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Vol.1|まだいいかもしれない

#マガジン独白 |Vol.1|ノイズキャンセリング

ノイズキャンセリングの仕組みは、イヤホンに搭載されたマイクで拾った外部音をデジタル化し、その音の逆位相となる音を生成することで騒音を打ち消すしているらしい。人の声は聞こえるが環境音は打ち消すという機能まで開発されている。

「すごい!」と思いながらも実はあまり使ったことがない。環境音が好きでイヤホンをつける習慣がないからだろう。音楽やラジオよりも、ガタンと動く電車の音や、通り過ぎる家族連れの会話を聞いている方がちょっと楽しい気がするのだ。普段使わないからこそ、ノイズキャンセリングに切り替えるたびに「うわすごい」と驚く。そしてときどきふと思う。
自分にとって「騒音」ってなんだろうって。

今はまだイヤホンを付けないければこの機能を享受できないし、機械が周波数に応じて「騒音」であるかどうかを判断する。でも、もしも「騒音」の判断基準が人に委ねられ、聞こえる音を自由に選ぶことができるようになったら、自分はなにを「騒音」として判断するのだろう。

Netflixオリジナルシリーズ『ブラック・ミラー』には「ホワイト・クリスマス」というエピソードがある。その世界では「Z眼(ゼット・アイ)」と呼ばれ、目に組み込むことで写真や音楽などのアプリを利用できるデバイスが存在する。なかには「ブロック」機能があり、相手を「ブロック」すると解除するまではお互いが見えず、声も聞こえなくなる。こんな世界になったら私はなにをブロックするのだろう。嫌味っぽい上司のアドバイスか、ロマンチックな雰囲気も切り裂く爆音バイクか、どこからか聞こえてくる誰かの噂話か。

でもなんだかどれも、まだ聞いていてもいい気もする。知らないことがたくさんあるし、これから知れることがたくさんあるし、今はまだ「騒音」だと認定せず、受け止めてみるのも良いかもしれない。隣の席で盛り上がる「私生活が謎のイケオジ店長」を私も想像しながら、そんなことをぼんやりと考えた。

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