寿命

『……欲しいか……』
「はっ!?」
『力が欲しいか……人間……』
「これはもしかして、A○MS!?」
『違う』
「うわぁ! 一目で分かるほどの悪魔っぽい悪魔!」
『ククク、いかにも、俺は悪魔……人間、力が欲しいか?』
「うーん、なんだかよく分からないけど、欲しいです!」
『ククク、ならば人間……俺と契約するのだ』
「け、契約!?」
『そうだ。お前に力を授ける代償として……』
「ゴクリ」
『お前の寿命の、残りの三分の一を頂く』
「え、三分の一?」
『三分の一だ』
「普通半分じゃないんですか?」
『半分は多いだろ……法に触れる』
「悪魔にも法律があるのか」
『当たり前だ。我々は法に則った上で人間と契約する』
「そうなんですか……まぁ、三分の一なら……分かりました、契約します!」
『ならば、まずはこれを読むのだ』
「これは……魔導書?」
『約款だ』
「約款!? 分厚い!」
『質問があったら俺を呼べ』
「あはい」
『読み終わるまでちょっとそこのSwit○h借りていいか?』
「え、いいですけど……どうするんですか?」
『イカやる』
「えぇ……」
(しかもうめぇ……)マンメンミ!
『読めたー?』
「読めました」
『ゴホン、では人間、ここに捺印するのだ。印鑑は持っているか?』
「えっ! 印鑑ですか……参ったな、どこにやったか」
『あぁー、良い良い! 拇印で良いから』
「拇印……まさか、血、ですか……?」
『はい、朱肉』
「あはい」
『ここね、ちゃんと押してね』
「はい」
『はいこれ、拭く用のティッシュ』
「うわぁ、すげぇ魔法っぽいのに、出てくんのティッシュか……」
『……よろしい。契約完了だ、人間よ』
「随分あっさりなんですね」
『そういうもんだ』
「なんかこう、黒っぽいモヤモヤのエフェクトとか」
『そういうもんだ……それと人間』
「な、なんですか!? もしかして、やっぱり気が変わって僕の事を食べるとか……!?」
『そんな事はしない。悪魔は契約を守る』
「そ、そうですか」
『そうではなくてな……領収書はいるか?』
「はい?」
『領収書だ』
「何のですか?」
『お前が支払った残りの寿命の三分の一だ』
「えっ!? 領収書切れるんですか!?」
『切れるも何も……領収書無かったら魔・確定申告できないだろ』
「魔・確定申告!? 魔界にも税収があるんですか!?」
『そりゃ、魔界にだってあるよ……魔・税務署』
「はぁ、そうなんですか……とりあえずもらっときます」
『えー、寿命一ヶ月分、但し"力"代として……、と』
「ちょ、ちょっと待って下さい」
『何だ』
「一ヶ月ですか? 残りの寿命の三分の一なんですよね?」
『そうだ』
「僕の寿命あと二ヶ月ですか?」
『……そういうのは言えない事になってるんだ』
「え、でも」
『そういうのは言えない事になってるんだ』
「いやでも、さっき支払った寿命三分の一が一ヶ月なら、単純計算で、支払う前の寿命は三倍の三ヶ月ですよね? なら僕の今の寿命は、三引く一の二ヶ月って事じゃないですか?」
『……』
「違いますか? 僕何か間違った事言ってますか?」
『いや……悪魔は数字に弱いんだ』
「18782+ 18782は?」
『37564』
「嘘をつくな嘘を!」
『ああっ……!』
「じゃあ僕の寿命、あと二ヶ月ですか?」
『……そういう事にならざるを得んらしいな』
「あぁ……なんて事だ……あと二ヶ月で死んでしまうなんて……」
『……』
「くそぉ……こんな事なら……あぁ……」
『…………お、おい』
「何ですかぁ」
『そう……くよくよするなよ! ほら……あー、まだ二ヶ月もあるって考えてみろよ!』
「しれっと寿命が二ヶ月な事を認めた……」
『ああっ……! い、いやほら、確定申告すれば、いくらか還付されるかもしれないし!』
「何月ですか……?」
『えっ?』
「魔・確定申告は、何月にやるんですか」
『そりゃお前……年末だよ』
「今、何月ですか」
『九月……ああっ……!』


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