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変わらないもの

変わってないのに、「変わったね」と言われるのは、あまり嬉しくない。逆に、変わったのに、「変わってないね」と言われるのも、しっくりこない。

コロナと共に過ごした2年、多くのものは、大きく、変わった。オンラインでの授業や会議、移動や娯楽の制限。変わってしまったことが「当たり前」になると、つい忘れかけてしまうのだが、生活は、いつも、前へと進もうとしている。

その中で今日、変わらないものを見た。それは、大きな花火だった。

街の中心部から離れた大自然の中、空に溶けた、ひとつのステージ。そろそろ帰ろうかと後ろを向くと、花火は、あがった。どこまでも続くような、澄んだ夜空だった。何年ぶりだろうか。こんなにも近くで、花火を見たのは。

正直、最初は、何も思わなかった。「あ、花火があがり出したな」くらいのこと。それでも、懐かしい音を立て、ポツポツあがる、夜の花を、ただ静かに、見ていた。

終わりが、近づいていく。まっすぐ、しなやかに、伸びていく、一本の光の道。目で辿っていると、1番遠いところで、花火は、咲く。そして、あっという間に、それは、散りゆく。

散るのだが、寂しくて、儚いだけではなかった。最後の最後まで、煌びやかだったのだ。橙色や金色の細かい粒は、星になっていく。

「綺麗だね~~~!!!」
「たっまや~~~~~!!」
「くる、くる、くる...!きた~~~!」

いつの間にか、バラバラのステージは、夜空を見上げている。それは、多彩な色に、満ちていた。

カシャカシャと音を立てる、シャッター。思わず漏れてしまった、ため息。友達とふざけている、笑い声。大きな何かにびっくりした、泣き声。隣の誰かへの、やさしい一言。

それは、花火そのものの色では、ない。そして、花火のように、散りゆくものでも、きっと、ない。私が見た、変わらないものだった。

色鮮やかになったその場所は、花火の終わりと同時に、またバラバラになっていった。いつものように。何も無かったかのように。

私は、誰もいなくなる会場を、最後まで、見つめていた。

いつも、応援、ありがとうございます!サポートいただいたお金は、6月から約8ヶ月間のアメリカの留学費に全額使い、その体験を、言葉にして、より多くの人に、お返しできたらな、と思っています。