうにかしろよ!」恋人と語っていたカメラを蹴り、泣き叫んだ。すると、問題のチェルが口を開いた。
チェル「早くしてもらっていいですか」
山崎「殺す」淡々と言い捨て横にいた音響さんのマイクを奪い凶器にしてチェルに襲い掛かった。さすがにヤバいと思った監督は決死の覚悟で山崎をなだめた。監督「落ち着け落ち着け」猛獣を諭すような優しい口調であった。山崎「俺はあいつを殺してここで死にます。放してください!」
監督「そんなこと聞いて放せるかよ。ここであった不祥事は俺の責任みたいになるからやめろ!」すると山崎は徐々に自分を取り戻していった。そしてカメラの定位置についた。
山崎「さっきは取り乱してすいませんでした。」と言い撮影を続けた。でもやっぱりチェルは半目であった。そんな半目のチェルを見て山崎は蔑むように微笑し、データを削除した。遂に再開後8枚目、チェルの目が開いている。山崎は優勝でもしたのかとツッコミたくなるくらい大いに喜んだ。監督もすぐさまカメラに駆け寄り、「よかったな」と大歓喜して山崎を抱きしめた。だが喜びもつかの間、改めて写真を確認すると、吉澤アナが半目立った。それを知った山崎は家でも燃えたのかとツッコミたくなるくらい、叫んだ。そして気を失った。
監督「おいしっかりしろ!気にすんなあとでフォトショでどうにかするから!」
吉澤アナ「ほんとにわたしのせいですいませんでした!」彼女は泣きそうな目で謝った。
監督「あんたは謝らなくていい。チェルが謝れよ」素直な感想であった。
そんな景色をチェルは自分の立ち位置から他人事のように見ていた。
料理長「地獄だな」初めて料理長は喋った。
チェル「そうっすね」
料理長「君は料理はできるのか」
チェル「したことないっす」
料理長「俺は何のために料理をしてきたんだろうな」と不安げに漏らした。
そうこう二人が世間話をしているうちに山崎が目を覚ました。
監督「じゃあ本日はこれで以上となります。ありがとうございました。」
目を覚まして間もなく宣言した。撮影わいとチェルは感じた。冗談だろ?と思ったが、全員帰り支度を始めている。そして振り返ると監督が背後にいた。壁に押し付けられたのがフラッシュバックするような光景であった。
監督「じゃあ行くぞ」
チェル「どこへ?」
監督「沖縄だ」
チェル「え?」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?