見出し画像

父親の背中

愛知のおばあちゃんちに帰省した。

帰り道、
「バス停まで送って行くよ」
と父親が言った。

シュボッ。
タバコに火をつける。

「じいちゃん、ばあちゃん、喜んでたよ。ありがとうな」

「うん、もう少し話したかったけどな」

「いやいや、十分だよ」

フーッと、煙を道路側に吐き出す。

昔は、なんで父親がタバコを吸うのかわからなかった。

だらしないお腹。

グータラする土日。

父親のことは好きだったが、尊敬はできなかった。

小さい頃、僕は聞いた。

「何でタバコやめてくれないの?」

「んー、タバコがストレス発散なんだ、ごめんな」

納得できない僕にいつもそう言った。


今ならわかる。

社会人を続けることが、どれだけ大変か。

「やっぱり、社会人1、2年は大変だった?」

「ん?1、2年どころじゃないよ。笑
少なくとも10年は大変だったかなぁ」

「まじか...。よく耐えられたね」

「そりゃ、お前も母ちゃんもいたからなぁ」

家族からはいつも臭い臭いと煙たがられ、家に居場所がないとぼやいていた。

それでも毎日会社に向かう背中を思い出した。


「まあ、お前も大変だと思うけど、本当にキツくなったら逃げていいからな」

「うん、そうする」

「じゃあまた東京で」

バスの扉が閉まり、父親が遠ざかる。

心の中で、つぶやいた。

(僕の尊敬する人は、父ちゃんです)


さいごまで読んでいただき、ありがとうございます! シェア、スキ、コメントをしていただけると、泣いて喜びます! サポートはありがたく受け取らせていただきます✨