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ルーヴル美術館展ー愛を描くー@京都市京セラ美術館

ルーヴル美術館展に行ってきました。

今回の展示は、展示順が面白いなと思いました。
単に時代順に展示するのではなく、「愛」にまつわるテーマそのものを時代順に配置していました。

大きく4部構成となっていて、ルネサンスで「再発見」された、ギリシア・ローマ神話の愛から始まります。神話の有名な恋人たちや、気に入った女性を掠奪する神々、悲劇的な結末を迎える恋人たちなど、いろいろなテーマのもと絵画が展示されていました。
これらのテーマはルネサンス以降も長きにわたって人気なので、同じ題材の16世紀の絵と18世紀の絵を並べて見れるわけです。絵のタッチが変わっていたり、フォーカスされる部分が変わっていたりと、その時代時代の嗜好や絵画の立ち位置の変化を感じることができました。

ルネサンスの次はキリスト教的な愛です。こちらのテーマは、キリスト教的な赦しの愛や聖家族の模範的な愛、人類のために犠牲となったキリストの愛や、信仰のために殉教した聖人の愛などがとりあげられていました。
ルネサンスを経て、宗教画の描き方も変わっていくなかで、聖家族や聖書の登場人物に、聖性よりも、より人間的な愛を見出すようになったと展示を見ていて感じました。ここでも、世紀を超えたキリスト教的な愛の表現を見ることができたのが良かったです。

3つ目は人間どうしの愛です。神々や聖書の登場人物から、実際に今を生きる人間が主役になります。ここでは、オランダ風俗画やフランスの牧歌的な恋愛、リベルタンなどがテーマとなっていました。
恋人どうしの微笑ましいものから、売買春のお金を渡す瞬間、田舎のセクハラおじさんまで、人間関係のなかでさまざまな形で発露する愛や性の表現を見ることができます。この時代は、まだまだ注文制作の時代だと思うので、これらの作品には注文者がいて、自宅に飾ったり誰かに贈ったりしていたと考えると、どんな人がどんな理由で注文してどう使ったのかなと思いを馳せながら鑑賞しました。

最後はロマン主義です。このゾーンだけは写真撮影ができました。

フランソワ・ジェラール《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》
アリ・シェフェール《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》

ここでは、未成熟な男女が描かれていることに注目するようキャプションで促されます。たしかに、ここまで見てきたような筋骨隆々の男性や豊満で成熟した女性とは異なり、中性的に描かれる青年や、アモルのキスに驚いたように呆然とするプシュケの純粋さなどが印象深かったです。
また、個人的には、「死に至る愛」をテーマにした作品として、『ロミオとジュリエット』やダンテの『神曲』を題材とした作品があるのが興味深かったです。ルネサンスの時代に創出された愛が、ロマン主義の愛のなかで再生産されている様子を見ることができました。

今回の展示は、単に美術史をなぞるのではなく、テーマごとに作品を配置したことで、有名絵画や有名画家だけがポイントとなっていなかったのがとても好きなところでした。そのテーマが時代や地域によってどのようにとらえられ描かれたのか、描かれる愛はどのようなものであるべきだと当時の人々が感じていたのかを受け取ることができたように思います。

ルーヴル美術館は、イギリスのバーミンガムに交換留学中の2019年に、パリに旅行した時に1度だけ行ったことがあります。その日の午前中はオルセー美術館に行き、午後はまるまるルーヴル美術館で過ごしました。

歴史をやっている身としては、美術品の前に、実際に使われていた王宮であることに興奮しました。柱や壁を不必要に触りまくり、石の階段のすり減った部分に年月を感じて写真を撮っていました。
私の階段コレクションです。

見たい作品を決めて、展示室も調べて行っていたのですが、頻繁に配置換えがあるようで、サイトによって違うことを言っていたり、どのサイトが言っていた部屋とも全く違う部屋にあったり、学芸員の人に聞いてもわからないと言われたりしました。こうなるともう自分で歩いて探すしかなく、王宮を彷徨いに彷徨いました。見たいリストを消化して、最後にルイ14世の有名な作品にたどり着いた時には脚が棒でした。

実際にルーヴル美術館に行ったことがあっても、当然ながら全ての作品を見ることは不可能で、どうしても絞らなければなりません。今回のルーヴル美術館展のような、海外の大きな美術館展の良いところは、実際に現地に行くと、自分の興味や趣味を優先して、限られた時間で見て回るなかで見落としてしまう作品に出会えることだと思います。
幼い頃から、母によく美術館展に連れて行ってもらっていて、中高生になっても1人でよく行っていました。が、「有名な作品は目玉の作品しか貸してもらえていない。現地に行った方がいいに決まっている」と心のどこかで考えていました。
学部での美術史の授業を受け、歴史学の道に少しずつ進むなかで、有名作品だけ見ればいいわけではないということが分かりました。それに、現地に行ったところで、意識して見れるのは本当に限られた作品数だけだということもわかりました。意識の外にこぼれ落ちた作品を、日本にいながらにしてこれだけ見れるのは、とても貴重な機会だと思うようになりました。

今日のルーヴル美術館展は、学部のサークルの後輩と行きました。朝9時に集合してカフェでブランチをして、私のお気に入りの西尾八ツ橋の里でお昼を食べてから美術館に向かいました。

リグナムのフレンチトースト
西尾八ツ橋の里の冷やし鴨そば

舌も目も嬉しい1日でした!

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