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小説における「会話文」について

 覚え書きとして、考えたことを書き残しておく。
 たぶんぼく以外には分かりにくいと思うので、いつかリメイクする予定。

会話文が面白ければ、面白い小説になる

 会話文が優れているのは、面白さがメディアミックスによっても失われないことだ。
 地の文の描写にいくら力を入れてみせたところで、演出が巧みでなければ、読んだときに感じた興奮を再現できなくなる。
 この点、会話文は演出力を問わない。
 会話文の面白さとは、ことばの面白さだからだ。
 ストーリーを物語る媒体で、ことばの面白さがうまく機能しないというものは極めて少ない。
 つまり、優れた会話文を書くことができれば、メディアミックスが成功する可能性を高めることができる。

以下、会話文のコツとして考えたことをいくつか。

1.リアルな会話は、やりとりが噛み合わない

 お互いのやりとりが噛み合いすぎていると不自然に見える。
 会話とは、主導権を互いに奪い合ってこそ面白くなる。
 現実でも同じだ。それぞれがそれぞれの会話の流れに持っていこうとする。
 力関係のバランスが面白さを増す。
 すぐれた対話とは、常に不意打ちの連続である。

2.すぐれた会話には、流れが存在する

 ひとつひとつの発言が、会話の流れを受けての発言でないといけない。
「そう言うんなら言わせてもらうけどね」
「それなら、こうだ」
「いいや、こうだね」
 などと、対話者同士の会話が相手の発言を踏まえていく。
 こうすると、感情の流れが分断されず、互いのラリーによって、
 ひとつの大きな流れが形成されていく。
 次第にボルテージが高まっていき、ひとつの変化を迎える。
 その変化こそが、シークエンスを締めくくるものだ。
 すぐれた会話こそが、ストーリーを次の段階に進めることができる。

3.秘密を持ち込むと、簡単に面白くすることができる

 どうしてもこれだけは言えないこと、というのを設定すると、かんたんに面白い会話が作れる。
 ことばはその周辺を行ったり来たりする。
 それによって、自然と観客には「彼がほんとうに言いたいこと」が理解できる。
 しかし、相手にはそれが理解できない。
 理解できないのにも、やむをえない理由をつけるべきだろう。
 激情しきってしまっているとか、他のことで頭がいっぱいになっているとか。
 その人が「言えなかったこと」「言わなかったこと」に重きをおいて表現すること。

4.人はお互いに知っていることは口にしない

 説明台詞を、断じて書いてはならない。
 説明台詞は悪だ。その発言の不自然さに気づいたとたん、読者は虚構の魔術から逃れてしまう。
 どうしても会話の中に説明を混ぜたければ、知識のバランスを崩すことだ。
 片方がそのことを知悉しており、片方がそのことについて素人である、という風にする。
 こうすれば、素人側の視点から自然と説明を受け入れることができる。
 ただし、このやり方は手っ取り早いゆえに、使い古されてもいる。
 使わないに越したことはない。
 できるだけ、説明は省いてしまうといい。読者は想定より頭がいいものだ。

5.相手のことをよく知っていないと言えない台詞、こそが胸に刺さる

 気心の知れた間柄を書くのであれば、こういう台詞を書く。
 いざというキメどころでも使える。
 

すぐれた会話を書くための方法

1.会話文だけを書いてみる

 会話文から書き始める。ラジオドラマのように。
 会話だけを描き、それだけで刺激的かつ面白いものに仕上げる。
 それからト書きのように、ことばをアクションに置き換えていく。
 会話でないと表現できないことだけを、残していく。
 
2.言いたいことを言わせてみる

 まずシンプルにお互いが言いたいことを並べ立てる。本音の応酬。
 それから、それをことばで覆い隠していく。
 ことばの裏に本音が透けて見えるように。
 会話はテキストとサブテキストが重層化していてこそ刺激的で面白くなる。

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