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【シャニマス】全イベントシナリオを振り返る初心者【イルミネ編】

こんにちは。
皆さんは『アイドルマスター シャイニーカラーズ』をご存じでしょうか。
オタクコンテンツに燦然と輝く王者『アイドルマスターシリーズ』のブランドの一つであり、ブラウザやスマホアプリで遊べる基本プレイ無料のゲームです。アイマスブランドでは最も若い作品ですが、5周年に向けてさらなる飛躍を見せようとしています。

わたくしごとですが、そんな『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(通称『シャニマス』)を最近になってプレイしています。
いわゆる「初心者」というヤツです。
今回はそんな初心者の目からみた、シナリオの感想を備忘録的に書き残せたらなと思います。

すでに既読の方は「そんな感想もあるんだなあ」ぐらいに、未読の方は次読むイベントの参考くらいに見て頂ければ幸いです(でも、ネタバレ注意です)。

今回は『イルミネーションスターズ編』
イルミネの過去に開催されたイベントシナリオを振り返っていきたいと思います。

ちなみに全体の雑感はこちら。是非。

※ネタバレ注意※

Light up the illumination

プロデューサーからユニット結成を伝えられた、
真乃、灯織、めぐるの3人。
はじめはなかなか息を合わせることができずにいたが、
少しのすれ違いを乗り越えながら、
次第にユニットとしてまとまっていく――。

イルミネーションスターズ 誕生の物語

『Light up the illumination』あらすじ

『Light up the illumination』はシャニマス最初のイベントシナリオであり、イルミネーションスターズの結成秘話を描く始まりの物語です。
ほとんど初対面で、まだ関係の出来上がっていない三人がいかにしてイルミネになってゆくか?が描かれます。

本シナリオにおける主人公(的な役割を負っている人物)は、風野灯織です。

後ろでまとめた黒髪が印象的な、クール系美少女。自分が納得するまで努力を欠かさないストイックな性格の持ち主。高校1年生。

アイドルマスターシャイニーカラーズ 公式サイトより

彼女は真面目でストイックな反面、不器用な部分も目立ちます。出会ったばかりの真乃やめぐるに、自分なりに真剣に考えた想いを伝えたいと思っているにも拘わらず、つい突き放したような言い回しになってしまう。それによってうまくコミュニケーションがとれず、お互いにギクシャクした時間が生まれてしまいます。
ファンの間ではもっぱら「狂犬時代」と呼ばれている灯織が、本シナリオでは成長をみせ、真乃とめぐるを受け入れるまでになる…その道程を描いたのが本シナリオです。

私はこの『Light up the illumination』のシナリオのテーマを、
「チームになる(ひとつになる)」
であると捉えました。

元々はアイドルになった経緯も動機も、趣味嗜好もバラバラだった三人が、互いを受け入れることで「イルミネーションスターズ」という一つのまとまりになっていく。プロデューサーが単に考えただけの名前ではない「イルミネーションスターズ」になっていく…そのように捉えたのです。

うん…………

いやまあ、それはみての通りじゃん?(愛依)

自分でも、凄く当たり前のことをいっていると思っていますが、重要なのは「一番最初にこのテーマのストーリーをやったこと」だと思っています。

なぜなら、ここから始まるイルミネのイベントシナリオはどれも、「このテーマを様々な角度から捉え直していく」話になっていると思っていて、
いわば『Light up the illumination』はその土台となるエピソードなのです。

「ひとつになる話」をド頭にしているということは、だからとても大切なんじゃないかと思ってます。

そんな『Light up the illumination』ですが、話はシンプルで味わいやすい内容になっていました。
いまとなっては新鮮な、互いにぎこちないイルミネの面々。狂犬な灯織。仲良くなったあとに「嫌われた…?解散…?」とすぐ不安になっちゃう灯織。

ネガティブすぎやしないか?

見ていてほっこりする部分も、グッとくる部分もある良シナリオです。

個人的に印象に残ったのはプロデューサーの活躍でした。
彼はこのシナリオにおいては決して多くを語らない立場でしたが、灯織と二人が打ち解けるきっかけとなる「臨時レッスン」を仕向けたり、三人を見守る立場としてナイスな立ち回りをしていましたね。


Catch the shiny tail

合同ライブが近づくにつれ、
真乃の心に、いつかの疑問が浮かんでは消える。

「どうして私がセンターなんだろう……」

私が一番頑張りなさいってこと――
そう納得したはずなのに、
灯織とめぐるが眩しく思えてしまう真乃。
一方のふたりも、最近真乃の元気がないことに気づいていた。

『Catch the shiny tail』あらすじ

『Catch the shiny tail』はイルミネ2番目のイベントにして、全イベントの中でも屈指の人気を誇る有名イベントです。

タイトルは、イルミネの一曲目「ヒカリのdestination」のフレーズ「(輝きの)しっぽ」からきており、「イルミネらしさ」「シャニマスらしさ」の詰まったお話に仕上がっていました。50本以上あるイベントシナリオの中でも、今なお人気上位層に食い込み続ける本シナリオの人気っぷりは、さすがですねぇ。
余談ですが、友人の一人(シャニマスをキュレーションしてきた奴)がシャニマスをプレイし始めるきっかけになったイベントでもあります。

この物語の主人公は、イルミネのセンター・櫻木真乃です。
彼女には人を惹きつける不思議な(かつナチュラルな)魅力がある一方で、自分に自信がなく、はじめの一歩を踏み出せない臆病な部分があります。そんな彼女は、(あらすじにある通り)「どうして自分は、こんなにも魅力的で凄い二人を差し置いて、センターをしているのだろう」と疑問を感じるようになる……そんなお話です。

『Catch the shiny tail』で描かれているのは、『私たちにとっての、私の居場所』なのかなと思っています。

イルミネーションスターズとして一つにまとまった「彼女たち」にとって、「櫻木真乃」の居場所はどこなんだろうか?それは裏返せば、「彼女たち」にとって灯織やめぐるの居場所はどこなんだろうか、ということでもあります。「私たち」は「イルミネ」で、「私」は真乃、灯織、めぐるのことですね。
プロデューサー屈指のパンチライン「みんな特別だし、みんな普通の女の子だ」はまさにそのテーマをクリティカルに表現していて、「イルミネメンバーの隣に立っているときの彼女らは特別だし、彼女たち本人は普通の女の子でもある」ということでしょう。
それが本シナリオで彼女らが出した結論でした……

うん…………

そりゃそうじゃね?(愛依)

まあそうなんですが、一応、分かりきっていることもわざわざ書き記すことが大切なので。それに、『Light up the illumination』しかり、このテーマはイルミネのイベントを通じて繰り返し示されていくことだと思っているので、改めて明言しておきましょう!

ちなみにシナリオ面ですが、もちろんおもしろいし可愛いです。
後半の涙腺を刺激する名シーンの数々は語るに及ばず、最高なんですけれども、個人的には思いがけない遠出のシーンがすっごく好きです。

第3話「彼女のキラメキ」より

アクシデントに、はじめはオロオロしていた彼女たちでしたが、「どうせなら餃子食べて帰ろう!」ってなる感じが……「んあああああ~~青春やぁ~~~!」と悶絶しちゃいます。
あるよね、そういうの。いいよね…。

他にも、一日警察署長を務める灯織、密着警察24時ごっこするイルミネなど、ほっこりするシーンも多いですね。クリスマス越境からの持ち越しの要素もありますし(ただ、事前通読は必須ではないかも)、感動だけではなく楽しいシナリオにもなっていると思います。

ちなみにラストシーンもじんわりとくるものになっていて、うまく飛べないコガモを三人で見守り、真乃が決意を新たにするという場面。
凄い二人の隣だから頑張らなきゃ!と感じていた真乃が、自然と二人の隣で頑張ろうと思える、シナリオを締めくくるにふさわしいラストです。
まさに空を飛ぶ鳥を見つめながら、ここから大きく羽ばたいていくイルミネの姿を予感させる良いシーンですね!


Star n dew by me

ぱっちりと目が覚めた
ベッドから跳ね上がってカーテンを開ける
大丈夫だ、晴れている

今日を盛り上げようとバラエティ番組にメールを出したところ
なんとアイドルが来てくれることになったのだ

最近人気が出てきたアイドルらしいが、
一体、どんな子達なんだろう?

待ちに待った特別な日
最高の学園祭になりますように

『Star n dew by me』あらすじ

『Star n dew by me』はイルミネ3回目のイベントシナリオにして、本当にマジでメチャクチャ大人気なシナリオです。好きなシナリオには個人差が出るとは思いますが、五指に入る人気っぷりではないでしょうか?そのくらいファンの多いシナリオです。
そして実際、人気っぷりも頷ける面白さなのでした……。

上記のあらすじでは「なんのこっ茶でござるか。まこと雅よのう」状態だと思いますので簡単に補足しておくと……

物語は、「鬼ごっこバラエティ番組」の企画として、イルミネがとある高校の学園祭に参加するところからはじまります。鬼に掴まってしまうと「宝物」が奪われ、学園祭も盛り下がってしまうらしいので、鬼から逃げ回りつつイルミネは様々なミッションに挑戦していくのだが…

というような話です。
楽しそうな話ですねえ!

本シナリオの主人公は八宮めぐるです。彼女のパーソナリティを簡単に振り返っておきますと…

天真爛漫な性格で、誰にでも積極的に話しかける。とにかく元気で友達想いの女の子。日本人の父とアメリカ人の母を持つ。高校1年生。

アイドルマスターシャイニーカラーズ 公式サイトより

彼女は一見するといわゆる元気っ子なわけで、反面様々な怪文章を生み出した【チエルアルコは流星の】などからも分かるように、孤独へ感応する魂の持ち主でもあります。めぐるのGRADやLP、あるいはソロ曲などにも繰り返して登場する「応援」という単語は、まさにその「孤独に感応し、それに手を差し伸べる。ただし孤独を否定しない」というめぐるのスタンスにぴったりフィットしているのだと思います。

さて…そんな『Star n dew by me』のシナリオテーマを自分は、『自分や他人を特別だと受け入れること』だと思っています。

めぐるは頼まれ事、助っ人を求められると断れません。本人がそれを楽しいと感じているのと同時に、それはとかく目立ってしまう容貌から、学校で浮いてしまわないよう生きる彼女なりの処世術だったのでしょう。そしてその行為の本質は、「誰も特別扱いしないこと」だったわけです。

しかしこれまでの物語を経て、彼女らは互いに特別な存在になっていました。『Catch the shiny tail』にてそれを強く感じていたのが真乃だったのでしょう。シナリオラストでも、彼女が事態を大きく動かすのです。
(あっ、思い出してたら泣きそう…。)

だからこそ、めぐるは「特別でなくても一緒にいたい」という「特別」を、受け入れることが出来た。

この身体は、自動的に泣くように出来ている。

だからこのシナリオは、『自分(めぐる)や他人(イルミネ)を特別だと受け入れること』を描いていたのだと思います。

うん………………

たぶん先人がもっと厚みのある感想・考察を書いてらっしゃると思うので、深みはそちらに譲るとしまして……

シナリオ面でも、非常にぐっとくる描写が多いです。本当に名台詞が多く、プロデューサーとめぐるのセリフ「心の中でいつもいつも、大声で」とか、「代わりに、ここに歌を置いていくよ」とか、「違うよ、めぐる。みんなで花火を見てたから、だよ」とか、ああ…泣きそう。

すごく「セリフの力」を感じさせてくれるシナリオだと思っています。


くもりガラスの銀曜日

(キミに、伝わりますように)

忘れかけたいつかの香り『雨粒のインク』
キミをまるごと知らなくて『食パンとベーコン』
輝き出した12文字『素敵色のハニィ』――……

星のしずくが、時計の針を回していく
忘れものをたどる連作短編

(キミが、伝わりますように)

『くもりガラスの銀曜日』あらすじ

個人的に大っっっっ好きなシナリオです。
友達と「イベントシナリオトップ5を決めよう」という与太話でも第3位にするくらいには大好きで、本当にとにかく、もう大好きです。「連作短編」という表現も納得の、静かな部屋でしっとりとページをめくっているような読み心地のシナリオです。

『くもりガラスの銀曜日』は構成に特徴のあるシナリオで、連続した時系列の『現在』の合間に、とある時点の『過去』をザッピングしてみせるストーリーです。『過去』は様々な時点を描いていて、『Light up the illumination』や『star n dew by me』のその後らしきシーンも出てきます。ぎこちなかった頃の彼女らと、互いに信頼し合っている彼女らを交互に見ると、こう、じーんとくるものがあるよね…

本作のシナリオは風野灯織が主人公となっています。
『くもりガラスの銀曜日』は過去を振り返るという構成の都合上、大きな出来事が起こらず、灯織が大きく成長するというわけではないんですが(むしろ、成長を実感するようなシナリオですよね)、語り部として灯織にスポットが当てられています。

『くもりガラスの銀曜日』のテーマは、『他人同士であることを見つめる』、そして『物語の現在地を捉え直す』ということだと思っています。
このシナリオは、イルミネイベントの一区切り、
言うなれば『第一部完』にあたります。

まず『他人同士であることを見つめ直す』についてですが、
この言葉は換言すると、『ひとつであることの再定義』だと考えています。その象徴となるのが、第1話『食パンとベーコン』のワンシーン。

『Light up the illumination』ラストの真乃のセリフ、「お互いを大好きだと思ったメンバーが集まった」に対して、その直後の灯織は「そこまで断言できない」と価値観を相対化しています。

これはつまり、『Light up the illumination』にて示した「チームになる(ひとつになる)」ということに対して、一旦彼女らを「他人同士」に戻すシーンなんだと思います。

なぜそんなことをしなければならないのか。
それは、プロデューサーや取引先の人、あるいはプレイヤーにすらうっすらとあるこの価値観に対して、アンサーを返す必要があったからだと思います。

『ひとつであることの再定義』とはつまり、イルミネはひとつのチームであると同時に、同化した存在ではないということ。それぞれの存在が『他人同士であること』を、改めて見つめ直すということ。

イルミネーションスターズのここまでのシナリオでは、例えば
『Light up the illumination』の灯織、
『Catch the shiny tail』の真乃、
『star n dew by me』のめぐるのように、
「私と私たち」を何度も描いてきました。そして、それを経るごとにイルミネの絆や結束は盤石の感を増していました。それを改めてこの『銀曜日』で相対化することによって、物語の現在地を捉え直し、これまでとこれからを強く意識させるシナリオになっているのです。

余談ですが、同じ「お互いを知らない同士」であっても、その性質は大きく変わっているという現在と過去の対比が、非常にじーんときますね…!

もう一つのテーマ『物語の現在地を捉え直す』についても、上記のような論旨からテーマ性を感じられるのではと思いますが、
加えて本シナリオのラストからもそれが分かると思っています。

『くもりガラスの銀曜日』には、くもりガラス越しの花々、プロデューサーの鞄、お互いの秘密……など、「イルミネのスタンス」をメタファーする要素が数多く登場します。私はこれらを、お互いの関係性を象徴する要素であると同時に、「シャニマス」という作品のスタンスを再確認するための要素でもあったんじゃないかと思っています。

くもりガラス越しの花々などは、すなわち「手は届かないけれど、手を伸ばし続けたいと思えるもの」なわけで、本シナリオではそれをお互いの関係性に重ね合わせて語りましたが、これは同時に「シャニマス(あるいはイルミネ)が目指していくもの」でもあると思いました。

サービスが始まったばかりのシャニマスは当然0からのスタートだったと思うので、初期のイルミネと同じように、何かを目指す立場だったと思います。それが、サービスの年月を重ねてシャニマスにも様々な蓄積がなされてくると、「さらなる高みを目指す」ことになります。

それはシャニマスの飛躍なワケですから、当然歓迎すべきことである一方、ここまでの道のりもまた楽しかったよね、輝いている宝物だったよね…という想いがあるのも事実です。
そんな、「これからさらなる飛躍を」「これまでの大切な思い出を」の両輪を描くのが『銀曜日』なのです。

最もそれを強く感じられるのは、物語のラスト、「喫茶店の店名が判明するシーン」です。

シャニマスはこれからも、頭上に輝く星を目指して飛躍していく……ただ、一方でくもりガラスのこちら側は?今まで自分たちが立っていた場所、シャニマスの「これまで」はどうだったのだろう?

それに対するアンサーが、「満天星」――「これまでも、これから目指していく場所と同じように輝いていた」ということなんではないかと。

以上の理由から私は、
『くもりガラスの銀曜日』のテーマが『他人同士であることを見つめる』、そして『物語の現在地を捉え直す』であると思ったと同時に、
「シャニマスのこれから」を思い描く「第一部完」でもあると思ったのです。


青のReflection

今日はみんなで星を探そう
壊さぬように手を伸ばせば、ほら

野をゆく乙女の真珠飾り
つよがりな白鳥のしっぽ
あやしく輝くくじらの心臓

こぼさぬように、腕に抱えて
宇宙の片隅、君と笑おう

『青のReflection』あらすじ

『くもりガラスの銀曜日』が第一部完であるならば、『青のReflection』は第二部開幕を飾るシナリオイベントです。
例によって上記のあらすじでは「なんのこっ茶」だと思うので、簡単にあらすじを振り返っておきますと、

本シナリオはイルミネがとある番組に出演するところから始まります。毒っ気のある司会者から振られた「喧嘩しないのは、自分がないからじゃないか?」という問いかけに返答できなかったイルミネ。自分たちはどうして喧嘩しないのだろうか?そんな疑問と共に、番組の企画に挑んでいく…

というようなお話です。複雑な構成をしていた『銀曜日』に対して、お話の主題が早々に提示されたり、番組の企画進行と共にストーリーが進行したりと、シンプルな構成になっているのが特徴でしょうか。

本作の主人公は櫻木真乃です。彼女は前述の通り、ぽわっとした癒やすオーラを放っていると同時に、自分に自信のない女の子です。一方でこのシナリオにおいては、真乃の「芯の強さ」を強く感じることが出来て楽しいです。『Star n dew by me』の終盤しかり、真乃にはそういった「強さ・かっこよさ」がありますよね!

『青のReflection』のテーマは『(自分を)どう伝えるか』です。正直もう、中身を読めばそりゃそうじゃ状態だとは思いますが。

私的な本シナリオの肝は、第二部開幕に従ってテーマ性が外部へと拡張したということです。
『Light up the illumination』から始まる一連のシナリオでは、「イルミネと個人」の関係性を描くドメスティックな物が多かった一方で、
『青のReflection』から始まる一連のシナリオにおいては、「(イルミネの)外の存在」を強く感じさせる内容になっています。『はこぶものたち』なんかは強烈にそれを感じさせますが、本作においてもそれは同様です。辛口女性司会者の他に、喧嘩してしまう少年たちが登場し、シナリオに彩りを添えていますよね!

シナリオ面で印象に残っているのは、プロデューサーの存在でしょうか。といってもこのシナリオにおいて彼はかなり早い段階でフェードアウトして、イルミネの三人に宿題を託します。
『star n dew by me』のラスト「そうなのか?じゃあまた必要があったら教えてくれ」という台詞にも通ずるものがあると思うんですが、プロデューサーはイルミネの自主性を重んじているというか、信頼を置いているように見えますよね。それが凄くいいなあと思います。

あと、個人的に一番好きなのがラストシーン。空港の窓から、滑走路の誘導灯が星のように綺麗だと三人で話す場面です。個人的にはこのシーンが「二部の開幕だなぁ」と感じていて、というのもこのラストシーン、『Catch the shiny tail』のラストと対照になっているんです(多分)。

イルミネーションスターズとして羽ばたきつつある三人が、飛び立つ鳥を見上げるラストの『Catch the shiny tail』と、星のような誘導灯を見下ろし、飛行機に乗り込んで飛び立とうとする『青のReflection』
昼と夜、見上げるのと見下ろす、地上に立っていると飛行機に乗って飛び立つ。様々な対照が見て取れると思います。
星空を目指し輝こうとしていたイルミネの3人が、今は星空を越え、宇宙を現在地としている(足下に輝き)。そしてなお、さらなる飛躍を目指すというのは、銀曜日から続く「これからのイルミネ」を感じさせる内容となっています。
(ちなみに、イラストが【チエルアルコは流星の】と対照的な構図になっている点も印象深いですね!)

三人の成長、そしてテーマ性のシフト……二部開幕にふさわしい爽やかな読み心地のシナリオでした!


はこぶものたち

やがて春の訪れを聞こうという季節

芽吹いてくるどんな葉も
同じ形をしていないように

イルミネーションスターズの3人もまた
それぞれの時間と向かい合っていた

ゆっくり目を閉じて、耳を澄ましてみよう

そしてたくさんの心が隣り合う場所で
君の座らないたくさんの席を想おう

君と君の無数の隣人のために

『はこぶものたち』あらすじ

イルミネイベント第6回目にして、シャニマスシナリオの中でも屈指の問題作(?)。イラストからもただならぬ雰囲気が感じますね。例によってあらすじだとよく分からないと思うので、簡単にあらすじを振り返ります。

新進気鋭のフードデリバリーサービスの広告塔として起用された真乃、
環境に優しいアパレルブランドのモデルとして起用されためぐる、
サッカー番組に出演が決まった灯織……
3人がそれぞれの仕事と向き合う中、サッカーのハーフタイムショーでライブをする話が持ち上がり……

そんな感じのお話です。
3人それぞれに異なる視点が存在する、ということが大切なシナリオではありますけれど、物語の主の語り部は風野灯織だと思います。本シナリオが纏っている独特な「生真面目な雰囲気」をある意味体現するキャラクターでもありますし、ラストの彼女のモノローグは屈指の味わい深さを誇っていると思っています。

本シナリオのテーマは『他人同士でひとつになる』ということだと認識しました。これまでのシナリオで何度も語られてきた「私(個人)と、私たちの関係」を、さらにもう一段階深く掘り下げるテーマです。銀曜日などにもあった、「キャラ同士を過度に同一視せず、あくまで他人同士であることを再認識する」というスタンスが、ここにも貫かれています。

本シナリオには、常に2つの視点が描かれます。
例えばフードデリバリーをめぐる描写には、「利用者と配達員」「配達員側の事情と迷惑配達員への苦言」、若干フードデリバリーから逸れますが「兄やんと灯織(を含むSNSユーザー)」などがありますね。他にも「サッカーファンとアイドルファン」「(エシカルに対して)肯定派と否定派」など、非常に対照的な2つの視点が常に描かれ続けます。
そして、「イルミネの2人と、決断をしなかった私」というのもまた、イルミネのイベントにて再三描かれてきた「私と私たち」というテーマに通ずるものがあると思います。

「2人が良かったら私も!」という考え方は、決して悪い考え方というわけではありません。ただ、正しい考え方でもない。私たちが生きる現実にはそんな、どちらとも言えない価値観が沢山存在していて、それは時々思い出すと憂鬱になる事実ですが、彼女たちが生きている世界もまた、そんな私たちの世界と地続きだということですね。
ともすればこれは、フィクションに過度な(皮肉るような)現実感をもたらしかねないものですし、「アイドルマスター」の系譜で物語るには高カロリー過ぎる気もします。そんな領域にも果敢に切り込んでいくシャニマスが、私は好きだ…。

本作の肝はこうした、「良くも悪くもない」、ただ在るだけの事実を描いているという点にあると思います。
「エシカルは欺瞞だ」と嘯く人間を、意地悪な存在だと描いたって、別に誰も怒らないのです。けれど、このシナリオは違う。欺瞞だと考えている人間も、そうでない人間も等しく、ただそこにいるだけの人でしかない。「自分ではない誰か」でしかないと描いていることが、このシナリオの凄みに繋がっているように思います。

「きみの座らないたくさんの席」とはつまり「自分ではない誰かの存在」という意味でしょう。

今、この席に座ったら、サポーター側の席には座れない。エシカルを欺瞞だと口にすれば、サスティナブルなアパレルブランドのデザイナーにはなれない。食べ物を運んでいる時、配達を待っている側にも、SNSを通じて配達人を応援することも出来ないのと同じで。

自分であることは、他人にはなれないということなわけです。

物語冒頭で、自転車を漕ぐ「兄やん」を想って灯織はこんなことを語ります。自転車を漕ぐという行為は肉体的な作業で、マラソンとかもそうですが、ある意味徹底的に自分と向き合う行為です。だから風の音が、どうして自分が走っているのかを教えてくれるんじゃないかと、灯織は思ったわけです。
けれど物語のラストで、灯織はこんなことも考えます。

サッカーコートを走る、リフティングの練習をする、食べ物を運ぶ…
そのいずれも肉体的にはもの凄く孤独で物理的な現象です。一方で、これらの行為を通じて「何かを運ぼう、伝えよう」とすると、それは自分のためであっても誰かのためになるかもしれない。そうなると、信じていて欲しい。そんな優しいメッセージが込められたラストには、いつも不思議な涙がこみ上げてきてしまいます。

「自分がキラキラしたアイドルになるために」と口にしていた灯織がこんなことを言うんだから、本当にずるいよなぁ……。

で、忘れかけていましたが、本シナリオのテーマだと思った『他人同士でひとつになる』というのは、
そうして他人同士であるという(排他的にさえ見えかねない)絶対的な事実を受け入れ、それでもみんなで生きていこうという誠実なメッセージだと私は認識しました。キャラクターをキャラとして特別扱いするのではなく、本当に命を持った存在として見つめたいというシナリオ陣の熱い魂を感じずにはいられません(考えすぎ?)。

時には敵対的で、排他的な他人同士というのも存在して、けれどそんな他人同士を、「きみの座らないたくさんの席」を、想うことでひとつになる。それが、シャニマスの捉えた社会ではないでしょうか。

これまでのイベントで「私とイルミネ」を描いてきたシャニマスが、このシナリオでは「私とそれ以外のみんな」を描いたからこそ、やはりイルミネイベントは「第二部」って感じがしますね。

全く手応えがないので自分なりの考察はここらへんで切り上げるとして、シナリオ面で印象に残った点はやはり、語弊を恐れずに言いますと圧倒的なリアリティでしょう。

フードデリバリーで急成長したユニコーン企業によるサッカーチームの買収、サッカーファンとアイドルファンのいさかい、エシカルを説くブランドとそれを冷笑する意見、配達員への苦言……いずれも、現実そのものと切り取ったわけではないにしろ、それに近しい迫力のある描写です。
「いつからラインを踏み越えるんじゃ!?」(なんのラインだ)とハラハラさせられてしまいます。

ただまあ……さくっと読めるような内容でも長さでもないので、高カロリー注意とだけ付け加えておきます!


For Your Eyes Only

学園祭の季節
真乃のクラスは謎解きカフェを出展することになる
謎を作成するチームのひとりとして、頭を搾る真乃

時を同じくし
ミステリードラマにて共演することになった
真乃、灯織、めぐる
お互いの役柄について話すことを禁じられ
手探りのまま、謎へと挑む

交錯する視線
それぞれの胸に広がる想い

たくさんの選択肢の中から、何を己の正解と定めるのか
奈落の果て、微笑む少女は誰なのか
答えは――

『For Your Eyes Only』あらすじ

『For Your Eyes Only』はイルミネ最新イベントです(2022/11/22現在)。自分がリアルタイムで参加した初めてのイルミネイベントでもあります(自分が8月ぐらいからプレイしはじめたので)。イベントイラストをみて「めぐる!?」となった人も多いのではないでしょうか。

今回はあらすじが機能していますので、補足するところはありません。
真乃の文化祭準備と、イルミネの3人が出演するミステリードラマの2軸でシナリオが進行していきます。前作とは打って変わって比較的まろやなか読み心地のシナリオですが、そんな中にもイルミネイズムというかプリズムイズムというかが光るシナリオとなっています。

『For Your Eyes Only』のテーマもやはり、他のシナリオに描かれてきた他者との関わり、そんな中でも「他者理解」にスポットが当てられていると思います。

「人とは違う世界を見る目」(共感覚)を持つ女子高生漫画家・マノ。彼女は同じ世界(同じ気持ち)を見る存在を強く求めています。そんな彼女にしたいし、「同じ世界を見るが気持ちは重ならない」メグルと、「同じ世界を見られないが共感できる」ヒオリ。
互いは別個な存在だけれど、他者を理解しようとする、同じ世界を見ようと手を差し伸べるという「はこぶものたち」にも通ずるテーマがここにも描かれていますね。

このセリフ、すき

理解できなくとも、手を差し伸べる……という「他者理解」の姿勢は、同級生のSNS投稿問題に対する、真乃の姿勢からも感じられますね。
あの話し合いの場に真乃が立ち合う必要は、教師の言う通りあまりないんですよね。けれど、真乃は立ち合いたいと願い出ました。保健所に届け出るかどうかについて悩んでいた件も同じですが、真乃は何も出来ないかもしれないけれど、それでも考え抜いて、当事者でいたいという真摯な姿勢を持っています。
それこそが、イルミネ流他者理解、他者との関わりなんでしょう。

これが16歳!?!?!!!?!?!???!?!?

シナリオ面ではプロデューサーの立ち回りが印象的で、謎解きに関するアドバイスやSNS問題での迅速な対応など、かなり「デキる男」な面が目立つ活躍でした。『はこぶものたち』では若干、失敗をみせてしまった彼ですが、やはり本質的にはかなり「デキるマン」なんですよね。
憧れるなぁ。

前作からカロリーは控えめになって、口溶けまろやかだけど粒立った魅力もある、良シナリオとなっております。おもしろかったよ!

おわりに

えっ、13,000字以上書いてるってマジですか!?

というわけでイルミネーションスターズのイベントシナリオについて振り返っていきました。正直、イベントを再読するのにも時間がかかり、文章を書くのにも時間がかかりと、想定以上の大仕事になってしまいました。
次は、新規イベントが来る前にアルストロメリア編を書こっかなーなんて思ってましたが、こりゃあどのくらい先になるんですかね。

考察の真似事みたいなこともしましたが、正直行き当たりばったりで書いているのでクオリティとしては見られたものじゃないですね。
ただ、イルミネのシナリオは「自分と他者の関わり」を通底して描いているというのは間違っていないんじゃないかと思ってます。

結局テーマらしきものをだらだら語ってきましたけど、イルミネの「他人であることを受け入れ、それでも手を差し伸べ寄り添う」という姿勢を一言に換言するなら、やっぱりそれは「応援」なのでしょう。
『はこぶものたち』のラストでも灯織は、こんなことを言っています。

こうして振り返ると、イルミネだけにしぼってもイベントシナリオは粒ぞろいですね。普段はソーシャルゲーム、スマホゲームは全然やんないよーっていう人にも、本当に読んで欲しいです。
つくづく思うのが、シャニマスは「アイマスってなんだかなぁ」と何となくの偏見を持っている人にこそ、アイドル物の見方が変わると思うのでプレイして欲しいということです。

こんなにも真摯にキャラクターと向き合うビックコンテンツはあまりないですよ!?(波風の立つセリフ)

こんなだらだらと長いだけの記事、誰も読んでないと思いますが、読んでくださった方がいらしたらありがとうございます。
初心者の目から見たシャニマスの○○、こんな感じでしたよっていう記事をあといくつか書きたいなと思ってます。
何か聞きたい感想とかあれば教えてくださいー

では!

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