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ベビザラスで夫と死守したベビーサイドカー

たっぷりのカタカナの中に「死」の文字がはいってしまった。だけども、これは死守だったのである。私たち夫婦にとって、産まれて6ヶ月の次女を乗せたベビーカーの後ろに長女をくっつけるサイドカーを購入するのは、必死だったのである。



その前に、こちらをご覧ください。



3ヶ月の入院生活をおえ、次女が退院してきたのは金曜日。

週があければ、月曜日。幼稚園の送迎が始まる。

「サイドカーを買わねば」

日曜の朝だった。

日常生活ボケして私は、明日から始まる送迎への使命感にかられていた。「ネットを見てもよくわからん。実物が西松屋にあるかもしれん」

蒸し暑い梅雨どきの夕方だった。夫は車を走らせた。だけど、そこにはなかった。お姉ちゃんのお菓子を買うだけの浪費に終わってしまった。

諦めて家に帰っても、娘たちのごはん、自分たちのごはん、家族4人順番のおふろ、長女のハミガキ、ねかしつけ、目をつぶっているように見えても起きてくるかもしれない次女。眠らない街はあえて眠らないかもしれないが、私たち夫婦は眠れないかもしれない家に帰る。

寝たり起きたりを繰り返して、月曜日の朝を迎えるかもしれない。想像できる疲れた顔をマスクで半分隠し、なんとなくの外出着でベビーカーを押し、その上、もしも、もしも、お姉ちゃんが「だっこ……」とかわいい手を上げて、上目遣いで私を見てきたとしたら……。

できない。物理的に不可能。抱っこはしてあげたいよ、でもムリ。片手でベビーカー、片手で500ミリの水筒をぶらさげたお姉ちゃん。

ですので、「サイドカー死守」だったのです。

夫は駐車場で検索した。「ここなら、あるかもしれん」車で20分。往復時間、吟味する時間、晩ごはん、それらを考えるとフツーなら、もう帰らなければいけない時間。フツーってなんだ。急に強気になる。

次女が3ヶ月も入院していた私たちにとって、フツーは一番取り戻したい日常。だからこそ。明日の朝を気持ちよく迎えることがフツーになるための、とりあえずの手段なのだから。

沈む夕日を背に車を走らせた。

そして、そこにはあった。

閉店のタイムリミットまで、ちょうど1時間。私が声をかけた男性スタッフさんがいい人だった。試乗できるということだった。だけれど、いい人だからか、新人さんに対応を任せていた。新人に経験を積ませるためだろう。新人さんは一生懸命して対応くれた。はじめての経験にありがちな、「少々お待ちください」が何度もあった。

先を見越さないために起こる、お客様からの質問や要望に即座に答えられないから。それでも私たちは待った。知らないことを知っている人に聞きに行くことは、いいことだと思っていたから。

知っているフリをしてテキトーな答えでかわされるのはぜったいにイヤだ。その度に、だるそうだけど経験のありそうな女性がやってきた。言い方として申し訳ないが、めんどくさそうに新人さんに教えていた。

しかも、「ムリかもしれないけれど……」と小さい声で言い残し、帰っていった。

どういうこと……? 聞き返したかったが、引き止める気にはなれなかった。

新人さんは一生懸命、やってくれていた。だけれど、先程の女性が言いはなったワケを知っていたようで、私たちが持参したベビーカーの下の棒には余白ができて、しっかりハマらないとの回答だった。

力をいれて引っ張っても、紐がかたくてフィットしない。私と夫は納得できなかった。夫は商品の箱に写っているサンプル写真を指して、これとは違うけど?(もっと引っ張れば、フィットしそうだけれど?)と言った。

だけれど、「かなり力を入れてるんですけどね」とすぐに返ってきた。「ビータイプのバギーなら、合うかも」と言うので、今度は私が「じゃあ、その合うバギーに付けてみてもらえませんか?」と言った。

わかりました、と言って新人さんがまた誰かに指示を仰ぎにいってる間に、夫がしゃがんでサイドカーをいじっり始めた。そして、「ほら、できた」と満足げな声がした。

やはり、サンプル写真の通りだった。持参のバギーにもフィットした。

私たちは心の中でハイタッチした。

小走りで帰ってきた新人さんに、心の中でドヤ顔をした。私たちは死守したのだ。欲しかったサイドカーを最も納得できる形で。

レジに向かいながら思った。夫とふたりの連携で、そこまで持っていけたことがうれしかった。

これは入院生活で培われたワザだ。

夫婦の生きのびる知恵だ。

ここまで長々と書いて、いいたかったこと。それは、私がやりたい! こうなりたい! を口にして、夫がそれを実現してくれる最高タッグは、もうここにある、ということ。

夫とはじめて会ったとき、「あなた持ってますね」と言った、その言葉は「あなたには書く才能がありますね」といってくれたようにも今、思うから。

だから私は、夫に素直になろうと思ったのです。

おしまい。

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