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或る日記 2日目 「銀杏並木と東京タワー」 2021年12月1日

昨日の雨は嘘かのように晴れていた。

外に出てみると、家より暖かいではないか。まだ秋なのだと感じる。

もしかしたら冬が家にしか訪れていないのかも、と思えた。北風だけ連れてきた部屋を出て、芝公園駅へ行く用事があった。地下鉄の入り口のそばには、黒く染まった闇に銀杏並木がある。

この辺りはやけに暗い。公園が大きいからであろうか、お店も少ない。入り口の手前に心ばかりの柵があり、その先には誰も踏んでない冬景色のように銀杏が降り積もっている。

私は、当然のように飛び越えていた。

その絨毯は、踏んでみると柔らかく、スニーカー越しにも、土の感覚とは違うものを感じる。今日、唯一の自然に触れた気がした。

そんなことを考えながら、ふと見上げると、木々の隙間からオレンジの光が漏れていた。空の漆黒とのコントラストが眩しい。

よくよくみていると、案外見下げられてる感覚があるものだと思った。ずっと変わらず見上げている。20年経っても変わらず、私は小さい。

ウルトラマンみたいに大きくなって見下げてみたい気持ちとなった。

そしたら、庵野秀明監督を思い出す。ああやってウルトラマンになって、東京を見下げたらどんなに気持ちいいのだろう。

だけど、ずっと見上げているから、進む方向がわかる気がする。同じくらいになってしまうと、何を目指すかなどわからない。もしかしたら、その象徴なのかもしれない。

何故だかわからないくらい煌びやかなものに引力を感じて振り切り、薄暗くボロボロな地下鉄の階段を下って帰った。

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